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Alice who wishes confinement
私の居場所はどこにあるの――女児誘拐の不穏なニュースを観ながら倒錯した欲望に駆られた女子高生が体験する、エロティックでキケンで悩み多き冒険。理想と現実の狭間で揺れ動く乙女心とアブノーマルな性の交点に生まれる現代のロリータ・ファンタジー。オナニーマエストロ遠藤遊佐の作家デビュー作品!!タナベは会社に向かう人波の中をぼんやり歩いていた。
まだまだ寒いけれど空は雲ひとつなく綺麗に晴れ渡っている。以前ならこんな青空を見れば多少の悩みがあっても「今日も一日頑張ろう」という気分がわいてきたものだが、今はそんな気分にはなれない。どんな青空よりも、一日中カーテンを締め切っているせいでどんよりと空気がよどんだ、あのリビングルームが恋しい。
ここのところ、タナベの朝勃ち具合はすさまじい。
朝起きると、まず隣で寝息を立てている美少女を後ろから抱きしめ、股間のこわばりを押しつける。甘酸っぱい肌の匂いと温かいぬくもりに肉棒がさらに膨れ上がると、有無を言わさずパジャマのズボンを脱がせ、プリプリと柔らかな尻の谷間に我慢汁で濡れた亀頭を押し当てる。
「……あぁん」
少女が目を覚ますと、後ろから形のいいオッパイをわしづかみ、生温かい舌で耳たぶや首筋をベロベロと舐めまわしながら乳首を弄ぶ。まゆりはこうされるのが好きなのだ。身をよじって逃げようとするのを押さえつけ、秘部に指を滑らせるともう内股のほうまでぐっしょり濡れている。
タナベはそれを確認すると、顔も見ないまま黙って後ろからズブリと挿入する。少女のアソコは中年男の膨れたイチモツを易々と受け入れ、抜き差しするたびにヌプヌプと卑猥な音を立てる。やがて子猫のような甘いすすり泣きが始まり、内部が嬉しそうにヒクヒクと痙攣しだす。二人とも何も言わないが、お互いに欲情しあっているのがわかる。言葉はいらない。
タナベはたまらなくなり、ピストンしやすいように恥ずかしがる少女の片足を高々と持ちあげ、欲望を激しく打ち込むのだ。
できることなら会社なんか休んで、一日中まゆりとむつみあっていたい。彼女とセックスするようになってから、朝になると決まってそんな思いにかられる。こうして会社に向かって歩いている間も別れの日は着々と迫っているのだ。今日も家を出る寸前まで「体調が悪いので休ませてください」と電話をするタイミングをうかがっていたのに、できなかった。
忙しくて休めないわけではない。もう後任者への引き継ぎはほとんど終わっているし、大阪への転勤はわずか数日後に迫っている。本当なら残りの出勤日は溜まっている有給休暇に充て、新生活に備えて引越し作業をしているのが普通なのである。
だったらなぜやることのない会社に悠長に出勤などしているのか。上司も同僚も、ギリギリまで本社で働くタナベを「くそがつくほど真面目なやつ」と感心しているようだったけれど、もちろんそうではない。本人にしてみれば、どうしていいかわからないから昨日と同じことをしているに過ぎないのだ。
彼女とのセックスは最高だ。今までの人生はなんだったんだと思えるくらいの身も心も蕩けるような快楽が、一晩に何度でも訪れる。
だからこそ、これ以上一緒に居てまゆりに溺れるのが怖かった。好きになればなるほど、数日後には二度と会えなくなるという事実が重くのしかかってくる。必死に先のことを考えないようにしているけれど、一日中一緒にいればどうしたって直面せずにはいられないだろう。
もし彼女に「あと少しで4月ですよね。いつ解放してもらえるの?」と聞かれたら。
タイムリミットまであと5日。ああ、気が狂いそうだ。
「よう、どうしたんだボンヤリして。引越し疲れか?」
振り返ると直属の上司である部長が立っていた。驚いて思わず口ごもってしまう。
