『ビデオ・ザ・ワールド』1989年7月号 発行=白夜書房
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「ビデオ・ザ・ワールド」における青山正明(6)
『ビデオ・ザ・ワールド』編は今回で終了。1989年頃は株式情報誌『産業と経済』(プリントワン)の編集部に在籍し、また年末からは雑誌『エキセントリック』の編集に関わるようになり、徐々にビデオのレビューから仕事の内容が変わっていく時期である。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年1月号
『病院狂時代』と『スペース・ノア』のレビュー掲載。「82年の暮。当時、大学4年生だった私は、就職先が決まらず、落ち込んだ毎日を送っていた。そんな折、気分晴らしにと、フラリ映画館に飛び込み観たのがこの「病院狂時代」(82)である」というエピソードから推測するに、映画を観るのがかなり日常的行為だったのだろう。『スペース・ノア』は一見褒めてるのかと思いきや別のビデオのレビューで、「一般の劇場映画のレベルで見れば、完全に駄作」「アマチュア映画としては相当良く出来ている」とこき下ろしている。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年2月号
「昭和か和光か旭日か何か知んないけど、とにかく明けましておめでとうございます」という出だしが時代を感じさせる。『死体を積んで』と『クレオパトラ』のレビュー。前者は劇場未公開ビデオで「これが、未公開だなんて……。必見よ」と絶賛。ただ両者ともストーリーの紹介がほとんどで、特別な記述はない。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年3月号
この号から再びページリニューアルで書く本数に変動が。『魔女の棲む街』『ナタリーの朝』『超常現象の世界』の3本のレビュー。『魔女の棲む街』は主演女優のスーザン・スウィフトが大好きだったらしく、レビューはほとんど彼女のことしか書いていない。『ナタリーの朝』は高校時代に映画シナリオをノヴェライズした同名小説(角川文庫/1970年)を読んで感銘を受けたという。『超常現象の世界』は高校2年生の時に観て「疑うことを知らない純粋無垢の少年は、次から次へと写(※原文ママ)し出される超常現象に圧倒されっぱなしでありました」とのこと。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年4月号
『ノーマ・レイ』『オメガマン』『マインド・スナッチャー』の3本。どれも映画自体についてはそれほど熱心に書いていないが、当時の青山の仕事情況がわかる記述がある。「昨年11月だったか、“ぴあ”で仕事をしていると、突然、ハチマキを巻いた男数名が部屋に乱入して、「ストに入りますので、皆さん作業を止めて下さーい!」。で、それから1時間、ぴあの正社員は鉛筆も持たなきゃ、電話もとらない。せかせか働いてるのは、外部者とバイトだけ。てっきり正社員だと思ってた奴が実は嘱託だったりして、ハチマキもバッジももらえずに「ハイ、ぴあです」なーんて、電話に出てやんの。いやぁ、面白かったねぇ」。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年5月号
またもやページリニューアルとコーナー迷走気味。オーストラリアのファンタジー映画『ウィザード』レビューは、作品についてはほとんど触れず、オーストラリア映画とはどんなものかという解説で埋まっており、本当に観たのか疑問に残る出来栄え。『13日の金曜日PART 7』はジェイソンで有名なヒット作だが、「もう既にホラー・ファンにとっては、内容の出来、不出来にかかわらず観ること自体に意義があるセレモニーになっちゃってるんだから」とレビュー放棄状態。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年6月号
意外に思えるかもしれないが、青山は音楽においてパンクにハマっていない。『不滅のパンク・ロック』のレビューでは「このビデオを観て、つくづく思った。'76〜'78年にかけてロックを聴き始めた奴ってホントに可哀想だな、と。嗚呼、パンクなんかに夢中にならなくて良かった。あんなもんばかり聴いていたら、脳ミソ腐っちゃうもんね」とこき下ろしている。しかし「青春は破天荒であればあるほど、美しい思い出となる。そうした観点で見れば、パンクを聴いて育った連中にとって、これほど切なく美しいビデオはないのではないだろうか」とも書いており、一方でハマらなかった自分に対して若干の不満もあるようだ。『アメリカの惨劇』は大量殺人者のセミ・ドキュメンタリーで、青山は『悪魔のいけにえ』のリアル・バージョンと評している。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年7月号
コメディ作『タイムリミットは午後3時』と実話をもとにした『幼女惨殺 復習の銃弾』の2本のレビュー。前者は書くことが思いつかなかったのか「コメディをロック・バンドに譬えると」としてメタリカに譬えて語り始める謎の原稿。後者はストーリー解説でラストシーンまで言ってしまっている。
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【プロローグ】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5 】 【6】 【7】 【8】 【本文註釈・参考文献】
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「ビデオ・ザ・ワールド」における青山正明(6)
