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(C)eOne Films (EITS) Limited

WEB SNIPER Cinema Review!!
現代の戦争を描いた衝撃の軍事サスペンス。
ドローン兵器を使った現代の戦争の世界。会議室から干渉する上層部と、指揮官キャサリン(ヘレン・ミレン)の強烈な正義感。一人の少女を見殺しにするか、80人の命を危険に晒すか、彼らが出した答えは――。

12月23日(金)TOHOシネマズシャンテにて公開/2017年1月14日(土)より全国公開
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(C)eOne Films (EITS) Limited

無人攻撃機(ドローン)によるテロリスト暗殺作戦を題材としながらさすがのイギリス、緊迫した状況なのに会議映画になっていくのがおもしろい。攻撃許可を巡って、法務大臣や、閣外大臣や、政務次官が卓を囲んで喧々諤々し、首相は電話越しに丸投げ、外遊中の大臣は捕まらず、そこに唐突にアメリカ合衆国国家安全保障会議上級法律顧問から「ちょっとコメントいいかしら?」的割り込み通話が入り、その場にいる全員が「お前誰だよ」と思っているのは間違いないながら、さすが大人の中の大人たち「ご助言感謝します」とそつなく返事しつつ時間が無駄に過ぎていく。そのあいだ現場を統括するヘレン・ミレンは首までストレス五右衛門風呂に浸かって攻撃許可を求め続け、現地の工作員は周りをテロリストに囲まれ、何も知らない少女は独りパンを売っている。

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監督は『ウルヴァリン:X-MEN ERO』『エンダーのゲーム』のギャヴィン・フッド。Mr.イギリス、コリン・ファースがプロデューサーに名を連ねている。ヘレン・ミレン演ずる英国情報機関所属の大佐はその日、ナイロビに出没する、アル・シャバーブ(イスラム過激派テロリスト)の英国人メンバーをドローンで追っていた。当初は容疑者確保を目的とした作戦だったが、自爆ベルトが見つかったところから事態は急変する。上空に待機しているドローンによる攻撃許可を求めるヘレン・ミレンに対し、閣僚たちは二転三転。さらにアジトの横で、1人の少女がパンを売り始めてしまったことで、攻撃許可はより重くなる。爆撃すれば少女はまきこまれて死亡する。自爆犯を出発させれば、群衆の中で自爆し大量の死者が出る。膠着する状態を前に、ヘレン・ミレンはぶれずに攻撃を主張し続ける。

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同じく「ドローン」を題材とした映画に、イーサン・ホークが主人公の『ドローン・オブ・ウォー』(アンドリュー・ニコル監督)という作品があった。主人公たちはネバタ州空軍基地の一角に置かれたコンテナの中から、毎日1万キロ以上離れた場所の人間を殺しては、退勤時間になると薄いドアをあけて日常生活へと戻っていく。そのギャップに、イーサン・ホークが徐々に精神のバランスを崩していく、これはアメリカのドローン操縦士の間で現実に起きている問題だ。
本作にも全く同じコンテナが出てきて、「大学の資金を稼ぐために軍隊に入ったんだ」という青年(アーロン・ポール)と「今日が初任務よ」という若い女性隊員(ファービー・フォックス)が吸い込まれていく。あー初々しいこの二人が今から地獄を見るのか!とワクワクしていたが、本作が描いているのは、ドローンだけではない、距離を超えた軍事行動の衝撃だ。
ドローンが飛んでいるのはケニアのナイロビ上空で、それを操作しているオペレーターはアメリカにいる。犯人の顔を識別する部隊はハワイにいて、全体の指揮をしているヘレン・ミレンはロンドン郊外に、閣僚たちはロンドンの内閣府にいる。距離から自由になった彼らは、それぞれの場所にいながら、意識だけナイロビ郊外の一軒家に移動する。
閣僚の一人である中将(アラン・リックマン)が、作戦前に妻から「孫へのおもちゃ」を買わされる演出が面白い。このおもちゃが日常生活の場所を示す灯台となって、物語の最後にもう一度出現する。そのときに感じる、物理的には全く移動しないまま、どれだけ自分が遠くまで来てしまったのかという驚き。これこそが、距離を超えた軍事作戦の強烈な悪夢体験なのだ。

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それにしても『ドローン・オブ・ウォー』ではバンバン殺しまくっていたのに、本作は「撃てない!」みたいなこと言う奴らばかり。それが米軍と英国軍の違いなのか、イギリスはアメリカと違って、そんな野蛮じゃないんですと言いたいのか?そんなことないだろ!イギリスだって散々汚いことやってるでしょ!!いい子ちゃんぶっているんじゃないよ!!と思っていると、政務次官が「あえて自爆犯を見逃して大量の市民を殺させれば、われわれはテロリストにプロパガンダで勝利できる」と言い出したりして、その発想のダーティーさに興奮した。そうそう、そういうのが観たいんだ......。
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鬼上司ヘレン・ミレンに無茶ぶりされまくる現地の工作員(バーカッド・アブディ)が唯一、行動に良心をすべりこませる余地を持った立場でほっとする。この映画で、撃っても撃たなくてもヘレン・ミレンは血にまみれる。部下はその連帯責任を負い、操縦者にはPTSDの危険がある。現地工作員は最も危険で、もちろん一番の貧乏くじを引いているのは何も知らずに巻き込まれる現地の住民だ。反対にロンドンの閣僚は責任を問われない正解を探し続け、首相は最も気楽な位置にいて、ではその先にいるのは誰なのか。
本作は、パンを焼く窯の中から外の景色を眺めるシーンから始まる。暗闇の中から庭を眺めるこのカットが暗示しているのは、ドローンによる暗殺が、窯の中に潜む「覗き屋」たちによる殺しだということだ。その「覗き屋」たちの潜む釜はドローン操縦室から、作戦司令室から、閣僚会議室から、もちろん最後は映画館の暗闇にまで通じている(釜の口はまるでスクリーンのように四角く切りとられている)。この映画に出てくるどの当事者にも絶対なりたくないが、私たちはみな同じ釜の中にいると、本作のオープニングは突きつけているのだ。そこには最も気楽な当事者としての、暗い興奮があった。

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文=ターHELL穴トミヤ

罪なき少女を犠牲にしてまでも、テロリストを攻撃するべきか?
正義とモラルを問う強烈なラスト!


『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
12月23日(金)TOHOシネマズシャンテにて公開/2017年1月14日(土)より全国公開

(C)eOne Films (EITS) Limited
原題=『Eye in the Sky』
監督=ギャビン・フッド
出演= ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマン、バーカッド・アブディ、ジェレミー・ノーサムイアン・グレン、他
配給=ファントム・フィルム
宣伝=ブリッジヘッド、キャノンボール

2015年│イギリス│英語│カラー│スコープサイズ│102分

関連リンク

映画『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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