WEB SNIPER Cinema Review!!
彼女が白衣を脱ぐとき、禁断のお医者さんごっこが始まる......
ニューヨークにあるオール・セインツ記念病院に勤める看護師アビゲイル・ラッセル(パズ・デ・ラ・ウェルタ)は、献身的な仕事ぶりで表彰されたこともある評判の"白衣の天使"。しかし、彼女には夜な夜なバーやクラブで女好きの男たちを罠にかけては惨殺しまくる、連続快楽殺人鬼という裏の顔があった――。迸るエロスが止まらない、血と愛欲にまみれた戦慄のバイオレンススリラー!全国順次公開中!!
そんなパス・デ・ラ・ウエルタにツケ狙われるのは、『タッカーとデイル 史上最高にツイてないヤツら』や『アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会』など、ヒーマニスト必見の作品にばかり出演してきたカトリーナ・ボウデン。彼女はウエルタに潜む猟奇性に気づいたことで、逆に彼女の陰謀にはめられ、連続殺人の犯人に仕立て上げられていく。映画の後半は、マッドナース vs 新人ナース、勝ち残るのはどちらだ!ケツとオッパイはどっちも最高!という女の戦い展開になっていくのだ。
しかしボッキだけを期待して観に行くと本作、股間崩壊の危機に直面することになるかもしれない。たしかにパス・デ・ラ・ウエルタのちょっとアジア人的な目と、マッチョな頬肉、そして最高のおっぱいと、ケツをバリバリに強調した衣装(本作の衣装はレディ・ガガのツアーステージ衣装も手がけたザルディ・ゴコ)には、愚息もボッキ☆待ッタ・ナース状態になること論をまたない。さらには彼女が働いている、看護婦がみんな谷間見せまくりの病院によってチンフレーションが加速、獲物を誘い込むときのセクシー・タッチングという第三の矢にいたって、股間のボッキノミクスは完成するかにみえる。しかし、そこに落とし穴が待っている。やがてパス・デ・ラ・ウエルタのあまりに身勝手な自己愛具合にチンコの伸び率鈍化が始まり、続く吹き出す血の消費率アップにGDP(愚息の・ドクドク・っぷり)がまさかのマイナス転化。とどめのセクハラ医師への『ホステル』ばり生きたまま解体ショーで血の気が引き、股間が上昇したくても血がこないという、恐怖のチンポ・スタグフレーション状態へと突入してしまうのである。本作の真の姿、それはむしろ「ボッキ刈り取りムービー」といって差し支えないのだ。
それにしても、つくづくセックスは恐ろしい。男はセックスを餌に殺される、これはまだ分かる(悲惨だけど)。しかし何の落ち度もない後輩ナースが陥れられる、ここでもまたセックスが最大限に利用されるのだ。素直で明るいカトリーナ・ボウデンはまず、でっちあげられた一晩の浮気によって、彼氏に相談できなくなって孤立する。そこでマゴマゴしている間に、先にスキャンダルをバラされてしまい、今度はなにを言っても信用してもらえない。
たとえば、江戸時代ならバラされて困るのは信教だった。どこかの殿様が吉原に通っていても誰もとがめないが、教会に通っていたらスキャンダルになる。ひるがえって現代、殿様を県知事かなんかに置き換えれば、それは逆になる。ナチス占領下のドイツならそれは出自だった。現代にウディ・アレンをユダヤ系だからといって非難する人はいないが、でも妻の連れ子と結婚したといって非難する人はいる。思想、宗教、職業や出自で人をジャッジすることは、時代とともに排除されていった。そして現代には、最後の理不尽「セックス」が君臨しているのだ。セックスが絡めばそこに秘密が生まれる。突き入れられる隙が生まれ、理詰めや常識が踏みにじられ、そして映画がおもしろくなる。
パス・デ・ラ・ウエルタの危なさに気づくもう一人の人間、キャスリーン・ターナー(『シリアル・ママ』)演じる、病院に赴任してくる激ウザ人事部長もいい味を出していた。周りの人間にスマイル・シールを貼りつけまくり、一人で勝手にハイテンション。しかしその笑顔には真実みが全く感じられない。『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』や『ゴーン・ガール』を思い出させる彼女の性格は、いかにも実在しそうで、はっきりいってこれはこれでサイコパス。ただしこちらは出世するタイプという感じだ。こいつが「あなた、どこかで見たことあるわね?」とパス・デ・ラ・ウエルタの秘密に気づきだす。すわ、サイコvsサイコの闘いが始まるのか?!?と期待したのだが、この闘いはそこまで盛り上がらなくて残念だった。
本作もっとも印象に残ったのは、シャワーをあびてるときに後輩の看護婦がパンティをはいたままだったことだ。最初はレーティング対策なのかと思ったが、パス・デ・ラ・ウエルタは、自宅にいるシーンで常に下半身を丸出しにしてうろついている。じゃあ、なんでわざわざシャワーシーンで下半身を隠すのか? カトリーナ・ボウデンが生尻出さない契約とか? いや違う、これはダグラス・アーニオコスキー監督の「芸術」がそうさせたのである。撮影現場で「シャワー with パンティだ!」と叫ぶ監督の姿が目に浮かぶようだ。ボリス・モイソフスキ(カメラマン)もファインダーをのぞいた途端「生尻よりもむしろエロい!」と驚愕したにちがいない。本作は室内では全裸、シャワーでは下着。これぞ倒錯! 日本でもぜひ流行ってほしいので、みんなも今日から真似しよう! 洗濯も一緒にすんで便利だったよ。
文=ターHELL穴トミヤ
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『マッド・ナース』
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映画『マッド・ナース』公式サイト
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