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ゴムズロース様を汚したら……

昼休みになりました。勿論、私たちを休ませるためではなく、看守様が昼食をとり休憩されるためです。

私たちは調教場の隅の繋奴鈎(はんどこう)に繋がれました。餌は与えられませんが、目の前に奴隷を洗う洗奴槽があり、水が溜まっていました。私たちは、顔を突っ込んで、その水をガブ飲みしたのです。

嵌口具を咥えたままでも、水や流動食は飲めるのだと判りました。アッという間に休憩時間が終わり、看守様が鞭を手にしておいでになるのを見て、私たちは、血も凍る恐怖の思いで体を震わせるのでした。

午後の調教が始まり、私たちはまた鼻環を曳かれ、汗と涙にまみれて走ります。ヒイヒイ泣きながら走らされていた私は、じきに下腹部に異変を感じて、新たな苦痛に悶えました。オシッコがしたくなったのです。ヒリ付くようなのどの渇きに水をガプ飲みしたのですから、当然起こる生理現象です。でも「トイレへ行かせて」と云う方法はなく、仮に云えたとしても、許されるはずはないと判っています。

朝、屈辱のゴムズロースを穿かされたとき、絶対に洩らすまいと思っていました。云い渡された、ズロースを汚したときの懲罰の恐ろしさもありますが、それ以上に、私が粗相をすると決め付けている看守様の鼻を明かしてやりたかったのです。でも、そんな私の決心を嘲笑うかのように、下腹部の責め苦はドンドン増大していきます。

何周目か、看守様の前を駆け抜けるときにビシーッと鞭を頂戴した瞬間、思わず前の締まりが緩んで……「ジョーッ」。ハアハア喘ぎながら走る耳にも、ゴムズロースの中の恥ずかしい音はハッキリ聞こえました。一度堤防が決壊したら後は止めどなく、「ジョーッ、ジョ、ジョーッ゜」。足を止めることも出来ずに走り続けながら、私は看守様の思惑通りゴムズロースの中にタップリとオシツコを洩らしたのです。

私と前後して、他の奴隷たちも、牡も牝も、ゴムズロースの中で浅ましい音を高々とたてていました。

夕方、精根尽き果てた私たちは、また鼻環を連鎖されて、這うように檻へ戻されました。息も絶え絶えで走る責め苦から開放されれば、グチャグチャ、ゴボゴボと音がするゴムズロースの恥ずかしさに身を悶えなければなりません。しかも、そのことに恐ろしい懲罰を予告されています。羞恥と恐怖に足が疎んでも止まることは許されず、私たちは地下の檻の前の、朝跨いだ排泄溝の前に立たされました。

「オイ、牝奴。貴様、まさかズロースを汚したりはしておらんだろうな」

看守様が私のゴムズロースに手を掛け、私は目をつぶりました。大量の恥ずかしい液体が溢れ出ます。

「フン、案の定だ。マ○コの締まりの悪い牝奴め。さぁ約束通り、お前の口でズロースをきれいにしろ!」

ビシーッ。剥き出しのお尻に鞭が炸裂します。私はもう諦めていました。投げ出されているゴムズロースの前に跪き、その中のひどい臭いのする液体に口をつけました。私は自分のオシッコを飲んだのです。

顔をしかめていらっしゃいますわね。私は死んだってそんなことはしないとお思いなのでしょう。でも、貴女様も、一発ハダカのお尻に鞭をお受けになったら、必ず私と同じことをなさると保証します。一緒に繋がれていた三匹の親子奴隷も、一匹残らず跪いてゴムズロースに顔を突っ込んでいました。

