WEB SNIPER Cinema Review!!
第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭上映作品
ゲイの大学生・陽(高橋直人)はサークルの同級生で親友の昇に片思いをしているが、誰にも打ち明けるつもりはない。素の自分を出せる唯一の場所は新宿二丁目の行きつけのバーだけだった。以前に比べれば、セクシュアルマイノリティも少しずつ生きやすい時代になってきた。しかし陽の不安は尽きない。葛藤を重ねる日々、陽が踏み出した一歩とは......。2014年11月29日(土)~12月19日(金)渋谷ユーロスペースにて公開
君はLGBTを知っているか。
知らない人のために、私がこの映画で知ったばかりの知識をお教えしよう。LGBTとは、『Lesbian(レズビアン)/Gay(ゲイ)/Bisexual(バイセクシャル)/Transgender(トランスジェンダー、身体の性別とは異なる性別を生きる人たちの総称)』の頭文字を繋げた略語のこと。
そして、もし世界が100人の村だとするならばそのうちのおよそ11人はLGBTに属するという統計があるんだそうだ。なるほど、いきなりそう言われてもあまりピンとはこないが、同じクラスに1人か2人は必ずそういう子がいたのかと考えるとちょっとびっくりする。
そんな意外と多い(のに意外と市民権は得られていない)LGBTが置かれた現状を、周囲へのカミングアウトという問題を軸にリアルに描いたのが本作だ。
脚本・監督は、前作『SRS♂ありきたりなふたり♀』でも性同一障害をテーマにしている犬童一利監督。パンフレットを見ると「作品のために綿密な取材を行いLGBT関係団体や活動家にも協力を仰いだ」とか「第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で先行上映されて好評を得た」とか書いてあって「こりゃ観て真面目な感想を抱かなくちゃヤバいぞ」ってプレッシャーをビシビシ感じながら観始めたのだが、始まって5分も経たないうちにそんなことはどうでもよくなってしまった。
なんだなんだ、このゲイの男の子の可愛さは! そう、本作の最大の見直は、カミングアウトに苦しむゲイの主人公・陽を演じる高橋直人くんの可愛さなのだ。それに尽きるといっても過言じゃない!!
清潔感のある細身のカラダ、憂いを帯びた目元、細い顎、物欲しそうな厚い唇......。これまで"もし私が男だったとしてもヤレるランキング"不動のナンバーワンは『あまちゃん』の種市先輩こと福士蒼汰きゅんだったのだが、それを振り切って一気に一位に躍り出てしまった。それくらいのレベルなのである。
陽は大学生。クラスメイトで同じサークルの親友・昇に恋しているけれど、そんな気持ちを押し殺し仮面をかぶって生活している。行きつけの新宿二丁目のバーの店員や夢を追いかけてアメリカに留学するという昇の影響で徐々にカミングアウトを考え始めて......というのがおおよそのストーリー。
そうこうしているうちに昇はサークルの新入生と恋仲になってしまうというノンケ男に恋するゲイにはありがちなつらい展開になるのだけれど、どう見ても新入生の女の子より陽のほうが数段可愛い。エロ切ない目でいつも親友の姿を追っているのに恋してるそぶりは微塵も見せず、控えめな友人という立場をくずさないところも大和撫子って感じでグッとくる。
いやあ、『特命戦隊ゴーバスターズ』って戦隊物にレギュラー出演していたらしいけど、まったくノーチェックでした。BLに興味ないおばちゃんがこんなふうにハートをわしづかみにされてしまうなんて......監督のキャスティング能力には大きな拍手を送りたい!
まあ、こうやって主人公ばかり褒めるのもどうかと思うが、この映画がLGBTへの偏見や差別をなくすことを目的にしているとすれば、それは十分すぎるほど成功していると思う。なぜなら彼のセクシーな思い悩み顔を見ていると、知らないうちに「こんなにかわいくてイイ子なんだから、性別なんて関係ないじゃない!」って気持ちになってくるからだ。
本編には主人公の他にもいろんなLGTBの人達が登場する。
陽が唯一リラックスできる新宿二丁目の行きつけバーのマスター(演じているのは実生活でもLGTBをカミングアウトしている漫画家・歌川たいじ)。LGTBを隠して結婚したものの時折ゲイバーに集う中年サラリーマングループ。そして、カミングアウトしようとしていた矢先に母親を事故で亡くしてしまったバーの店員・ツヨシ。
カミングアウトに対する在り方は人それぞれ、どれが正解というものはない。でもみんな一様に、ありのままの姿を大切な人に理解してもらえなかったらどうしようという不安を抱えている。
物語のクライマックス。陽は昇に思いを告白し、意を決して家族へのカミングアウトを決意する。
憂いを帯びた目で告白する姿を見て「陽きゅん、ガンバレー!」と若干ミーハー的な気持ちでキュンキュンしていた私なのだが、母親の反応を見て打ちのめされた。
「結婚はしないつもりなの? じゃあお母さん、孫の顔は見られないのね......」
くうっ......! LGBTではないものの、四十路近くまで独身でエロライターなんてよくわからない仕事をしていた私。老母に何度これと同じセリフを言われたことか!
LGTBでもそうでなくても、一番身近な人に理解してもらえないのは何より辛いこと。そんな当たり前の事実を最後の最後で突きつけられ、ミーハーな自分を深く反省したのでありました(でもやっぱり、陽きゅん可愛い......)。
文=遠藤遊佐
過ぎ行く日々の中、陽の周囲に起こる様々な出来事。
いつしか、陽の中にある思いが生まれ始めていた――。
『カミングアウト』
2014年11月29日(土)~12月19日(金)渋谷ユーロスペースにて公開
■11月29日(土)初日舞台挨拶情報のお知らせ
▼舞台挨拶時間 : 21:00~/上映開始 : 21:20~(予定)
▼登壇予定者 : 髙橋直人 / 岡村優 / 秋山浩介(TooT Aki) / 歌川たいじ / 一ノ瀬文香 / 杉崎佳穂 / 辻恵美 /木村利信/ 美漸 - Bizen / 犬童一利 監督
関連リンク
映画『カミングアウト』公式サイト
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