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鬼才ダリオ・アルジェントがホラー文学の古典を実写化
19世紀末のトランシルバニア。ジョナサン・ハーカー(ウナクス・ウガルデ)は妻・ミナ(マルタ・ガスティーニ)の友人・ルーシー(アーシア・アルジェント)にドラキュラ伯爵(トーマス・クレッチマン)宅での図書館司書の仕事を紹介してもらうべく、パスブルクという小さな村を訪れる。しかし、それは彼の妻を手に入れようとするドラキュラの罠だった。そんな折、村で起きる不思議な事件の噂を聞きつけた吸血鬼研究者のヴァン・ヘルシング(ルトガー・ハウアー)がやってきて――。2014年3月8日(土)より渋谷シネパレスほか全国順次レイトショー公開
この題名、いいですね。古典的で。あらかじめ軽い感じですよー、というのも伝わってくるし。たとえば『ウディ・アレンのドラキュラ』、これだったらドラキュラはまず間違いなく饒舌でノイローゼなんだろうし、『アンドレイ・タルコフスキーのドラキュラ』、これだったらドラキュラが登場する前に観客が全員寝てるんだろうし、『フランソワ・トリュフォーのドラキュラ』、これだとドラキュラってあだ名の少年が年上の女性にひたすら憧れてるんだろうし、『押井守のドラキュラ』、これだったらドラキュラは実は脳自体のことだったんだとか言いながら壮大なちゃぶ台返しで終わりそうだし。
で、『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』なんですが、ダリオ・アルジェントといえばイタリアン・ホラーの巨匠です。サイコ野郎の殺人を様式美バリバリに描いた『サスペリア』シリーズや、本作にまで通ずる監督の虫好きが爆発する『フェノミナ』。とにかくさすがイタリア人、バカなのかオシャレなのか分からないのが作風! という伝説の監督なんですが、そんな彼が古典ゴシックホラーに挑戦した。ただし本作はデジタルカメラで撮影されてます。だからフィルムで高速度撮影でガラスがバリーンで「芸術的やー!」、というビジュアルの美しさはそこまでなかった。でも展開が相変わらずむちゃくちゃで良かったですね。特に後半に向かうにつれどんどん唐突に、そして適当になっていく。動物や虫が今回もいい仕事をしていて、なんといってもカマキリには笑った。
アルジェント監督は今年74歳、本作の製作が72歳の時です。ちなみに宮崎駿監督が今年73歳。去年、長編引退会見をひらいて「(これから)ぼくは自由です」という発言が話題になっていましたが、アルジェントはそうとう自由ですよ! 宮崎監督にも、これからこういう適当な映画をドンドン作っていってほしい。
人々が寝静まった夜に、美しい女性が森で襲われる......。ストーリーはこんな感じで始まります。女性がビビりながら歩いていると、森の奥からフクロウが飛んでくる。それが一瞬でドラキュラに変身する! アルジェントのドラキュラは、虫になったり、獣になったり、色々な生き物に変身する。そこでCGを多用してるんですが、それがすごい!というわけでもなく、まあ微笑ましい。
オオカミなんかは本物を使っていて、これが一回アップになる。そのときに映るオオカミの顔! 人の好さそうな顔してましたね。思わずアキ・カリウスマキの『過去のない男』に出てきた「かわいい猛犬ハンニバル」を思い出しましたけど。このオオカミたちもバッチリ演技のできる、お利口オオカミくんに違いない。なんとなく、撮影現場の微笑ましい雰囲気が伝わってきました。
舞台となるのはパスブルクという小さな街。ドラキュラ伯爵が治めるこの城下町では最近、人間が怪死する。そこにやってくるのが、若干アッパー気味の青年ジョナサン・ハーカー(ウナクス・ウガルデ)です。彼は妻の友だちに紹介され、ドラキュラ伯爵の家で働くために汽車でやってきた。ハーカーには美しい妻があり、その妻はなんとドラキュラ伯爵の亡き妻に瓜二つ。そう、全てはその妻を呼び寄せるための、ドラキュラのワナだったのだ! 逃げてハーカー!という筋書きなんですが、ハーカー大丈夫? はたまた、その妻ミア大丈夫!? 危ない、噛まれるー! 後ろ後ろ!というハラハラで見せるかと思いきや、もうアルジェントはそんなことどうでもイイっぽい。なんといってもおっぱい! そして頭にめり込むスコップ! 飛び出す目玉! 首を切断! そして演技する色々な生物シリーズ! これが『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』だー!(ヒュ~というクラウディオ・シモネッティによる、四谷怪談の妖怪が出てくる時の効果音みたいな曲)といったわけで、これですよ。最初は主人公っぽかったハーカーも、映画が進むうちいつの間にかいなくなってるし。事件を解決するのは、後半いきなりやってくるドラキュラハンター(ルトガー・ハウアー)だし。細かいことはもういいんだと。これが年の功というものなのではないか!
次回作あたり『ダリオ・アルジェントの番町更屋敷』とかいいんじゃないでしょうか。ヒュ~という音とともにあらわれる、バケモノ女! 続発する殺人! わらじにたかるウジ虫の意味は......!?みたいな。
しかしこの映画、そもそも3Dで製作されてるんですね。残念ながら日本での上映は2Dのみ。ああ、あの目玉飛び出しシーンは絶対3Dでビローンてなってたに違いない! 本作に出てくる女性はみんなイイおっぱいをしていた。あれもみんな3Dだったに違いないよ~! 目の前に張り出していたに違いないよ~! 最初の犠牲者(ミリアム・ジョヴァネッリ)にしろ、その友人(アーシア・アルジェント)にしろ、形、大きさ、乳輪、乳首と非常に素晴らしい。自分の娘に乳まで出させるアルジェントの心意気には、あっぱれとしか言いようがない! 3Dで観たかったよ~! しかし、妻役のミナ(マルタ・ガスティーニ)だけはこれおっぱいでてないんだよ。おかしいでしょ、アルジェント監督。マルタちゃんも、衣装の上から見る分にはなかなかいいパイオツしている。ところが彼女だけ脱がない、なんでだよ! 契約か!? 契約なのか!? いや出てたかな、2人の入浴シーンで、どうだったか......、憶えてないな......。というわけで『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』必見ですね。ではまた来週。
(なんと3/14に渋谷シネパレスで、【公開記念イベント】として一度だけ3D上映をすることが決定したそうです! ただし、字幕はなしとか。飛び出すおっぱいを取るか字幕を取るか!? 詳細はこちらから)。
文=ターHELL穴トミヤ
血しぶき、美女、エロス......巨匠ダリオ・アルジェンドが挑む吸血鬼
『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』
2014年3月8日(土)より渋谷シネパレスほか全国順次レイトショー公開
【渋谷シネパレス イベント情報】
3月7日(金) 前夜祭 アルジェントナイト
3月8日(土)アルジェント監督の近況報告! 公開記念トークショー 【ゲスト】山崎圭司 伊東美和
3月14日(金)日本初!字幕なんてないけど1度限りの3D上映会
※詳細は渋谷シネパレス公式HPでご確認ください。
関連リンク
『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』公式サイト
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