「汚い、イヤらしい、そんなこと出来ない、と思っていることを全部やらされる」

拘置所の中年男性看守に云われた通りでした。

しかも、それだけですむはずもありませんでした。奴隷の犯した不始末は、己の血の涙で償わなければならないのです。

「勝手にションベンを垂れて、大切な戒具のゴムズロース様を汚したんだ。懲罰なしで済むと思うか?」

素っ裸で後ろ手錠の私たちは、鼻環を曳かれて広場の端へ連れていかれました。そこには、向こうが低くて前が高い木のベンチが二台ありました。初めてでも判ります。「尻打ち台」です。あれに縛られて、お尻を鞭打たれるのです。

「まあ、素直に自分の小便を飲んだから、鞭十発で勘弁してやる。まずお前とお前だ」

母奴隷と娘奴隷がまず尻打ち台に押し伏せられ、首を金具で押さえられました。脚を大きく広げてベンチの脚に革紐で固定されると、ハダカのお尻を高く上げた哀れな姿勢になります。この姿でお尻に懲戒の鞭を浴びるのです。

母娘の奴隷は、嵌口具の口で何かを必死に叫んでいます。多分「お許しください! 堪忍してください!」と慈悲を哀願しているのでしょう。でもその口からは、意味不明の呻きが洩れるだけでした。床に正座させられて自分の番を待たされる牡奴隷と私は、もう歯の根も合わずにそれを見るのでした。

逞しい男性看守様が二人、太い草鞭を手に近寄ります。

「ヒューッ、バシーッ」「ビシーッ」

犠牲者を震えあがらせる空打ちが空気を裂いて床で鳴り、私たち四匹は「ヒエーッ」と嵌口具の中で悲鳴を合唱するのでした。そして次の瞬間、生け贅のハダカのお尻にその鞭が叩きつけられました。宙に突き上げられた二つの白いお尻にみるみる真っ赤な鞭跡が浮かび上がり、

「ウグーッ!」「グエーッ!」

どんなに痛いのでしょう。二匹の哀れな牝奴隷は、嵌口具でくぐもった声で死に物狂いの悲鳴を上げながら巨大なハダカのお尻を動かせる限り前後左右に振り立てるのでした。

私たちは、糸一本肌につけさせて頂いてないのです。スッパダカでそんなことをすば……最初は必死にお股をすぼめて隠していた、二つの白い半円球の谷間、浅ましく膣リングを咥え込まされ鎖褌で締め上げられている「牝」の箇所が、鞭を振るう看守様や見物の看守様はもちろん、床に正座させられている私たちにも丸見えになるのです。

「せめてあんな格好はすまい」

ガタガタ震えながらも私は、必死の覚悟を固めるのでした。

残酷な懲罰が終わり、首の金具を外されて、二匹の犠牲者は床にへたり込みました。真っ赤に腫れ上がったお尻の痛さに泣きながら、二匹が正座して床に額を摺り付けて懲戒のお礼を申し上げた後は、私と牡奴隷の番です。当然のこと、前の二匹と何の変りもなく尻打ち台に押し伏せられ、首と脚を固定されて、高く上げた私のムキ出しのお尻に鞭が炸裂します。

何とかアソコを隠したいと思った私の覚悟など、アッというまに吹っ飛んで、私は二人以上に金切り声の悲鳴を上げながらハダカのお尻を振り立てて、牝の大切なところを盛大に公開してしまったのです。

                                                                                                                                                                                 


牝大の調教

こうして私たちが「一匹前の奴隷」になるための調教が始まりました。カラスの鳴かない日はあっても、私たちがお尻に鞭を頂戴してギャッと喚かない日はないのです。基礎訓練として、屈辱的なゴムズロースを穿いて、機械に鼻環を曳かれて走ります。ゴムズロースの中にお洩らしして、自分のオシッコを飲まされたあげく、尻打ち台で恐ろしい懲罰を頂いて泣き喚くのも毎日のことでした。

でも、どんなことにでも人間は(私たちは畜生ですが)適応出来るもの。水を飲むのを必死に我慢して、だんだんと調教中に洩らすこともなくなり、ゴムズロースなしの全裸で調教を頂くようになったのです(それが嬉しいとは思いませんが)。

