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Alice who wishes confinement
私の居場所はどこにあるの――女児誘拐の不穏なニュースを観ながら倒錯した欲望に駆られた女子高生が体験する、エロティックでキケンで悩み多き冒険。理想と現実の狭間で揺れ動く乙女心とアブノーマルな性の交点に生まれる現代のロリータ・ファンタジー。オナニーマエストロ遠藤遊佐の作家デビュー作品!!久しぶりの姉妹の会話は、携帯のバッテリー切れで強制終了となった。
充電くらいちゃんとしときなさいよ、バカねえ。あの将棋のオタクの子にもあんたから電話あったって言っとくからね。ロリコン中年男に捨てられないよう頑張って……そう言いかけたところでプツリと切れてしまった。
なんともいえない寂しさに襲われる。
私はあの中年男が好きなんだろうか。小柄でロリコンで小心者で、卑劣な監禁魔のあの男のことが。
自分に問いかけてみる。出てきた答えは「好き」というものだった。
ストックホルム症候群じゃないの? 自由を奪われたままずっと一緒にいたから変なシンパシーが生まれてしまったのでは? もしくは覚えたばかりのセックスの快楽に溺れてるだけかもしれない。何度も落ち着いて考えてみたが、答えは同じ。やっぱり好きだと思った。ずっと夢に描いてきたようなドキドキするような恋愛とは違うけれど、あの人と一緒にいると、自分がそれほど悪くない人間だと思えるのだ。タナベはとにかくまゆりのことだけを見てくれる。ひきこもりで登校拒否で気が弱いくせにプライドの高い、ダメな小娘を宝物だと言ってくれる。体のわりにごつごつした大きな手で頬をすっぽり包まれるとき、まゆりは安心して泣きそうになる。こんな気持ちになるのは、ほんの小さな子供のとき以来だった。
このままだと数十時間後にはタナベと別れて二度と会えなくなってしまうのは間違いないだろう。目を閉じて、タナベのいない毎日を思い出してみた。嫌だと思った。まだ離れたくない、それだけは自信を持って言える。
じゃあ、どうしたらいいんだろう。
まずまゆりが考えたのは、会社から帰ってくるタナベのために料理でもしてみようということだった。しかし、冷蔵庫は限りなくからっぽに近く、食べられそうなものは何もなかった。あるのは、ビールと卵とバターくらいだ。ここ数日はタナベが会社帰りに買ってきたコンビニ弁当を食べ、空腹が収まったらひたすらセックスするだけだったのだから仕方ない。ホットケーキくらいならなんとか作れるかもしれないと思ったが、夕食が焦げたホットケーキというのも妙だと思って諦めた。
今の自分は、負けの決まった将棋の対局でぼんやりと詰むのを待っているようなものだ。何か次の差し手を考えなくては。
――重要なのは「この女がいないとダメだ」って思わせることよ。そうね、やっぱりセックスじゃない?
思いを巡らせた挙げ句、まゆりは風呂を沸かすことにした。まったく頼りにならないだめんず女だけれど、ほかにいいアイデアが浮かばないのだから、ここは富子の言葉を頼るしかない。
帰ってきた途端求めてくるだろう男のために、ゆっくりとお風呂に入り、一時間ほどかけて全身をくまなく洗いあげた。風呂場にあったT字カミソリを拝借してムダ毛の処理も。長い黒髪からふうわりとしたシャンプーの香りが立ち上る。これなら大丈夫、タナベはロリコンだからきっと気に入ってくれるだろう。
セックスに夢中でろくなものを食べていなかったせいか、コンプレックスだったぽっちゃりボディは少しすっきりして女らしい曲線を描いている。白く透き通るような肌からは、なまめかしい少女の色香がたちのぼるようだ。
まゆりは、洗面台の鏡に映る自分に微笑みかけた。うん、まんざらでもないような気がする。
そこにいるのは頑ななひきこもり女子校生ではなく、男の欲望を誘う一人の女だった。
タナベは6時30分きっかりに帰ってきた。今日も定時上がりだ。ここ数日は会社でもほとんどすることがなく、一日中まゆりのことを考えながら時計とにらめっこをしている。
帰り際、部長に「早く帰らないと彼女が首を長くして待ってるぞ!」と言われて苦々しい気持ちになったけれど、美少女の肌の匂いを思い出すとやっぱり気持ちがはやる。
起きぬけのセックスを頭の中で反芻していたら電車の中で勃起しそうになったので、焦ってブリーフケースで股間を隠した。また痴漢扱いされるのだけはごめんだ。
家に帰ると、まゆりはセーラー服を着て待っていた。どうしたの、と聞くと、パジャマは汚れたから洗濯したのだと言う。そんなはずはない、乾燥機で乾かせば少女の小さな寝巻なんてアッという間に乾いてしまうはずだ。自分を喜ばせようとしているのだろうと思うと愛しさがこみあげてきて、今日もまたそのままソファになだれこんだ。
