WEB SNIPER Cinema Review!!
リアル極限サバイル・ヒロイン・アクション
満ち潮と共に海面に沈んでいく岩場。助けてくれる人すらいない、秘境のビーチ。傷口から溢れ出る血。腹をすかし、回遊し続ける人喰いサメ。所持品は、ピアスとストップウォッチのみ。残された時間は100分。岸までの距離は200m......悪夢のようなシチュエーションに置かれたヒロインが起こした行動とは――?7月23日(土)全国ロードショー!
監督は『エスター』『フライト・ゲーム』のジャウマ・コレット=セラ。主演は『ゴシップガール』『グリーンランタン』のブレイク・ライブリー。メキシコ、ティファナの人里離れた秘密のビーチに向かうライブリー、そこは母親が若い頃に訪れた場所だった。先客が2人いるなか、すばらしい脱ぎっぷりを見せ、さっそくサーフボードを抱えて海に向かう彼女。晴れ渡る空に、透きとおった海、ここはまさに楽園だ......。
空撮、水中撮影を駆使して映されるサーフィン映像では、スクリーンから水量感が溢れ出す。お手並み拝見といった感じの先客サーファーたちも、巨大な波を乗りこなす主人公に「やるじゃねえか」みたいになり、そして流れ出すEDM!イエーイ!もうサイコー!とアガりきりそうな心の奥底に、かすかな不安が芽生える。『ピラニア3D』(アレクサンドル・アジャ監督)しかり、海辺でチャラい音楽を聴く者は死ぬ。それが、肉食魚類映画を貫く鉄則ではなかったか。しかもこのEDMの編集が示唆にとんでおり、カメラが水上を滑るボードを捕らえている時はガンガンあげあげ!カメラが波に飲まれると、とつぜん音楽が消え海中の音しかしない。また水の上に出るとE!D!M!水面下だと海中の音......、細かくミュート編集されているのだ。EDMといえば、今公開中の素晴らしい青春映画 #最高かよ #仲間 『WE ARE YOUR FRIENDS ウィー・アー・ユア・フレンズ』(マックス・ジョゼフ監督)がまっさきに頭に浮かんでくるが、パーティーを支配するのがビートである一方、海を支配しているのは自然界の法則なのだ、とでもいいたげなこの編集が意味するところはなんなのか。
一旦ビーチに戻った主人公は、実家とSkype通話を始める。妹から父親に変わったところで会話の雲行きは怪しくなり、どうやら彼女は医大を勝手に休学し、このビーチにやってきたらしい。母親を失って自暴自棄になっている自分を認めたくないあまり、一方的に通話を切ってしまうライブリー。もう一度沖に向かおうとするが、先ほどのサーファーたちが「もう夕暮れだ!帰ろうぜ」と声をかけてくる。それでも「あと一本だけ」と、これが運命の分かれ目であった。
なにか海の雰囲気がさっきと違う。さらに沖に向かったところで、出現する異様な塊。それは食い荒らされたクジラの身体ではないか!?誰がやったのか......。 #不気味かよ #仲間が食われてる 不穏なバイブスを感じて帰ろうとした彼女に海の底から、向かってくる黒い影。巨大ホオジロザメの登場である。ブレイク・ライブリーもうここでさっそく血まみれになり、「いきなり食われて終了~!?ARE WE YOUR FOOD!? #捕食かよ」と衝撃を受けたのだが、なんとか太ももを噛まれただけですんでいた。しかしサーフボードも漂流し、彼女がすがりつけるのはクジラの上だけ。太ももはバックリ裂け、一人ぼっちのサバイバルが始まった......。
と続いていくわけだが、本作サメ映画であると同時に、遭難映画でもあり、その孤独感は『127時間』(ダニー・ボイル監督)にすごく近かった。舞台は砂漠から海へ、主人公は男から女へと入れ替えられているものの、自分の行き先を誰にも伝えていない後悔や、二人組と別れた後に一人で事故に遭うところ、腕時計の活躍っぷりや、家族に冷たい態度を取ってしまったことへの後悔、さらにはビデオカメラへの一人語りなど、共通する展開はかなり多いのだ。そしてグロ描写でもまた『127時間』と張り合うつもりなのか、レイク・ライブリーが医療知識を生かして行なう装飾具での怪我の治療......。ひさびさに、痛すぎてスクリーンを直視できなかった。
もちろん本作はサメ映画でもある。『127時間』のジェームズ・フランコは孤独の中で白昼夢を見まくっていたが、ブレイク・ライブリーにそんな余裕はない。なにしろ満潮になると、今いる場所は沈んでしまう。周囲には、岩礁と、ブイ、そして傷ついて飛びたてなくなった一羽のカモメだけ。自然法則だけが唯一のルールとなって、命をかけたパズルゲームが始まる恐怖......サメは淡々とその時を待っている。
サメといえば、サメ映画によっていつしか常識となった「血の匂いに敏感」という性質(ただし科学的にはそんなことないらしい)がある。本作でもこのホラー知識を刺激すべく、主人公が水に浸かるたび血の拡がるさまがたびたび描かれる。「ああ、サメちゃんビンビンきちゃってるな。血の匂い嗅いで、おいしいそうなブレイク・ライブリーのボディに突入したくてたまらなくなってるな!?」からの、サメが燃えながら宙を飛ぶシーン。シリアスなトーンで貫かれた本作でありながら、サメ映画としてはアホさを逃げないジャウマ・コレット=セラ監督にあたたかい拍手を送りたい。私は(劇中の設定はメスながら)このサメと、ブレイク・ライブリーの戦い、ムラムラ男とセクシーレディの関係としても興味深かったので、みなさんもそんなことをチラッと考えながら、その最後を見届けてみてほしい。
というわけで本作が大ヒットし、誰も彼もが海に行きたくなくなったところで、私は無人のビーチに行きたいなと企んでいるのである!(死ぬパターン)。
文=ターHELL穴トミヤ
楽しい休暇になるはずだった――
岸はすぐそこ。しかし、たどり着くことはできない。
『JAWS/ジョーズ』以来の"本格的サメ映画"がついに誕生!
『ロスト・バケーション』
7月23日(土)全国ロードショー!
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