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ホラー/カルト映画における青山正明(1)
この辺りで青山正明のホラー/カルト映画関連を見て行きたい。最初の著書が『HORROR FILMS』となる予定だった(時間切れで幻に)くらいの映画マニアである青山は、連載「フレッシュ・ペーパー」でも度々映画関連に触れており、また『ビデオ・コレクション』『ビデオ・ザ・ワールド』誌などでのビデオ紹介記事でも、一癖ある作品を多数薦めている。
しかし『危ない1号』4巻での「青山正明全仕事」では、それらの量が膨大であるからであろう、ほとんど省略されてしまっている(時期を外したせいもあるだろうが)。つまり、全原稿の中でも、ドラッグ関係よりも多いのではないかと思われる映画原稿が前出誌に収録されなかったことで、青山のイメージというのは少し偏って後世に伝わっているのではないかと思う。そこを少し修正していきたい。
ただ、たしかにあまりにも大量の原稿のため、どこから手をつければいいか迷う。そこで、今回は青山が解説を担当したビデオ・パッケージの一部を紹介する。イタリアン・ホラーの鬼才、ルチオ・フルチ監督の3作品と、「TCCカスタメント'89」シリーズだ。80年代はビデオが一般家庭に急速に広まっていった時期で、各メーカーはカタログ数を増やすために、昔のB級・C級映画の権利を片っ端から買い取り、リリースしていた。80年代のビデオ・ブームとは、マイナー映画発掘の最初の黄金期なのである。
左:『ビヨンド』(MVH-0013)/大映株式会社
中:『墓地裏の家』(MVH-0014)/大映株式会社
右:『マンハッタンベイビー』(MVH-0015)/大映株式会社
1985年、大映株式会社。解説はすべて同一。「'60年代に、西部劇にたいして「マカロニ・ウエスタン」があったように、'80年代には、米国製ゾンビに対するイタリア版ゾンビ映画を総称する「コンチネンタル・ゾンビ」なる呼称も登場。このコンチネンタル・ゾンビを一手に担うのが、ルチオ・フルチなのである」。
上段左:『超常現象の世界』(vol.1、148PH-100)/徳間ジャパン
上段右:『緑の魔境』(vol.4、148PH-104)/徳間ジャパン
下段左:『神秘の大陸エイジア』(vol.6、148PH-107)/徳間ジャパン
下段右:『20世紀に生きる全裸族 ザ・ハンターズ』(vol.9、148PH-110)/徳間ジャパン
1989年、徳間ジャパン。“禁断の映像、驚愕の世紀末ドキュメンタリー・シリーズ”と称した「TCCカタスメント'89」シリーズの解説を担当。「この類稀なるドキュメンタリーは、必ずや、あなたに新たなる地平を垣間見せてくれるはずだ」「作り物のドラマにうんざりした方に是非見て欲しい、良質のドキュメンタリーである」「大自然と人間との大いなる共存──。“幸福の島”が単なる観光地“最後の楽園”にならぬよう、祈らずにはいられない」「彼らの笑顔は、必ずや我々に忘れかけていたピュアな感動を与えてくれることだろう」。なおシリーズ他作品は「vol.2/ブードゥー伝説」「vol.3/新・世界残酷物語」「vol.5/処女残酷史」「vol.7/残酷人喰い大陸」「vol.8/驚異!女奴隷の国」。
いずれも自説を展開することのできない限られた解説スペースであり、短い内容紹介に留まっている(これ以外にもLD『エル・トポ』の解説などを担当しているようだ)。ただ、80年代の良識的な映画評論家があまりすすんで書きたがらなそうな作品(今でこそ腐るほどいるだろうが)だなというのは、非・映画ファンでもパッケージの印象からうかがい知る事ができるだろう。次回からはどのような媒体で、どんな作品を紹介していたのかを見ていく。
(続く)
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ばるぼら ネッ
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08.12.21更新 |
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