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驚愕の"実話"を映画化! サム・ライミが震え上がった想像を絶するほど衝撃的な実話とは
『死霊のはらわた』、『スパイダーマン』シリーズのサム・ライミがロサンゼルス・タイムズ紙の報じた実話を基にプロデュース! eBayに出品された呪いの箱をめぐる全米大ヒットホラー!5月25日(土)、シネマサンシャイン池袋ほか全国ロードショー!
2004年7月、ロサンゼルス・タイム紙に奇妙な記事が掲載された。落札した人間が次々と不幸に襲われる、呪いの箱がeBayに出品されているというのだ。記事はロサンゼルスの住民の大多数を占めるオカルト研究家にオタク、アホやヒマ人を相手に大騒動を巻き起こし、その中には新聞を握りしめ「マジ、こえー!」と目を$マークにして打ち震える、サム・ライミの姿もあった(に違いない)!
というわけで、実話を元にした本作、『ポゼッション』が誕生した。プロデューサー、サム・ライミが連れて来たのはデンマーク出身の監督オーレ・ボールネダル。ユアン・マクレガーがサイコキラーに濡れ衣を着せられる『ナイトウォッチ』や、最近では宇宙人の女教師と子供たちが戦うホラーSF『パラサイトX』など、彼の作品はジャンル映画ながら、いつも登場人物の反応に独特なところがあっておもしろい。今回は、どんな逸脱を見せてくれるのか!?と思ったらかなりかっちりした出来、どちらかといえばサム・ライミ色が濃い作品となっていた。
呪いの箱に取り憑かれてしまうのは、弱冠13歳(もっと幼く見えたけど)カナダ出身のナターシャ・カリス演じる次女エミリー。父親(『ウッドスットックがやってくる!』『ウォッチメン』のジェフリー・ディーン・モーガン)に連れられて向かったガレージ・セールで、彼女はなにやら古くて、不思議な文字の掘られた箱を買ってもらう。その日を境に、度を超して情緒不安定になっていくエミリー、さらには蛾の大量発生など、周囲にも次々と不気味な出来事が巻き起こる。やがて父親は、娘が「箱」に異常な執着をみせていることに気がつくが......、とストーリはすすんでいく。
父親の仕事はバスケットボールチームのコーチなのだが、冒頭、彼が選手たちに「想像のボール」でゲームをさせるシーンがある。実在しないものも、みんながあると思えば、そこに存在し始める......。まさに呪いをテーマとした本作に対する、鋭い批評。その知的なほのめかしに感心しそうになったが、その3分前には登場人物が悪魔によって物理的にぶん殴られて吹っ飛んでいたから、やっぱり呪いも悪魔も実在するんだ! あやうく常識的な見方に丸め込まれるとこだった! あぶないあぶない!
そんな凶悪な悪魔に取り憑かれてしまったエミリーの変わりようは凄まじく、母親と同居中の男をブランコから眺める悪魔メンチ! 実の父親を挑発するときの、アル中娼婦のような憎々しい顔! かと思えば、正気に戻り「ごめんなさーい!」と泣き叫ぶあどけなさ! 観ていると、未婚どころか彼女に捨てられてはや1年の私ですら、「まさか! あんなにかわいかったうちの娘が、反抗期に!?」という気分になってくる。
部屋中に何百という蛾が飛び回っていたり(本物の蛾を使ったらしい)、衝撃描写も多い本作だが、もっとも素晴らしかったのは、エミリーが夜中に家を飛び出すシーン。街灯に照らされた巨大な壁の横を走る、白パジャマに裸足の少女。そして人里離れた物流倉庫に奥から走り込んでくるカット。常夜灯がアスファルトを照らし、ここはまるで少女の夢の中にいるかのような夢遊感に満ちていた。
一番最初に「箱の呪い」に気づくのは父親なのだが、そこでもちあがってくるのが、それをどうやって周りに伝えてるのかという問題だ。夫婦は離婚し、エミリーは母親と父親の間を行ったり来たり。母親の家には新しい男も同居していて、そんな中、娘が突然情緒不安定になったその原因は......「悪魔だ! 悪魔が娘に取り憑いたんだ!」と説明したら、イッツ・ジ・エンド。「あそこのお父さん、離婚でノイローゼになっちゃったんだって」となるわけで、そこで本作まさかの! 娘を病院に連れて行くと、体に巣食った悪魔がMRIに映っちゃう! これにはママも納得、「呪いの箱がeBayに出品されるなら、悪魔がMRIに映ってもいいだろう」という、サム・ライミの大胆なプロデュースぶりには感心しきりだ。
やがて訪れる悪魔との対決では、またもやナターシャ・カリスの演技が爆発。たけり狂った悪魔に乗っ取られ、カエルのような格好で咆哮するその姿は、まさにオジー・オズボーン。本作を観た人はもう、町中でゴス少女を見かけても、「両親の愛情が欲しいあまり、悪魔に巣食われてしまった犠牲者でしかも除霊される寸前」としか見れなくなってしまうことだろう。
ところで本作、何かが起こるときにはいつも「風」が吹いてくる。じつは『ナイトウォッチ』でも『パラサイトX』でも、「風」はとても特徴的に扱われている。これこそは本作にもっとも強く刻まれたポール・ダネル監督の痕跡。そこで思い出すのが、もう一人の風の監督、宮崎駿だ。彼の作品でも、主人公の感情が揺れるとき、そこにはいつも風が吹く。ついでにいえば本作、その設定からして『となりのトトロ』そっくり(両親が離ればなれになってしまった幼い姉妹が、父と一緒に郊外の家ですごすうち、不思議な生き物に出会ってしまう)なのだ。家族の崩壊を前にして、子どもたちがトトロに出会う代わりに、悪魔に巣食われてしまうのが本作、『ポゼッション』! 全国で孤立しているお父さんは全員「『となりのトトロ』みたいな映画があるんだよ」といって、家族連れで『ポゼッション』を観に行くべきだろう。「みんながお父さんのこと急に嫌いになっちゃったのは、悪魔のせいなんだ!」と説明すれば家族円満! またはその場で離婚が成立すること間違いなしだ。
文=ターHELL穴トミヤ
驚愕の"実話"を映画化!!L.A.タイムズが報じ、
サム・ライミが震え上がった想像を絶するほど衝撃的な実話とは―
『ポゼッション』
5月25日(土)、シネマサンシャイン池袋ほか全国ロードショー!
関連リンク
【公式サイト】映画『ポゼッション』│5月25日、ロードショー
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