WEB SNIPER Cinema Review!!
2015年のサンダンス映画祭で大喝采、同年のカンヌ国際映画祭監督週間で大絶賛!!
L.Aのスラム街出身のマルコムは、自身のバンドと90年代ヒップホップをこよなく愛しているオタクで、名門大への進学を夢見る高校生。ある日、恋するナキアを追いかけて友人と共にパーティに参加したところパーティの裏で行なわれていたドラッグ取引に警察が突入、トンデもない事件に巻き込まれてしまう――。渋谷HUMAXシネマで絶賛公開中、、
8月13日(土)よりシネマート心斎橋にて、ほか全国順次公開
黒人が主人公のボンクラムービーが登場した! 主人公(シャメイク・ムーア)は、オタクの高校生。朝起きて一発目のお母さんとの会話は「ビットコイン」についてだし、つるんでる友達もいけてない2人組(レズと、インド系)。彼はスケボーが好きで、パンクがすきで、90年代のヒップホップが好きで、黒人のくせに白人趣味だから「オレオ」(外が黒くて中が白い)という自虐ネームのバンドを組んでいる。何より彼がイケてないのは、「勉強するのは恥ずかしい」と思っていないところ。おかげで成績も良く、ハーバード大学への進学を希望しているんだけど、学校の担当者は「お前は身の程知らずの傲慢な奴だ」と相手にしてくれない。だって彼が住んでるのは、LAの黒人ゲットーなのだから!
そんな毎日を過ごす彼が、童貞喪失大作戦だーっていう映画かと思っていたら、終始コメディーノリだけど、これけっこうシリアスな話なんじゃないか。主人公はいつもカツアゲを食らっていて、新しいスニーカーを履いていくたびに取り上げられる。学校から帰るときにも、ギャングスタ軍団が動画撮影中の道か、売人が自転車狩りを行なっている道か、究極の二択を迫られる。そこで選んだ「売人ルート」のせいで、主人公は超可愛いい女の子(ゾーイ・クラヴィッツ)と知り合う!んだけど、同時にトラブルにまきこまれていってしまう。
そしていつのまにか、いつもの黒人映画と同じ、ギャングスタ・ハスリン・ムービーになってるんだよ。違うのは主人公がイケイケじゃなくて、終始ビクつきながら、頭脳と窮鼠猫を噛む的な度胸で切り抜けていくところ。けどこの主人公、気づいたら銃を握って他人に向けてるところまで追い込まれている。そんな彼を見て周りのボンクラ友達も、銃が出たら一線超えちゃってるよなという感じでヒいている。ハーバード大学はどうなった!?せっかくあんなに頑張ってたのに?! なんでこんなことになってしまったのか......、すべての始まりは通学路にある。つまりは「住んでる環境が悪かったから!」という。そんなゲットーの泥沼感が、コメディの奥から垣間見えてくるのだ。
監督はヒップホップ好きのその後を描いた『ブラウン・シュガー』や、異人種間の結婚でまきおこるドタバタを描いた『マイファミリー・ウェディング』のリック・ファムイーワ。大量の麻薬を売りさばかなければならなくなった主人公は、Torを駆使してダークウェブ経由で売ろう!と、麻薬販売webを立ち上げる。はたして彼のトラブルは無事おさまるのか、大学進学は、かわい娘ちゃんとの恋の行方は!?とストーリーは進んでいく。序盤ではあったけど、売人のエイサップ・ロッキーと主人公が90'sヒップホップトークをする。そこでカツアゲするされる以外の、新しい関係が立ち上がるシーンが印象的だった。思春期に音楽が好きになり始めたころ経験した、外での出会い!目の前に学校のクラスとは違うもう一つの社会が立ち上がってくるような、それこそは趣味の醍醐味だ。
そしてボンクラ映画には欠かせない、おきまりのアホ白人も登場する。なぜかポリティカル・コレクトネス・ギャグが繰り返され、主人公たち3人が親しみを込めて「ニガ」と呼ぶのは許されるのに、この白人が主人公たちに「ニガ」と言うとビンタされる。いまどきの白人と黒人のあいだの微妙な空気感が垣間見れて面白い。
製作総指揮がファレル・ウィリアムスなだけあり、劇中に流れる音楽も90'sヒップホップに限らず幅広くてイイ。エイサップ・ロッキーに命令されて、かわいこちゃんを誘って向かうクラブでは、グライムがかかっている。女の子の部屋で聴くのは、こんな曲を聴いて女の子とダラダラしたら最高だなという、女性ボーカルのレゲエ(Kali UchisのKnow What I Wan)。ボンクラ友達の部屋でうすーくかかってるのは、ダブステップ。彼らが組むバンド「オレオ」の演奏シーンもあるんだけど、黒人っぽいグルーヴ感をあからさまに削ぎ落としてあって、リズム感がないとバカにされる白人のビートをあえて完コピしているのも芸が細かった(ファレル・ウィリアムスの作曲)。
ファレル・ウィリアムスは、自身もオタク少年だったという(彼が所属しているチーム名もN*E*R*D=オタクという名前だ)。従来の黒人映画のステレオタイプではない主人公の設定に彼の思いが反映されているのは間違いなく、しかし本作に込められたカウンターはそれだけではない。主人公たちがマフィアのボスの家に向かうと、そこにはボンボンのくせにギャングスタラップを歌ってる兄貴と、色情狂の妹(シャネル・イマン)が住んでいる。この妹が可愛い。しかも、主人公を童貞とみるや悪魔のように誘惑してくる!そのときにポロンする胸が、Bカップくらいなのだ!!デカ尻デカ胸文化のアメリカにあって、「えっ!?Bカップ!?」の衝撃。ここには、「黒人がみんなギャングスタなわけじゃないんだよ」に並ぶ本作もう一つの新しさ、「黒人みんながボイン好きなわけじゃないんだよ!!!」という、製作総指揮ファレル・ウィリアムスの思いが込められているに違いないのである。このBカップこそが、アメリカン黒人カルチャーの未来を占う小さいけれど大きな一歩になる!私はそう確信してやまないのである。
文=ターHELL穴トミヤ
リック・ファムイーワ監督が青春時代を過ごしたL.A.犯罪多発地域
イングルウッドを舞台にしたコメディ映画!!
『DOPE/ドープ!!』
渋谷HUMAXシネマで絶賛公開中、、
8月13日(土)よりシネマート心斎橋にて、ほか全国順次公開
関連リンク
映画『DOPE/ドープ!!』公式サイト
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