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(C)Koichi Onishi 2011

WEB SNIPER Cinema Review!!
おばぁ達が唄う神唄を耳にする時、不思議な懐かしさと感動が胸を打つ!!
土地の言葉で「ミャーク」と呼ばれる宮古島。ここには島での暮らしや神への信仰から生まれた古謡「アーグ」と「神歌」と呼ばれる唄があり、長く歌い継がれてきた。本作はその神聖な唄の歴史と現在を巡る悠久のドキュメンタリー。

東京都写真美術館ホール、吉祥寺バウスシアターほか全国にて絶賛上映中!
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(C)Koichi Onishi 2011

この映画には、たしかに特別な気配が満ちている。観た後には、特別な気分になっている。それはなんでしょう。それはそうですね、思い出すのは「生きていくのはつらいことかなしいことばかりだけど、それでもこの人生を楽しく生きていきましょう」というセリフ。文章で書くといかにも紋切り型で陳腐なんですが、でもそれが言葉ではない、なにか空中に漂う水分のようになって、この映画から漂ってくる。日本に宮古島があってよかった! 観終わると強くそう思う、そんな映画になっていました。

(C)Koichi Onishi 2011

本作は宮古島に人知れず眠っていた古謡(アーグ)・神歌(かみうた)を掘り起こしにいくというドキュメンタリー。驚くのはその唄の古さと、そして沖縄の中でもさらに文化圏がわかれているということで、宮古島の唄というのは、沖縄民謡ともまた違うものなんですね。
宮古島には、古代日本の記憶、そしてポリネシアの記憶すら感じられる。本作で聴くことができる宮古の唄は、インドネシアのガムランのピッチを落としたみたいな、でもやっぱり古い民謡でもあるような、そんなしらべに聴こえます。
この映画はときどき字幕が出てきます。宮古島の老人のしゃべる言葉は、島同士の人間で話す方言になると、もうなにを言ってるのか分からない。それは方言というより宮古語で、宮古の老人は2つの言語を操っているということじゃないでしょうか。

(C)Koichi Onishi 2011

日本はひとつじゃなくて、違う文化圏がまとまって日本と呼ばれている。それを個人的な話になるんですが以前、沖縄旅行に行ったときにも感じたんですね。奄美大島(は鹿児島県ですが)、竹富島、波照間島、なんかに行ったんですが、何より違うのは宗教でしょう。と、ここから学術的な話になっていけばいいんでしょうが、そういうのはよく分からない。いやよく分からないからこそ、気安い感じで波照間島の御嶽(うたき)に入っちゃった。看板には「聖地ですから気安く入らないようにお願いします」みたいに書いてありましたけど、まあ周りに誰もいないし、「はいはい」みたいなノリで1人入ったんですね。まあ中になにがある訳でもないんで、「こんなものか」とうろうろ歩いて出たんですが、そしたらそのあと穴に落ちて左足を12針縫いましたからね。周りの人は笑っていましたが、あれはビビりました。なんかバチがあたっちゃってる系なんじゃないかと。さらに帰ろうと思ったら、今度は船に乗るときなぜか棺桶とすれ違ったりして、ガンガンキてるなと。南西諸島の神様ごめんなさいと。なんだかこの島の宗教はまだ存在感が強いうえに、自分の知っている日本の宗教とは違う雰囲気だな、別の神様の体系だなというのを強く感じました。
その後、奄美大島でも、浜辺で会った若者からふつうにクラスメイトが宗教的に選ばれて「目覚める」というような話を聞き、近所の神社や寺とは別の、自分と地続きの神様の世界がここら辺にはあるんだなと、自分なりに納得していたんですね。