『ビデオ・ザ・ワールド』編は今回で終了。1989年頃は株式情報誌『産業と経済』(プリントワン)の編集部に在籍し、また年末からは雑誌『エキセントリック』の編集に関わるようになり、徐々にビデオのレビューから仕事の内容が変わっていく時期である。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年1月号/白夜書房 |
『病院狂時代』と『スペース・ノア』のレビュー掲載。「82年の暮。当時、大学4年生だった私は、就職先が決まらず、落ち込んだ毎日を送っていた。そんな折、気分晴らしにと、フラリ映画館に飛び込み観たのがこの「病院狂時代」(82)である」というエピソードから推測するに、映画を観るのがかなり日常的行為だったのだろう。『スペース・ノア』は一見褒めてるのかと思いきや別のビデオのレビューで、「一般の劇場映画のレベルで見れば、完全に駄作」「アマチュア映画としては相当良く出来ている」とこき下ろしている。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年2月号/白夜書房 |
「昭和か和光か旭日か何か知んないけど、とにかく明けましておめでとうございます」という出だしが時代を感じさせる。『死体を積んで』と『クレオパトラ』のレビュー。前者は劇場未公開ビデオで「これが、未公開だなんて……。必見よ」と絶賛。ただ両者ともストーリーの紹介がほとんどで、特別な記述はない。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年3月号/白夜書房 |
この号から再びページリニューアルで書く本数に変動が。『魔女の棲む街』『ナタリーの朝』『超常現象の世界』の3本のレビュー。『魔女の棲む街』は主演女優のスーザン・スウィフトが大好きだったらしく、レビューはほとんど彼女のことしか書いていない。『ナタリーの朝』は高校時代に映画シナリオをノヴェライズした同名小説(角川文庫/1970年)を読んで感銘を受けたという。『超常現象の世界』は高校2年生の時に観て「疑うことを知らない純粋無垢の少年は、次から次へと写(※原文ママ)し出される超常現象に圧倒されっぱなしでありました」とのこと。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年4月号/白夜書房 |
『ノーマ・レイ』『オメガマン』『マインド・スナッチャー』の3本。どれも映画自体についてはそれほど熱心に書いていないが、当時の青山の仕事情況がわかる記述がある。「昨年11月だったか、“ぴあ”で仕事をしていると、突然、ハチマキを巻いた男数名が部屋に乱入して、「ストに入りますので、皆さん作業を止めて下さーい!」。で、それから1時間、ぴあの正社員は鉛筆も持たなきゃ、電話もとらない。せかせか働いてるのは、外部者とバイトだけ。てっきり正社員だと思ってた奴が実は嘱託だったりして、ハチマキもバッジももらえずに「ハイ、ぴあです」なーんて、電話に出てやんの。いやぁ、面白かったねぇ」。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年5月号/白夜書房 |
またもやページリニューアルとコーナー迷走気味。オーストラリアのファンタジー映画『ウィザード』レビューは、作品についてはほとんど触れず、オーストラリア映画とはどんなものかという解説で埋まっており、本当に観たのか疑問に残る出来栄え。『13日の金曜日PART 7』はジェイソンで有名なヒット作だが、「もう既にホラー・ファンにとっては、内容の出来、不出来にかかわらず観ること自体に意義があるセレモニーになっちゃってるんだから」とレビュー放棄状態。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年6月号/白夜書房 |
意外に思えるかもしれないが、青山は音楽においてパンクにハマっていない。『不滅のパンク・ロック』のレビューでは「このビデオを観て、つくづく思った。'76〜'78年にかけてロックを聴き始めた奴ってホントに可哀想だな、と。嗚呼、パンクなんかに夢中にならなくて良かった。あんなもんばかり聴いていたら、脳ミソ腐っちゃうもんね」とこき下ろしている。しかし「青春は破天荒であればあるほど、美しい思い出となる。そうした観点で見れば、パンクを聴いて育った連中にとって、これほど切なく美しいビデオはないのではないだろうか」とも書いており、一方でハマらなかった自分に対して若干の不満もあるようだ。『アメリカの惨劇』は大量殺人者のセミ・ドキュメンタリーで、青山は『悪魔のいけにえ』のリアル・バージョンと評している。
『ビデオ・ザ・ワールド』1989年7月号
コメディ作『タイムリミットは午後3時』と実話をもとにした『幼女惨殺 復習の銃弾』の2本のレビュー。前者は書くことが思いつかなかったのか「コメディをロック・バンドに譬えると」としてメタリカに譬えて語り始める謎の原稿。後者はストーリー解説でラストシーンまで言ってしまっている。
(続く)
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ばるぼら ネッ
トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ
ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ
ニコミを制作中。
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09.06.28更新 |
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