ねっとりと舌を絡ませながら、もつれあう。スカートの中に手を入れると若くピチピチした尻肉が掌にしっとりと吸いついてくる。まゆりは下着を付けていなかった。いつもならこんなことはない。どんないやらしい行為をしていても、終わった後は恥ずかしがり、すぐにそそくさとパンティに手を伸ばすのに。
そうしているうちに少女はタナベのベルトに手をかけた。カチャカチャと無器用な手つきでズボンを脱がせ、股間に顔をうずめようとする。頑張って痴女っぽく振る舞っているようだった。積極的に迫られるのはタナベの好みでなかったけれど、まゆりにそうされるのは嫌じゃなかった。
赤く膨らんだ亀頭を一生懸命頬張り、ピチャピチャと音を立てて舐め上げている。
「ほら、顔を見せて」
そう言うと仔犬のような潤んだ目をこっちに向ける。タナベはたまらなくなり、乱暴にセーラー服のスカートを脱がせた。下半身だけ丸裸の状態でシックスナインの形になり、互いの性器を舐めあう。クチュッ……ピチャッ……2人のスケベ汁がはじける音がリビングに響き渡る。舌先でクリトリスを集中的に責めると、舌が止まって舐められなくなってしまうのがなんともいえず愛らしい。
「ほら、ダメだろ。お口がお留守になってるじゃないか。ちゃんとご奉仕しなさい」
何度こんなシーンを想像してオナニーしただろう。興奮しすぎて、屹立したペニスからタラタラとひっきりなしにカウパーが垂れてくる。
ダメだ、このままだとイッてしまう。タナベは快楽のあまり半ベソをかいているまゆりをソファに座らせると、そのままのしかかるように一気に挿入した。こうすると奥までズッポリ入るのだ。腰を動かすたびに目の前にあるセーラー服のスカーフがふわふわ揺れる。
まゆりの切羽詰まったすすり泣きを聞きながら、息切れするのもかまわず一心不乱に腰を振った。
「あの、聞いてほしいことがあるんだけど……」
タナベがそう口にしたのは、2回目の射精を終えて余韻に浸っているときだった。まゆりは平静を装って小さな声で「なんですか?」と答えた。
「ええと、あの……4月になったら君を解放するって約束しただろ。もちろんそのつもりだったんだけど、なんていうか、このまま別れてしまうのは勿体ないような……」
お姉ちゃん、グッジョブ! 下半身丸出しのままでもじもじする中年男を見ながら、まゆりは心の中でつぶやいた。
恥ずかしさをこらえて積極的にふるまった甲斐があった。いつもより頑張ってフェラチオしたのが効いたのかもしれない。たぶんタナベが言おうとしているのは、自分が欲しくてたまらない言葉だ。
ねえ、おじさま何が言いたいの。きっと私と同じことでしょ。早く言って。
「んーと、えーと、あの……僕は大阪に行かなくちゃならないんだけど……あの、できたら一緒に……」
口ごもるばかりで、どうもはっきりしない。
タナベは、43年分の勇気を必死に振り絞っていた。
もちろん、言いたいことは一つだ。今さらこんなこと言えた義理じゃないけど、僕と一緒に大阪に来てくれないか。いや、大阪が無理だったら東京でだっていい、このままもう少しこの家にいてくれないだろうか。昇進なんて断わったって全然かまわないんだ。
今言わなきゃ一生後悔する。いえ、言うんだ。
しかし、口から出たのは全く別の言葉だった。
「その前に一緒にハプニングバーに行ってくれないか。ずっと夢だったんだ、君みたいなかわいい子とハプバーに行って周りの奴らに見せびらかすのが」
ああ、ダメだ……。どうして俺はこうなんだろう、43歳にもなって。
それを聞いて、まゆりはすっかり全身の力が抜けてしまった。
男の人って、本当にどうしようもない。意地っ張りで格好つけで意気地がなくて。
……でも、そういうところがかわいいんだけど。
もしここに富子がいたら、ほうらごらんなさいと勝ち誇ったように言うだろう。
自分の腹の上で人生が終わったかのようにうなだれている中年男の、少し薄くなった頭頂部を愛しげにじっと見つめる。
「いいですよ」
まゆりはすました顔で答えた。
「……え?」
タナベは予想外のことに驚いてバカみたいに目を丸くしている。
うふふ、おかしな人。さっき自分でそう頼んだくせに。
「その、なんとかバーに行きましょう。でもそのかわり、私のほうも一つお願いがあります」
「え……なんだい?」
「私を、一緒に大阪に連れて行ってくれませんか」
それを聞くと、タナベはショックのあまりそのまま気を失ってしまった。
薄れていく意識の中で思ったのは、大急ぎで新居を探しなおさなくてはということだった。引越し先の部屋は勤務先から徒歩10分、コンビニまで徒歩1分という申し分のない立地だったけれど、ユニットバスの6畳ワンルームは、愛する女を監禁するにはいくらなんでも狭すぎる。
(続く)
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