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潔癖症の女社長と無責任男が繰り広げる壊乱ロードムービー!!
投資銀行の敏腕社長ミヒカは、ムンバイから飛行機に乗り首都のデリーへ向かったが、機体トラブルによって手前のジャイプールに着陸してしまう。仕方なくタクシーを使おうとしたものの、運転手がどうにも頼りなくて......。そこへ機内で居合わせた男マヌが「大丈夫! 俺も一緒に行くから!」とタクシーに突如乗り込んできて――。

2月15日(土)より オーディトリウム渋谷ほか全国順次公開
途中下車不可能のロードショー!

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『デリーに行こう!』は『デュー・デート 出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断』を翻案したボリウッド映画というふれこみ。デュー・デートのインド版! そう来ましたか! 観るしかナマステー!と膝をたたいたのだが、そんなデュー・デートでもなかったような......。
『デュー・デート~』は鼻持ちならないエリート男(ロバート・ダウニー・Jr)と、むちゃくちゃで非常識な男(ザック・ガリフィアナキス)が、コンビでアメリカを横断するはめになるというコメディ。とにかくガリフィアナキスがむちゃくちゃすぎて、それに振り回されるいやみな男を観てるのがバカウケ~という映画だった。いっぽうの『デリーに行こう!』では、このいやみな男の役割がラーラ・ダッタ演じる女性にふられていて、ガリフィアナキス役は、ヴィナイ・パタック演じる中年小太りのひげ男。この差が大きい! 男同士じゃなくて男女のコンビだと「社会性」と「反社会性」の対比だった『デュー・デート』のメッセージが、性差の対比にとけ込んじゃうんだよな~。あんま際立たないんだよな~、もぐもぐ(ナンを食う音)と、「デュー・デート~」期待ばりばりモードだった私は思うのである。



しかし、本作ロードムービーとしてはよくできている。投資銀行で働くミヒカ (ラーラ・ダッタ)は仕事をてきぱきとこなし、潔癖性を持つキャリアウーマン。デリーへ向かうため空港へと急ぐが、デリカシーのない男に邪魔されたり、デモに巻き込まれたりして、飛行機を逃してしまう。代わりに乗った格安バジェット航空でも機内トラブルが発生し、気づけばデリーからはるか離れた街に1人きり。夜もふけ、しかたなくタクシーを雇ってデリーに向かうが、この運転手もロクデナシ。
そこにあらわれたのがいつぞやのデリカシーゼロ男、マヌ(ヴィナイ・パタック)だった。彼は運転手をどやしつけ、さらにはかってに乗り込み、自分も途中まで乗っていくと言い出す。しかしタクシーは道に迷い、さらに故障。マヌは通りかかったデコトラに乗せてもらって、とりあえず飯を食いにいこうと提案するが......と珍道中に突入していく。



インドもアメリカも大きな国だが、ロードムービーとしては、インドのほうがずっと変化に富んでいる。なにしろ出てくる乗り物だけでも、ぼろタクシー、デコトラ、トラックの荷台、ラクダ車に、やくざのジープ......。なかでもラクダ車は最高! そのビジュアルと遅すぎるスピードは乗る癒し系。あの荷台に置けば、「日経ウーマン」ですらみるみるうちに「ピーター・ラビット全集」に変化していくこと間違いないのである。



当初は心に余裕のないミヒカが、遠回りをするうち心の雪解けを迎えていく。彼女の立ち位置は、先進国からやってきた旅行者にも重なる。たとえばデコトラ(ビジュアル最高)をヒッチハイクし、2人が最寄りの食堂へむかう。降りぎわにお金を渡そうとするミヒカを運転手が断わる。ああ、ありがとうという、たったそれだけのことなのだが、そこから彼女はいい流れに向かいはじめる。周りから客扱いされず、受け入れられる。それが目的地にとらわれていた彼女の心を、目の前へと向けたのだ。その先で日の出を観るシーンがいい。トラブルをあきらめたとき、旅行者はもっとも印象的な場所にたどり着く。これぞまさに旅行の神髄だ! そしてこの店で出る、ナン。それから朝食のサモサだろうか? なんとうまそうなことか!(まあ毛が入ってたりもするのだが)

この中年男マヌからはインドの日常風景がすけてみえる。客はとりあえず牧畜方式で人に何かを頼む、おい!はやくもってこい!さっさといけ!殴るぞ! そして地面につばをはき、ゴミは窓からポイ捨て。マヌはインドの欧米化されていない庶民、どちらかというと、インド版『男はつらいよ』の寅さんといったかんじじゃないだろうか。とするとこの映画で旅行している2人は欧米化とインド、この2つなのかもしれない。マヌの行動は日本の下品な中年にも通じるものがあり、なんとなく反発も感じる。しかし、彼には秘密があった!というラストで、本作は翻案にとどまらないオリジナルに達するのだ。

もちろん『デリーに行こう』はボリウッドムービーでもある。歌も踊りもあり、なかでも最後の曲が印象的だった。人生はサイズが小さい、心配事まで入らない......。インドってどんな国なんだ! 細かいことは気にせず、そしてメシがクソうまそうで、ラクダ動力の車が走る国......。ラクダ車乗りたい! ナンも食いたい! 場内に電気がつくや否や私は劇場を飛び出し、ラクダの顔真似をしながらサムラートでナンカレー状態となったのである(もぐもぐ)。



文=ターHELL穴トミヤ

『デュー・デート 出産まで5日!史上最悪のアメリカ横断』を翻案した
ボリウッド映画到着!!


『デリーに行こう!』
2月15日(土)より オーディトリウム渋谷ほか全国順次公開
途中下車不可能のロードショー!


原題=『CHALO DILLI』
監督= シャシャーント・シャー
出演=ラーラ・ダッタ、ヴィナイ・パタク

配給=Thati Media Corporation
宣伝=佐々木瑠郁

2011年|118分|インド|デジタル上映

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『デリーに行こう!』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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