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【5】

それでは――と縄師のNがもう一度頭を下げて縄を手にした。律子は布団の上に正座して両腕を後ろに組んでいる。顔は白いままだが、そのぬめるような透明感には今や凄みすら滲んでいる。Nが改めて律子の腕をぐいと持ち上げ、背と手頸との間にするすると縄を通して二度回し、小さく力を込める。律子の頬がぱぁっと明るく染まって、細い首筋から肩にかけてのラインが十代の少女のような可憐さを匂わせた。

「ぐぅっ……」

睨むように見つめていた花岡が咽喉の奥で小さく唸る。空気がピンと張りつめている。
事務員風の男が生唾を飲んで咳払いをした。
Nの捌く縄が渇いた音を立てて律子の胸に回される。そして襦袢越しに両の上腕と乳房の上端に浅く食い込んだ後、じんわりと浸み込むようにさらに締まった。
律子の目は虚ろ、唇は半開きとなり、上半身がゆっくりと前後に揺れている。
Nは律子の背中から縄をとると、それを頭上の梁に回し、律子が縄に身を委ねられる状態を作った。







「こうされたいんだね?」

囁いてポンと背中を押す。すると律子はゆっくりと前のめりになって薄く目を閉じ、縄に体重を預けていく。

「はあぁぁっ……」
「もっと動いていいんだよ」

律子の肩に手を載せて、呼吸を合わせるようにしながら襦袢の前を開いた。
電球の灯りの下、縄に絞り出された豊かな乳房がまったりと垂れて弾んだ。律子が顎を反らせて胸を突き出す。
やや大きめの乳首が痛々しいほどに勃起していた。その小豆色の肉柱をNが後ろから摘み、捩じる。

「あっ、あぁぁっ」

さらに、掌を使って乳房全体を揉み込み、爪を立て、もう一度肉柱を摘んで捻り上げる。

「くふうぅっ」
「これは罰だよ。旦那を裏切っていけないことをした罰だ」

律子はただ唇を噛んで黙っている。

「何か言うことはないのかね?」
「も……申し訳ございま……せん……」

眉根を寄せて口を半開きにした律子が虚空に向かって言葉を絞り出す。

「もう一度確認しよう」

Nが心持ち声を張る。

「お前はいけないことをした。そのことで今も苦しんでいる。そうだね?」
「あ、あんな毎日は……あぁっ……若い生徒さんのモノを口一杯に頬張って……あんな……あんな毎日は……」
「言ってごらん」

Nが促しながら律子の襦袢の裾をたくし上げる。さらに「こうされないと言えないか?」と律子の両足首を一つに括り、縄尻を梁に回して縄を持つ手に力を込めた。
律子の身体が水平吊りの形で宙に浮く。

「ひぅっ……」

足首と背からとった縄で低く吊られた律子がハアハアと熱っぽく喘ぎ、身を捩る。

「さあ、皆さんの前でしっかりと言うんだ。今日はそのために来たのだろう?」
「い……いけないことだと……存じてはおりました……でも……」

山なりに盛り上がった律子の白い尻がブルブルと震える。
Nが「なんだね?」とその尻を鷲掴みにし、「惚れたとでも言うのかね?」と爪を食いこませた。

「あ……あ……」
「いけないことだと分かっているのに、無理やり精子を飲まされ続けていたら惚れてしまう。女とは、そんなに弱い生き物なのかね?」
「ち……違いま……あぁぁっ……しゅっ……主人が……主人が先に私を裏切っ……」