「い、いえ、そういうわけじゃ……」
「そうか、ならいいんだ。一軒家に住んでるって聞いてたから引越しも大変なんじゃないかと思ってな。お前はいつもきちんとしてるから心配ないと思うが、手が足りなかったらいつでも言ってくれよ」
部下の栄転を喜んでくれているのだ。自分は女子校生とのセックスしか頭にない犯罪者なのにと思うと胸が痛んだが、様子がおかしいと思われたら面倒なことになる。
「実は、今の家ももうしばらく残しておこうかと思いまして」
もしかしたら大阪行きをやめてあの家に居続けることができるかもしれない。そんな未練がましい気持ちから、タナベはあの家の契約を解除できずにいた。
しかし、部長の大声にぼんやりと相槌を打っているうちに、知らぬ間に同棲中の恋人と遠距離恋愛する男にさせられてしまったようだった。
「へえ、余裕だなあ。あ、もしかしたら……彼女と同棲してるのか? 自分のことをなかなか話さないから気づかなかったけど、考えてみたら独身男の独り暮らしでわざわざ一軒家なんて不自然だもんなあ」
ほほう、お前もなかなか隅に置けないじゃあないか! 驚いたように部長が笑う。まるで発声練習でもしているかのような大声に、通勤途中の同僚たちが何事かと振り返る。
「あの……」
もしここで転勤を取り消して欲しいと申し出たら、部長はどんな顔をするだろうか。
実は彼女がどうしても離れたくない、一緒に暮らせないなら死ぬと言い出しまして――そう言ったら。転勤の話が白紙に戻って本社勤めを続けられたりはしないだろうか。もちろんもう定年まで出世など望めぬ平社員のまま終わるだろうが、まゆりといられるならそんなことは全然かまわない。このままあのリビングルームでずっと……。
「ん、なんだ?」
「……いえ、いいんです」
振り払うように、脳裏に浮かんだ都合のいい考えを打ち消した。
たとえ大阪に行かなくて済んだとしても、この生活がずっと続くなんてことは現実としてありえない。なんといっても俺は監禁魔で、あの子は無理矢理連れてこられた獲物なのだ。いくらセックスを拒まなくなったといっても、まゆりの小さな頭の中には4月になれば自由になれるという思いがしっかり刻み込まれているに違いない。数十日間、夢を見られただけで充分と思わなくては。
「なんだ、変なやつだなあ。まあ、向こうに行っても本社に来る用事はちょくちょくあることだし、近いうちに彼女に会わせてくれよ、な」
そう言い残してずんずん大股で歩いていく部長の後ろ姿を見て、タナベは自分のふがいなさを呪った。
リビングルームにあったカレンダーが、いつの間にかなくなっている。
柱にかけられたそれは昔懐かしい日めくりで、自宅の居間にあったのと同じタイプのものだった。独り暮らしの部屋には珍しいと思ったが、監禁された当初、心細かったまゆりはそれを見るたびなんとなくホッとした気持ちになったものだ。
タナベがどこかに片付けたのだろう。数日前からめくられないままになってはいたけれど、日めくりがあればどうしても残された時間を意識してしまう。
カレンダーを片付けたって時間が止まるわけじゃないのにそうしてしまうタナベの気持ちが、まゆりには手に取るようにわかった。なぜなら自分も同じだからだ。そうやって、都合の悪いことから逃げ、“臭いものに蓋”をしてひきこもってきた。2年間も。
――結局、現実から目をそむけてるんだわ……私も、おじさまも。
ふと、自宅のベッドの中でうずくまっている数カ月前の自分の姿が頭に浮かんだ。あのときと同じだ。
ことあるごとに後悔した。ちょっとくらい笑われたっていい、勇気を出して学校へ行っていれば。格好なんてつけず、いじめられて辛いと叫んでいれば。でも、プライドが邪魔をしてどうしてもできなかった。
もうあんな思いをするのは嫌だ。
いくらカレンダーを片付けたって、数日後には必ず生ぬるい夢からたたき起こされる。もうカウントダウンは始まっているのだ。そう考えると、じっと黙って待っているのが急にバカげたことに思えてきた。
