WEB SNIPER Cinema Review!!
37か国以上で初登場トップ10入りを果たしたバディ・コメディ
1週間後に結婚を控えた生真面目な弁護士ジェイソン(ザック・エフロン)は、祖母の訃報を受けて葬式に駆けつける。が、自由すぎる性格の祖父ディック(ロバート・デ・ニーロ)に誘われて祖母の思い出の地=フロリダへの傷心旅行に付き合うハメに。年齢も性格も全く違うふたりが繰り広げる珍道中の行く末は――。2017年1月6日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
チンポ・ブロックマン!膣の守護神!中出し・バック弁護士事務所!たしかにTIME誌には酷評されたかもしれない。しかし本作のギャグが放つトキメキの魔法に敬意を表し、私は2017年度の穴トミー賞を贈りたい。たしかに作りに荒いところはある、散々言い放題した挙句のとってつけたようなポリティカル・コレクトネス回収にどうなのよとも思う。しかし、チンポ・ブロックマン!膣の守護神!中出し・バック弁護士事務所!こんな声に出して読みたい字幕がロバート・デ・ニーロのセリフに当てられている(ちなみに全部ザック・エフロンへの悪口)。オーブリー・プラザも負けじと「トミー・ヒルフィンガーテク(トミー ヒルフィガーとかかっている)」などと発言し、お下劣のジェンダー・フリー化を推しすすめる。そんな、本作の字幕を眺めているだけで脳内にα波が発生し、幸せな気分になってくるというものではないか!『恋するポルノ・グラフィティ』(ケヴィン・スミス監督)以来、ひさびさのアホ下品日本語感覚に私は大いに感激したのである。
映画はロバート・デ・ニーロが長年連れ添った妻のお葬式から始まる。彼の孫であるザック・エフロンは1週間後に結婚を控えていたが、デ・ニーロから「傷心フロリダ旅行」の運転手を頼まれ渋々承諾するはめになる。ところが翌日、グランパの家を訪れた彼が目撃したのは全裸でオナニーしているロバート・デ・ニーロの姿だった! 本作のザックは父親の弁護士事務所に雇われ、嫌味な女と結婚寸前の、育ちのいいお坊ちゃん。そんな彼が、突如不良ジジイとしての本性をあらわにした、デ・ニーロのお下劣道中に付き合わされることになったのだ。
フロリダに向かう途中、ザックは偶然大学の同級生(ゾーイ・ドゥイッチ)に出会う。その連れのオーブリー・プラザがデ・ニーロにモーションをかけ始め、デ・ニーロの股間も爆発寸前になる。以後、オーブリー・プラザと一発ヤりたいデ・ニーロと、それを邪魔する男軍団との対決を中心に、ノリの軽いドラッグ・ディーラーや、俺ルールで全てをジャッジする警官コンビなどが入り乱れ、フロリダへの珍道中が続いていく。
本作、笑えるのは台詞だけではない。いけ好かないラクロス軍団と一気飲み対決をすることになったデ・ニーロは、相手のビールにこっそり向精神薬を砕いて混ぜるという極悪手段に出る。ところがザックがそれを間違えて飲んでしまう。しばらく経って様子を見に行ったデ・ニーロの前に現われたのは、全裸に股間だけを蜂の人形型Tバックで隠したザック・エフロンの姿だった!彼はラリラリになり、股間の蜂を揺らしながらみんなと輪になって踊る男になってしまったのだ!そこに昼間知り合ったドラッグ・ディーラーがやってくる。彼が渡したものを大麻のつもりで思い切り吸い込むザック、しかしそれはコカインだった!「お前はあと30秒後にオーバードーズで死ぬぞ!」と予告され、パニックになってからの、なぜかみんなで「USA!USA!」コール。そのまま「俺は死なない!」と完全アウトなセリフを残して、路上のKAWASAKIを盗んで街へと消えていくシーンで爆笑しない人間などいるのか?(TIME誌の編集者だけだろう)。アメリカ人ってどうせ筋肉自慢しながらコカインを吸って「USA!USA!」とか盛り上がったりしてるんでしょう?という偏見に120%応えてくれる本作のサービス精神を前に、2017年度穴トミー賞のゆくえは決したのである。
一方で、ちょくちょくザックにプレッシャーをかけてくる婚約者(ジュリアン・ハフ)がまた、本作のブレーキ役として最高の演技を見せてくれる。相談していると見せかけて、答えはいつも最初から彼女が決めているエゴイスティックさ。見ているだけでムカムカしてくる笑顔。黄色いセーターから覗く、見るものに殺意を抱かせる真っ白な襟。そこにはアメリカに脈々と息づく「優等生」への反感が渦巻いている。ザックの母親もこれまた彼女と瓜二つの雰囲気で、自身もまたそつなくエスタブリッシュメントへの階段を登って行こうとしている彼に、「それでいいのか」とチョイ悪グランパが真のアメリカイズムを伝えていく、それこそが本作の裏のテーマとなっているのだ。その「嫌な女性」キャラの造形と、真のアメリカイズムたるお下劣さを遺憾なく発揮するグランパの対比に、ヒラリー・クリントンが今回の大統領戦に敗れた理由の一端が見えてくる気もして、すこし笑顔が引きつらないでもない(ただ、デ・ニーロ本人は、トランプへのブチギレ動画をアップロードしたくらい政治的には反トランプの人間だ)。
そんな憎まれ役、ジュリアン・ハフの完全振り切れナルシスト全開ドヤ顔演技がこれまた素晴らしく、最大の見せ場であるカラオケシーンでは、顔芸一つでチンポを超えるインパクトを叩き出す。こちらもムカつく優等生映画の傑作として名高い『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』(アレクサンダー・ペイン監督)に出ていたリース・ウィザースプーン、彼女の一時停止鼻の穴ショックにも匹敵する素晴らしいキメ顔だった。
そして本作、小さなサプライズとしてデ・ニーロが「emoji」と口にするシーンがある。2016年、MoMAの収蔵作品にもなり、名実ともに世界の日本語となった「emoji」だが、デ・ニーロが口にするのを見ると日本人としてやはり感慨深いものがある。チンポ・ブロックマン!膣の守護神!中出し・バック弁護士事務所!本作以前には存在しなかったこれらの日本語も、やがては「emoji」のように世界へと羽ばたいていくに違いない......。帰りがけドンキホーテで蜂人形型Tバックを探しながら、本作の「声に出して読みたい字幕」をそっと呟いてみれば、2017年もきっとあなたにとって素晴らしい年になるに違いない。
文=ターHELL穴トミヤ
年齢も性格も全く違うふたりが旅に出る、
思いっきり笑えて意外とグッとくるバディ・コメディ!!
『ダーティ・グランパ』
2017年1月6日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
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