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(C)2016「ふきげんな過去」製作委員会

WEB SNIPER Cinema Review!!
劇団「五反田団」の主催・前田司郎最新作
北品川の食堂『蓬月庵』で暮らす果子(二階堂ふみ)は、毎日が死ぬほど退屈でつまらない。そんな果子の前に18年前に死んだはずの伯母・未来子(小泉今日子)が突然戻ってきた。戸籍も消失している。なのに未来子は果子に自分が本当の母親だと言って――。

6月25日(土)テアトル新宿他全国ロードショー
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(C)2016「ふきげんな過去」製作委員会

『生きてるものはいないのか』(石井岳龍監督)の原作者であり、『横道世之介』の脚本家であり、劇団五反田団主催であり、小説家で俳優で、と色々な肩書きのある前田司郎監督の、本作は2作目。悪くない! とにかく品川あたりっていい街だということがわかった。
二階堂ふみの行きつけの喫茶店は大森の珈琲ルアンで、とっても居心地がいい。この映画、とにかく景色で不快にならないのが良くて、日本映画って歩道橋とかマンションとかレースのカーテンとか蛍光灯に照らされた白い壁とかでぐったりくることが多い。でも二階堂ふみの住んでる家は、風が吹き抜けていきそうな、どっしりした古い食堂(品川の隣、大田区の古い蕎麦屋だとか)でとてもイイ。なんか家族がいつも豆むしってて、あ、土足なとこがイイのかな。いやいや、その二階は二階堂ふみの部屋で、もちろん靴を脱いで上がるんだけど、そこもイイ。角部屋で、窓が大きく取ってあってちょっと旅館っぽい。父親の板尾創路がセロテープを買いに行く店(店主はシティーボーイズ)があるんだけど、その店も雑然としながら、道に向かって開いていて居心地がイイ。近所の親戚のスナックをやってるシングルマザーの娘と商店街を歩く、そこをずーっとカメラがついていくシーン、この商店街も気持ちいい。ああーこの街に住んでみたいなって、思うのだ。それから季節は夏なんだけど、音がイイ。扇風機の音、蝉の声。ある朝起きて一階の食堂に下りてくと、洗濯機の音が聞こえてくる。

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二階堂ふみは高校生で「未来は全部わかっちゃってるー」とかいって、醒めていて不機嫌で、いるよね、思春期だねって感じなんだけど、そんな彼女のところにある日いきなり、ワケあり風の女がやってくる(小泉今日子)。っていうか、それは死んだはずの母親の姉、叔母さんだった。というところで、彼女が果たして死人なのか、それともほんとに帰ってきたのか観客は宙ぶらりんになったまま、家族は大喜び。映画が進むうち、どうも小泉今日子には犯罪歴があって、今でも誰かに追われているらしいことが分かってくる。あげく、二階堂ふみの部屋に居候し始めて......、と一夏の出会いのファンタジーが始まる。
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そもそも夏っていい。お盆もあるし、終戦も夏だったし、セミはものすごい大音量で鳴いてすぐ死ぬし、夏休みは長くて同級生の女の子はなんかいつのまにか女になってしまったりするし。夏には、生の興奮と何かが失われる苦しさが同居している。「夏にもう二度と出会えないはずの人と会える映画」といえば『異人たちとの夏』(大林宣彦監督)で、あれはほんとイイ映画だったな~。会った瞬間から、映画の中にずっとは一緒にいられないんだろうな、っていう思いが充満してる。この小泉今日子も「どうせすぐいなくなるんだろ」とか言われてて、けどどうなるのか、いかにもな展開をわざと外してくるあたりはさすが前田司郎というか、劇団ぽいなと思う。それは現実は映画とは違うんだー!というリアリズムなんだけど、そのわりに最後、二階堂ふみがいつも探していたワニがまた出てきて、それが象徴するものは何々だったんだ~、みたいな展開は映画的あるあるというか、ちょっとベタで青臭いんじゃなかろうか。

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二階堂ふみの家に居ついている小学生の女の子(山田望叶)は、ヒモとか虫眼鏡とかなんか口に入れてるキャラで、男でも女でもない、まぎれもない子供感をバリバリに発揮している。高良健吾はなぞのイケメンとして、ストーリーのすごい外側からやってくるんだけど、1人だけ映画のジャンルが違う、星新一のSFみたいな目をしていて面白い。一番良かったのは、一家を束ねるおばあちゃん役の梅沢昌代で、「杉村春子が出てくるだけで、なんとなく満足」の法則を継承する、いるだけ満足感を漂わしていた。これも古くてどっしりした家とか、商店街と一緒の、なんか落ち着くなっていう気持ちよさなのだ。小泉今日子が最初に現われる、梅沢昌代がそれを目にした時の喜び方だけで、日本の古き良きおばさんが伝わって来る。プロの技だ。
この映画の女たちはタバコも吸いまくりで、それは素敵なんだけど、老衰のすいの漢字書けないとか、算数はできないけどお釣りの計算はできるとか、学はないけど知恵はあるみたいのを、セリフやそっけなさで強調する。それがハナにつくし、作品全体にわたってセリフがめちゃくちゃ多くて、セリフがあまりに幅を利かせていて、セリフにぐったりしてくるとこもある。文語調で不満を述べる二階堂ふみに辟易してくるところもある!んだけど、梅沢昌代が娘の小泉今日子と夜、庭で会話をする。そのとき一番言いにくいことを言う、そのタイミングがイイんだな~。梅沢昌代は存在感で負けず、セリフを生身に引きつけていた。

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と散々好き勝手言ってきたけどこの映画にはすごくいいセリフもある。未来が全部見えちゃって不機嫌な二階堂ふみに小泉今日子が言う一言、「あなたが見てる未来ってのはね......」いや~これにはまいった! 二階堂ふみの不機嫌さっていうのはあるあるへの退屈だ。映画のあるある、人生のあるある。いろんなストーリーを蓄積すると、あるあるで窒息して全部わかった気になってくる! でもそれは混乱してるだけなんだって、小泉今日子がズバッと言ってくれた。私、ターHELLふみトミヤは、このセリフに出会えて嬉しかったです!

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文=ターHELL穴トミヤ

小泉今日子×二階堂ふみ×前田司郎。
可笑しくも切ない、愛と孤独と清張の「ひと夏」の物語。


『ふきげんな過去』
6月25日(土)テアトル新宿他全国ロードショー

(C)2016「ふきげんな過去」製作委員会
監督・脚本=前田司郎
出演= 小泉今日子、二階堂ふみ、高良健吾、山田望叶、兵藤公美
制作・配給=東京テアトル(創立70周年記念作品)

2016年│日本│120分│5.1ch│ビスタ│カラー│デジタル

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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