看守様たちは奴隷の訓練に熟達しておられますし、調教官様が巡視に見えては的確な指示を下され、時には自ら鞭を振るわれてお手本を示されます(調教官様の鞭の厳しさは、思い出しても体が震えます)。数週間も経つと、私たちの脚力・体力は目に見えて向上して、随分と長時間、早く走れるようになりました。もちろん、鞭の痛さ、鼻環の苦痛が減るわけはなく、汗と涙にまみれて泣き喚きながらに変わりはありませんが。

そんなある朝、朝の分際鞭の痛みにハダカのお尻を捩りながら曳かれてきた私たちは、いつもと違う扱いに戸惑っていました。まず、昼も夜も私たちの両手を背中で拘束している後ろ手錠が外され、30センチほどの鎖の前手枷に嵌め替えられました。常時、ほとんど手が動かない後ろ手錠を嵌められている私たちにしてみれば、自分の手の扱いに困るヘンな気持でした(手を鎖で繋がれていることに変わりはないのですが)。

私たちに楽をさせるために、こんなことをなさるはずがないのです。かえって恐ろしさに体が震えます。膝当てのような革具を膝に巻かれ、グイと締め上げられると、膝が折れて跪くほかありません。膝当てと腰枷を短く繋がれると、体を前に倒して四ツン這いになるしかないのです。足にはサンダル状の物を履かされました。



「フフフ、どうだ、畜生らしく四ツン這いになった気分は。使役作業の都合上立たせることはあるが、この四ツン這いがお前たちの本来の姿勢なのだ。正式の場では必ずこの格好で曳かれる。今日から、四ツン這いで素早く這い進む訓練だ。どんなに辛くとも立とうなんて思うなよ。お前たちが穿いたサンダルには、疼痛剤を塗った針が生えている。立ったら針が刺さって、痛さに泣き喚くことになるぞ」

天井の回転輪から下がった鎖が鼻環に繋がれ、輪が回転し始めれば、私たちは犬みたいに四ツン這いで前に這う外ないのです。私の目の前で、娘奴隷の大きな白いお尻がプリプリ左右に振られ、谷間の、鎖褌に締め上げられた牝性器が、あられもなく天井を向いています。それを恥ずかしいなどと思う余裕もなく、彼女はお尻を振り立てて必死に這っていました。そして当然私も、同じ浅ましい姿を私の後ろで這う牡奴隷の目に晒しているのです。

でも、私はそれを恥ずかしいと思う余裕はなく、牡奴隷も、それを楽しむ暇などないはずです。奴隷たち全員、鼻環を引かれる苦痛に泣き喚きながら、必死に這い進んでいたのですから。

翌朝は、分際鞭の後、奴隷にとってはただ一つの楽しみの餌が頂けませんでした。生きていくということは本当に浅ましいものです。最初に臭いを嗅いだ時には、顔をそむけて吐き気を催した生ゴミの臭いがただよう奴隷食を、私たちは待ちわびるようになっていたのです。空腹をこらえて調教場に曳かれた私たちは、看守様に口笛や声で呼ばれて四ツン這いで駆け寄り、いろんな芸をする訓練を受けたのです。

お乳とアソコを丸見えにするチンチン、四ツン這いのお回り、伏せ。もたついたら鞭、上手に出来たらドッグフードが与えられます。空腹で食べるドッグフードは、油臭さと生臭さはありましたが、とても美味しいものでした。

ペットである犬は私たちより上等な物を食べているのです。私も早くペットにして頂きたい! 少しでもたくさんドッグフードが頂きたくて、私たちは、他畜を押しのけ先を争って、恥ずかしい芸をお見せしたのです。