まゆりは、昨夜からずっと考えていたことを、実行に移すことにした。
部屋の隅に放りっぱなしになっている学生鞄のところへ行き、ぬいぐるみの中から携帯電話を取り出す。
――お姉ちゃんに電話をしてみよう。
そう思った。藤原と電話で話してからさらに数日が経っている。家族もきっと心配しているだろう。もしかしたらもう警察に連絡して捜査が始まってるかもしれない。でも、どういうわけか富子ならなんとかしてくれそうな気がした。なんてったって、バツイチ子持ち貢ぎ癖あり、男女のゴタゴタのプロなのである。
「まゆり? まゆりなの?」
緊張しながら通話ボタンを押すと、富子はあっけなく2コール目で電話に出た。暇だからちょうど携帯でゲームをしていたところだと言った。いい気なものだと思ったけれど、今はこの何も考えていない能天気さがありがたく思えた。
「もう、あんた一体何してるのぉ。みんな心配してるのよ。元気なの? どこにいるの。昨日も母さんたち警察に捜索願出すって大変だったんだからね!」
大変なことを言ってるのに、まるで噂話でもしているかのような、いつもの口調にホッとする。
うん、元気。まゆりがそう言ったまま口ごもると、「ねえ……男んとこでしょ?」とたたみかけてきた。今お母さん買い物に行ってるから心配しなくていいわよ。ね、どんな人? 照れることないじゃない言いなさいよぅ。
――失踪した妹から数十日ぶりに連絡があったのに、まずそれ? さすがお姉ちゃん、治外法権の女だわ……。
そう思いつつ、ポツリポツリとこれまでのことを話した。もちろん監禁されていることは端折ってだけれど。
「へえ、相手の男って40代なの。一軒家住まいのサラリーマン? やだ、あんたもやるじゃない!! まあ、確かにまゆりにはそういう男のほうが合ってるかもね。私は身も心もガッツリ愛されたいから、そんな年上ごめんだけど。で、これからどうするの?」
確かに小さくてあんまりかっこよくないおじさんだけど、もう許してっていうまで愛してくれるよ。そう言いたい言葉を飲み込んで、まゆりは姉に聞こうとしていた言葉を口にした。
「あのね、お姉ちゃん。男の人に必要とされるにはどうすればいいと思う? たとえば……たとえばなんだけど、憎からず思ってる人が仕事で遠くへ行っちゃうとするでしょ。女の子も一緒に行きたいんだけど付いていくにはすっごい障害があるし、男の人のほうはそこまでしたいと思ってないみたいなの。どうすれば一緒に来てほしいって言わせられる?」
「うーん、そうねえ……まあ月並みだけど、この女がいないとダメだって思わせることかなあ」
富子は面白そうに応える。
「具体的に教えてよ」
「セックスじゃない? マグロはダメね」
「……マグロって何? マグロを食べるとエッチが弱くなるの?」
家では絶対にすることのなかった話が、ぽんぽん飛び出す。なんだか楽しい。
「ふふふ、マグロってのはあんたみたいな子のことよ。あと大事なのはやっぱり愛情よねえ。ほら、その人がお金に困ってたら融通してあげるとか、働けなくなったら体張って養ってあげるとか」
――ああ、この人に聞いたのがバカだった……。まゆりは電話口でがっくりうなだれた。確かに富子はいつだって男女のゴタゴタに巻き込まれているけれど、それがうまく収まったためしなんか一度もない。むしろ反面教師にしなくてはいけないタイプなのだ。
しかし、富子が最後に言った言葉はまゆりの胸に突き刺さった。
「でもさあ、思うんだけど、その女の子はどうしてそんな小細工するの? こっちから『一緒にいたいから連れてって』って頼めばすむことじゃない。私ならそうするけどね」
大丈夫よ、あんたけっこう可愛いんだから。電話の向こうの富子は真面目な声でそう言った。
(続く)
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