(C)Koichi Onishi 2011

本作には宮古の神社の巫女、神女達(ツカサンマ)と呼ばれる「選ばれる」女性たちが出てきます。宮古でもほとんど消滅しかかっているそうなんですが、そんな彼女達が歌う唄はもはや古代語なのか、全然何を言っているのか分からない。繰り返される旋律は、まるでアマゾンで行なわれる儀式のようなサウンドで、ある唄は気持ちよかったり、ある唄は気が狂いそうな不気味なものだったり、そして彼女達は神様の声や姿を見聞きする。なんだかこの旅行のときの雰囲気がフラッシュバックして、僕はこわかったですね。でもそれこそ、本物の宗教じゃないでしょうか。日本にこんな濃い宗教社会がまだ続いていたというのは、かなりの驚きです。

(C)Koichi Onishi 2011

映画はやがて、宮古列島が沖縄の中でも二重に支配されていたという歴史に焦点を当てていきます。薩摩藩による琉球王国への支配があり、さらに琉球王国(沖縄本島)による、宮古列島への支配があった。人頭税を始めとする、その重い搾取構造から宮古の唄が生まれ、これは日本のブルースなのだというのが本作の主張なんですね。
でなんか、サトウキビ畑の前で座ってるおっさんとかが出てくる。この人の昔話を聞くと「辻で歌ってね。みんな集まってくるよ。いやみんなは聴くだけさ、芸がないからね」とか言っていて、「仕事のあとの演奏タイム」みたいなそのノリは、確かに南部デルタ地帯。綿摘み労働あとの軒先ブルースと同じ構図ですよ!
床屋の嵩原清さんという人が歌った『池間口説(イケマクドゥチ)』 という唄が途中でかかるんですが、これなんかビートが太くてめちゃくちゃかっこいい。床屋が歌ってるという設定もヤバいじゃないですか、ジョージ・クリントンより先に床屋ダンスミュージックが存在していた! 日本史に欠けていた踊れる民謡の出現に興奮しました。

(C)Koichi Onishi 2011

そんな宮古の民謡なんですが、ちゃんと受け継いでいる子どもがいて、彼のコンサート・シーン、これがまた味がある。この子は、舞台上で演奏しているんですけど、途中で歌詞を忘れて泣き出しちゃうんですね。そうすると、客席からすぐに手拍子がわき起こり、がんばれーと声が飛んできて、独特の指笛も聴こえて来たりして、かえって一体感が増している。あの舞台上のゆるさ、そして客席の反応の良さに沖縄の神髄をみましたね。

(C)Koichi Onishi 2011

映画の最後、宮古の神歌を歌っている90歳を超えた婆さん達が、東京にコンサートにやってきます。ここにきて、沖縄最深部と、ヤマトの中心部がスパークするんですが、婆さん達の泣いちゃった子どもとある意味地続きのゆるさ、そのフリースタイルぶりもさることながら、演奏が始まると客が踊りだす! このクソ赤坂のファッキン・ハイプな草月ホールも、まさかの沖縄状態に! というシチュエーションに興奮しました。
さらにそのライブ中に、その婆さん達が東京タワーを観光しているシーンが挿入されてくる。展望台から東京を見渡して、「ああ、生まれたかいがある、ああ、お父さんとお母さんにありがとうだよ」と言っている。これを観て、呪われた東京、日本が、清められていくのを感じました。日本はまだ神に見放されていなかった。神様がこの映画をして、この婆さん達を東京につかわしてくれたに違いない。この国には、ああまだ宮古島があったのだ、とそう思いました。そうして、観終わると冒頭で述べたような気持ちになっていたんですね。

文=ターHELL穴トミヤ

第64回ロカルノ国際映画祭批評家週間部門批評家週間賞
審査員スペシャル・メンション2011を受賞!!





『スケッチ・オブ・ミャーク』
東京都写真美術館ホール、吉祥寺バウスシアターほか全国にて絶賛上映中!
(C)Koichi Onishi 2011

監督=大西功一
監修=久保田麻琴
出演=久保田麻琴、長崎トヨ、高良マツ

配給・宣伝=太秦

2011|日本|104分|HD|16:9 |カラー|ステレオ

関連リンク

映画『スケッチ・オブ・ミャーク』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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