
(C)2012『僕の中のオトコの娘』製作委員会
WEB SNIPER Cinema Review!!
『スリーカウント』『失恋殺人』の窪田将治監督が放つ、ちょっとコミカルな"女装娘"映画!!
一度は就職するも会社に馴染めず、引きこもりになってしまった青年が、女装趣味の男性たちと知り合ったことをきっかけに未知の世界へ。新しい体験を通して自身の生き方を見詰め直していく姿を描いた青春映画。12月1日(土)より銀座シネパトスにてロードショー!!ほか全国順次公開

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ひさびさに秋葉原に行ったら、男女混合の若い楽しそうな5人組が歩いてくる。しかしその中の1人は女装した男の子だったー!というのが私の女装娘(じょそこ)、初遭遇だったんですが、その屈託のなさに、まさに新時代を感じました。その後、アニソン寄りのクラブイベントなどでも、アニメキャラクターの格好をしたオトコノ娘(こ)がperfumeに合わせて踊っていたりしていて、はたして女装娘とはなんなのか......。たしかに今までの「女装愛好家」とはちょっと違う......、もっとカジュアルというか......、女装というより、コスプレ? 女キャラのコスプレから一歩進んで、女の子にコスプレするみたいな感じなのかー!?と気になっていたところ、なんと「女装子」映画が誕生するというじゃないですか。それが本作『僕の中のオトコノ娘』だー! ウオー、女装娘とはなんなんだー!

(C)2012『僕の中のオトコの娘』製作委員会
と思って観に行ったんですが......、今までと何が違うのか......、いまいちわからなかったですだよ。と思わずもんじゅ君口調になってしまいましたが(たくさん知恵をしぼったため)、一応、女装が好きで、同性愛者だったりそうじゃなかったりする、それが女装娘!というのがこの映画からは読み取れました。っていうかそれ別に今までと変わらないんじゃないの! わざわざ新しい名前がついたからには何が違うの! そこでWEBスナイパー「オンナノコになりたい」特集を読んでみたところ、女装! これですね! 変身! 別に新しいとかない! あえて言うなら若い子が女装したら女装娘!ぐらいの感じでいいんじゃないか! 同性愛かどうかは、人それぞれだよね!という。
そして本作は、新ムーブメント紹介というよりはむしろ、行き場のない人間が自分の居場所を見つける、ボンクラ主人公の自己実現的展開に力点が置かれた作品なのでした。
主人公のケンスケ(川野直輝)は職場でイジメにあい、実家に引きこもる元会社員。このイジメシーンなんですが、山田キヌヲ演じる女性上司の、いびりの波状攻撃。男を引きこもらせるすばらしい陰湿さでしたね。思い出しただけでゲッソリします、ありがとうございました。そんな主人公が、ある日姉の服を羽織ったところ、何かピンときちゃう。やがて運命に導かれるように、ネットの女装掲示板に行きつき、1人の女装子(草野康太)と知り合います。メールをやり取りするうち、イベントに誘われた彼は、久しぶりの外出を決意して......。
と物語はすすんでいくんですが、そうして訪れる、「初めて本格的な女装をした主人公の『鏡に映っていたのは、見違えるように美しくなった自分だった』」というシーン。これはやっぱりベタながら感動するんですね。
たとえば、RAMONESのドキュメンタリー『END OF THE CENTURY』でメガネにひょろ長のどうしようもない高校生だった少年が、初めてライブをやった途端「まるでロックスターみたいに見えたんだ」と証言される、その瞬間。ドリュー・バリモア監督の『ローラーガールズ・ダイアリー』で主人公のエレン・ペイジが偶然、ローラースケートを履いた女の子たちの軍団に出会う、何かが今スパークしたんだ!と感じられる、あの瞬間。やっぱり、主人公が何かに目覚める、変身する、または何かに出会って、人生が変わるシーンというのはぐっと来る。
初めて上級者の手によって女装されたケンスケが、更衣室の鏡に写る自分を見るシーンは一番の山場、かなり観る側の期待値も上がっていて、でもそれを上回るかわいさなのがいい! その後も女装するだけで、スクリーンが華やぐのがいいよね! いいよね! 男でいる時より、女でいる時のほうが生気も目に見えて感じられる。「ケンスケくん、もうずっと女でいいんじゃない!」と言いたくなってくる。これこそ川野直輝の演技力と、この映画の女装技術の高さの証しなんですが、これだけでもう、女装娘映画として成功と言ってもいいのではないか!

(C)2012『僕の中のオトコの娘』製作委員会
もちろん映画はこのままでは終わらない。やっとみつけたユートピアも、新たな敵の出現によって危機に陥り、さあどうするケンスケ!と続いて行くんですが、それにしてもここから、物語がなんか新宿2丁目に回収されていっちゃうのが、少し残念でした。もっと街なら秋葉原とか逆に津軽とか、場所もクラブとかゲームセンターとか、今までのゲイ映画とは別の、新たな設定を期待したんですが......。そしてケンスケの自宅はなんかすごい郊外の新興住宅地っぽいんだけど、自転車ですぐ2丁目まで行ける。いったいあれはどこなのか......。
いやそんなことはいい! 女装するには、自立しろ。自立したら、好きにしろ。というこれは、若者への自立応援映画なわけです。監督には、ぜひこの路線をもう一歩押し進めてもらって、次回は『選挙にたっちゃう、オトコノ娘』、日本のハーヴェイ・ミルクみたいなのを期待したいです!
文=ターHELL穴トミヤ
僕を変えたのは一着のワンピースだった......。
不器用な"オトコの娘"の自分探しの旅が始まる!
『僕の中のオトコの娘』
12月1日(土)より銀座シネパトスにてロードショー!!ほか全国順次公開
監督・脚本・編集=窪田将治
出演= 川野直輝 中村ゆり 草野康太/河合龍之介 内田朝陽 山田キヌヲ 馬場良馬(友情出演) 柳憂怜/木下ほうか/ベンガル
配給・宣伝=太秦
宣伝協力=ボダパカ
2012年|日本|カラー|100分|HD
出演= 川野直輝 中村ゆり 草野康太/河合龍之介 内田朝陽 山田キヌヲ 馬場良馬(友情出演) 柳憂怜/木下ほうか/ベンガル
配給・宣伝=太秦
宣伝協力=ボダパカ
2012年|日本|カラー|100分|HD
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映画『僕の中のオトコの娘』公式サイト
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ターHELL 穴トミヤ
ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。