Nが、律子の尻を思い切り引っ叩いた。悲鳴を上げた律子の身体が一直線に伸びてまた戻る。

「ならば、なぜ、罰を欲しがる?」

言いながら律子の背と足の縄を解いて布団の上に下ろし、するすると股縄を入れて、今度は仰向けに寝かせる。そして梁から垂れた縄を股縄に繋いで引き絞った。

「ぐうっ」

縄の食い込んだ秘裂を頂点にして律子が弓なりに反った。

「本当は、言い訳などできるはずもないと、自分で感じているからではないのか?」

Nの指が縄を弾いて律子の秘裂に振動を伝える。

「ひっ……ひいぃっ……もっ、申し訳……あぁぁっ」
「いい加減に謝って逃げるのかね?」
「い、意地悪っ……意地悪っ……」

縄が一層食い込むように鋭い角度をつけられ、乳房を踏みつけられた律子が首を激しく振り立てて叫ぶ。しかしNは淡々とした顔で体重を載せ、縄を引く。

「旦那と生徒の間に関係があったかどうかなんて関係ない。お前の気持ちを聞いているのだよ?」
「ぐうぅぅ……」

首に大量の青筋を浮かせた律子の耳の後ろから玉の汗が吹き出し、うなじに伝った。


【6】

「なんだよこれ、さっきの昔話の続きみてぇなこと言ってんな」

いつの間にか身を乗り出して四つん這いの格好で見ていた一条が花岡を振り返って小声で言う。

「ああ、今日はそのために来たとかってのも見えねぇ……」
「ショーじぇねぇのか? これ」

Nと律子の客を無視したような問答は確かに妙に映った。しかし直接声をかけられるような雰囲気でもない。男たちがヒソヒソしている間にも、律子は逆さに吊り上げられ、両眼を真っ赤に充血させた凄惨な顔を彼らに晒して揺れていた。
その時、皆さん――と、ふいにNが顔を上げて声を響かせた。

「罪とはなんでしょう。この女はなぜ、罰を求めて身を投げ出すのでしょう」

言いざまに鞭を振り上げ、逆さになった律子の太腿を打つ。

「ひいぃぃぃっ」
「お、おい……」

突然話を振られて面食らった花岡が待て待てと言うように手をかざす。しかしNは黙々と打擲を続ける。脚と言わず背と言わず、鋭い破裂音が立て続けに響き、そのたびに律子の身体が跳ね踊った。







「なぜでしょう」

そう言ってさらに鞭を薙ぐ。
律子の白い肌に薄紫色のミミズ腫れが幾筋も浮き上がった。

「誰にも説明できない。本人にも言葉がない。実に哀れな女です。よく見てやって下さい。こんなに涎を垂らして悦んでいます。逆さに吊られて、鞭で打たれて、晒し者になりながら。毎日、この口で若い学生の精子を絞りとった。言われるままに卑猥な下着もつけていた。腕をねじり上げられながら、彼のモノを咥えて、舌を遣った。旦那には内緒で。それまではただの気真面目な主婦だった。貞淑な女だと自分でも思い込んでいた。しかし――」

Nが鞭の先端を律子の秘裂にあてがい、強く押しつけて鞭をしならせる。

「うっ……くうぅぅっ……」

律子の赤い舌が唇を割ってチロチロと顔を覗かせた。

「この女の中の何かが彼女自身をも裏切った。誰のせいにも、何のせいにもできない。もがき苦しみながら堕ちていくことしかできない」
「ひっ……ひっ……」
「どうか、皆さんで堕ちきらせてやって下さい。そこにしかこの女の救いはないのです」

Nがそう言って男たちの目を覗き込んでいく。
律子の足指が反り返っていた。脚の付け根の筋肉が盛り上がり、下腹部に強い情動がわだかまっているのが見てとれる。その艶めかしさは、Nの醸す異様な迫力とあいまって、もはや魑魅魍魎の世界をすら思わせる。

「まず、どなたか……」

低い声に促されて「じゃあ俺が――」と膝を立てたのは花岡である。

「やるぜ。なんだか分かんねぇけど面白くしてやるよ。どうすりゃいいんだい、縄師の先生」
「もう一度、同じ目に遭わせてやって下さい」
「同じ目ってなんだい?」
「あの頃、若い学生にされたのと同じことです。男根をしゃぶらせ、精子を飲ませ、犯してやって下さい。この女はある日、その学生に犯されました。いつも旦那と寝ているベッドの上で。それからは彼が卒業するまで毎日犯されていたのです」
「ふうん……そういうことね」

花岡が自分の浴衣の帯を解いて立ちあがる。その股間にはすでに野太いペニスが屹立し、先端を濡らして息づいている。

「では、よろしくお願いいたします」

Nが梁に回した縄を解いて律子を蒲団の上に下ろし、後手縄だけを残して横たえた。
しかし妙なもんだな――と枕もとに立った花岡が律子を見下ろして言う。

「この姉ちゃん、自分でショーに出てるくせに、なんだか苦しそうだぜ」
「いいのです。こうしてやらないと息のできない女なのです」

腕を戒められたままの律子が布団の上で胸を喘がせていた。全身を脂汗で光らせ、無防備な下半身をくの字に折って「許して……許して……」とうわごとのように呟いている。


(続く)

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『置き屋に落ちた恩師の妻』

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収録時間:100分
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メーカー:大洋図書
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junichirou.jpg 芽撫純一郎 1960年和歌山県生まれ。プロポーラーとして活躍後、セミリタイアして現在は飲食店経営。趣味として、凌辱系エンターテインメントAVの鑑賞と批評、文章作品の創作を行なう。尊敬する人は一休宗純。
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08.11.28更新 | WEBスナイパー  >  官能小説