牝馬(PONY)の調教

その日、私たちが曳いて行かれたのは、屋内調教場ではなく、屋外調教場の隅の建物の裏でした。そこには私たちが引いて走る馬車が何台も置いてあったのです。後ろ手錠が外され、腰枷の両側に別々に吊られました。後ろ手だと、馬車(奴隷車?)に乗った看守様が、私たちの背中やお尻を鞭で打つのに、手が邪魔なのです。では前手錠にすればいいかというと、経験すればお判りになりますが(経験なさることなどありませんわね)前で手を縛られると、後ろ手以上に走りにくいものなのです。

囚人を前手錠で連行するのがとても合理的なことなのだと、体験して判りました。判って嬉しいことではありませんが……

一台の馬車に二匹ずつ、腰枷に馬車の長柄を繋がれ、嵌口具の両側に手綱が付けられます。私は、見知らぬ若い牡奴隷と一緒でした。初対面の男性に浅ましい全裸を晒す羞恥がチラと心をかすめます(まだ奴隷の性根が座っていないということです)が、彼も当然のこと、股間のモノまで丸出しのスッパダカなのです。

一台にお一人ずつ鞭を持った看守様がお乗りになって、私たち奴隷馬が馬車を引く調教の準備が出来上がりました。

「今日からは車を引く訓練だ。人間様を乗せた車を引くこともあるが、荷車を引いて物を運ぶのは、お前たちの重要な仕事だ。道を覚えれば、御者なしで物を運んで自分で帰ってこれるから、牛や馬よりカはないが便利な場合がある。牡と牝、体格の違う奴隷どうし二匹、三匹で繋がれても、調子を合わせてリズムよく引けるようにならなきゃならん。そこが肝心だぞ。さあ、行け!」

ピシーッ、私と彼のハダカのお尻に「指示の鞭」が弾け、私たちは前かがみに体を倒し、全身の力で馬車を引いて歩きだしました。馬車は重く、すぐに全身に汗がにじみます。連続してお尻に鞭を頂き、足枷の鎖を鳴らしながら必死に車を曳きます。牡の彼のほうが力があるので、どうしても進路が曲がってしまうのです。

私はもうハアハアと息を切らしていました。

「コラッ牝奴! 遅い! 馬車が曲がる! シッカリ歩け!」

看守様の怒声とともに、「督励の鞭」がビシビシと私の背中やお尻に当てられ、私はヒイヒイ泣きながら、汗まみれで必死に車を引くのでした。

「お前も、チャンと調子を合わせろ!」

牡奴の背中にも鞭が炸裂し、彼も「ウワーッ」と嵌口具の中で喚きながら、汗にまみれて早足の歩を運んでいました。

半日かかって何とがリズムを合わせて真っすぐ歩けるようになり、午後からは「ギャロップ(駆け足)」の調教でした。馬車を引いて走るのは当然歩く以上に苦しい上に、リズムを合わせるのが難しく、私はもちろん牡奴隷(名前も判りません。私たちにはもう名前がないのですから、番号とか、「牡!」とかしか呼ばれることがないのです)も数え切れないほど鞭を頂いていました。

私たち二匹は、明るい太陽が照らす、周囲から丸見えの野外調教場を、汗と涙にまみれ、哀しい悲鳴を上げながら走り続けたのです。もちろん他の奴隷たちも同じ目にあっていました。周りの奴隷の姿を気に掛ける余裕など、私にはありませんでしたが。

数日すると組み合わせが変えられ、他の奴隷と馬車を引きました。最後には三頭立ての大型馬車を引く調教も頂戴して、私たちは、どんな相手とでも気を合わせて車が引けるように仕立て上げられたのです。
(続く)





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浜不二夫
異端の作家。インテリジェンス+イマジネーション+ユーモアで描く羞美の世界は甘く、厳しく、エロティック。
「 悪者に捕らわれた女性は、白馬の騎士に助けてもらえますが、罪を償う女囚は誰にも助けてもらえません。刑罰として自由を奪われ、羞恥心が許されない女性の絶望と屈辱を描きたかったのです。死刑の代わりに奴隷刑を採用した社会も書いてみたいのですが――」
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