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メリル・ストリープ&メイミー・ガマー"実の母娘"が共演
家族を捨てて売れないロックバンドを率い、ロサンゼルスの小さなライブハウスで歌い演奏する日々を送っている母・リッキー54歳(メリル・ストリープ)。ある日、別れた夫から「娘のジュリーが夫に捨てられた」との連絡を受けた彼女は、20年ぶりにインディアナポリスの家族に会いに行く――。すれ違う母娘の姿をアカデミー賞受賞女優メリル・ ストリープと実の娘メイミー・ガマーが演じる感動作。

Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
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本作、どんな人が主な観客層になるのだろうか?やはりメリル・ストリープと同世代の、マダム達が?日本にロックンロール・マダムはいるのか......。それとも娘役のメイミー・ガマーと同世代の女性たちが?三十路、実家住まいは涙必須......。いや本作の監督はコーマン・スクール出身のジョナサン・デミ。『レイチェルの結婚』や、『羊たちの沈黙』が有名だが、彼は50'sロックとアメリカンニューシネマのやけっぱちが合体した『クレイジー・ママ』の監督でもあるのだ!あの興奮よもう一度!と、ボンクラどもが殺到するのかもしれない!?これは、夫に捨てられ実家で廃人化している三十路女と、ロックンロール母ちゃんの物語......。



主人公の、革ジャン・ロックロールおばさんを演じるのは、メリル・ストリープ。彼女はL.A.に住み、高級食材のスーパーでレジのバイトをしながら、売れないバンドをやっている。そんな彼女にある日、元夫から数年ぶりの電話がかかってきた。娘が夫に捨てられ、実家に戻っているというのだ。「心配だから見てやってほしい」という頼みに、彼女ははるかインディアナポリスまで戻ることを決意する。
とくれば、これはもう破天荒だけれどハートは熱いロック母ちゃんと、真面目だけれど心が冷たく冷え切ってしまった娘が、当初は反発し合うけどやがてわかりあい家族の再生へと向かい、最後はロックでガーン!泣きのギターがギュィーン! ステージライトはバーンで、感動のフィナーレ紙吹雪~!なんだろうなと予想せざるをえないのだが、だいたいその通り!予想通りでした!でも、わかっていても、気持ちいい。それが観たかった!という「そこツボ映画」となっているのである。



そんな本作のヒネリはといえば、娘役のメイミー・ガマーがメリル・ストリープの実の娘だというところ。知らなかった。彼女がこれまた、鬱~っとした顔をいつもしていて、上下スエットで、実家の引きこもり感を出していていい。「私たちを捨てたくせに、よくぞのこのこ戻ってきたわね!」みたいな感じで、三十路すぎの反抗期を見せてくれる。
メリルにはさらに息子が二人いて、一人はアジア系パートナーを持つゲイ。メリルの元夫である父親(ケビン・クライン)は、黒人の妻(オードラ・マクドナルド)と再婚している。本作もうひとつのヒネリが、この中西部インディアナ州に残された普通の格好をした家族のほうが比較的リベラルで、革ジャンでロックンローラーのメリル・ストリープのほうがブッシュ支持の保守層だというところ。劇中には、メリルがアジア系の人間に「ブルース・リーに似てるわね!」と声をかけ、ゲイの人間には「ベジタリアン・フードを楽しんで!」と声をかけるシーンが出てくる。これは彼女がステレオタイプなイメージしか持っていない、実質はアジア系についても、ゲイについてもあまり知らないということを表わしている。しかしもちろんメリルは嫌な奴じゃない、このキャラクターいわば寅さんに近いんじゃないだろうか。
そんな彼女に、出て行ったメリルに代わって子供たちを育てあげたオードラ・マクドナルドが立ちはだかってくる。黒人である彼女は、50年代の伝統的なアメリカン良妻賢母ファッションをしていて、対するメリルは(多分ジャマイカ人の真似をした)ドレッドヘアに、星条旗の刺青、ここにも本作の転倒がある。
いつも「私は私」と強気なメリルが、子供たちとのディナーを前にしてL.A.のバンドメンバーに電話をかけるシーンがいい。そこで不安を吐露する彼女を見ていると、母親もまた頑張って演じる「役割」なのだということが伝わって来る。バンドは売れず、家庭にも戻れず、はたして彼女に居場所はあるのか? メリルのぼやきを通じて、セックス、ドラッグ、ロックンロールにひそむ男女格差問題が語られる。



映画の中盤には、堅物な元夫が会社の同僚からもらったマリファナを冷蔵庫に入れている、という演出がある。やがて親子3人でそれをやることになり、カットが変わると、夫はモフモフの犬を撫でていて、娘は気だるそうに寝転がり、メリル・ストリープが歌い出す。暖炉の前で家族が絆を取り戻す。その伝統的な場面に氷の入ったウィスキーではなく、マリファナが使われるのは、この映画のオーソドックスな作りを考えると印象的だった。若さや反抗の象徴だったロック、そしてマリファナも、今や人々と一緒に老いてもはや家族団欒の場面で使われている。年を経て様変わりしたカウンターカルチャーにしみじみしつつ、最後はやっぱり、『ダーティ・ダンシング』(エミール・アルドリーノ監督)や、『フットルース』(ハーバート・ロス監督)ばりの、みんなでワイワイ踊っちゃおう!シーン。アメリカ映画のこの様式美は、永遠に変わらなくていい!と最後まで「そこツボ」な本作だった。

文=ターHELL穴トミヤ

"大嫌いな母"が帰ってきた。
革のジャケットに、派手なメイクで、ジャラジャラとアクセサリーを身につけて――


『幸せをつかむ歌』
Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

原題=『RICKI AND THE FLASH』
監督=ジョナサン・デミ
脚本・製作=ディアブロ・コディ
出演= メリル・ストリープ、ケビン・クライン、メイミー・ガマー、リック・スプリングフィールド セバスチャン・スタン 他

配給=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2015│アメリカ│101分

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映画『幸せをつかむ歌』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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