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(C)2016「花芯」製作委員会

WEB SNIPER Cinema Review!!
主人公・園子の生き様を通し描かれる、愛と性と生。
親の決めた許嫁(林遣都)と結婚した園子(村川絵梨)はある日突然、恋を知った。次第に肉体の悦びに目覚め、世間の常識に背を向けながらも、園子は子宮の命ずるまま生きることを選び、つき進んでいく――。瀬戸内寂聴が瀬戸内晴美時代に発表した同名小説を映画化。

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(C)2016「花芯」製作委員会

主人公(村川絵梨)は許嫁と見合い結婚をするんだけど、夫を全く愛していない。夫は夫で「僕はソノちゃんのために今日まで純潔を通してきたよ、童貞だよ」とかいって馬鹿なのだが、そのときの妻の「はぁ?」みたいな顔がなかなかいい。そして「ヤりたくない」とかいって、「わ、わかったよ」みたいなかんじで初夜はヤらずに終わるのだが、次の日「僕らって、ちょっと近頃ないくらい立派な夫婦だよね」とかいって夫がこれまたマンざらでもないのがアホっぽくていい。
林遣都演じる夫は、まじめで、ほとんど馬鹿なんだけど、けど悪い奴でもない。いやむしろすごく優しくて、妻にいきなり「隣の男に恋した」とか言われても「ええー!」とかなるけど「いっ、一時の気の迷いだよ」とかいって、「まあ落ち着くまで待つよ」とかいって、コトが相当進んだあとでもう別居状態になって実家に帰ります状態になっても、「僕は古い男ですし、彼女は自由な精神の女だから、僕が籠に押し込めるような真似を、知らずしてしまっていたのかもしれません......」的な気づかいを見せて、やっぱいい奴にちがいない。そりゃ浮気告白されて「うおー!」みたいになって、ふすま殴って穴あけたりもしてるけど、それくらいは勘弁してあげたいし、「隣の男が好き、今夜はエッチしたくない」的なことを言われたときは、むりやり「お前は俺の妻だ!」とコトに及んだりもするも、そこで心底イヤーな表情をされ、顔をそむけられながらセックスしてる夫ちゃんの惨めさ。昔からの許嫁と、まるで仕事のように結婚をさせられた、その人生のつまらなさや、封建制度への恨みを、けれどもすべてこの夫ちゃん一人がぶつけられているのもかわいそうな話で、じゃあこの主人公は新時代の自由戀愛にめざめて、真実の愛を求める!のかと思いきや、そうでもないという。子供に愛情をみせず、大学生や愛人などいろいろな男を渡り歩き、その場ではセックスを楽しむが、執着もしない。妻でも、恋人でも、それどころか女でもないかもしれない、もっと根源的に何かが欠落した不条理な性質すら感じさせる村川絵梨が原作とも違って新しい。
そんな主人公一家の隣には、毬谷友子扮する年齢不詳のマダムが住んでおり、そちらはそちらでドロドロした愛欲世界が、苦み走ったいい男(安藤政信)との間で繰り広げられていく。

(C)2016「花芯」製作委員会

原作は瀬戸内寂聴(出家する前の、瀬戸内晴美名義)。1957年に発表されるやセンセーショナルを巻き起こして、「子宮作家」との誹謗中傷が世間に渦巻いた。今読むと小説版の主人公は内面が語られているせいか、自分への戸惑いが感じられ、性愛に準ずる力強さとともに、人間味も感じられる。
一方の夫は、小説と同じく本作でもいじめられ、眉毛が太くとっちゃん坊や然とした林遣都が、まさにぴったりのビジュアルでひどい目にあいまくる。彼がなぜムカつくかというと、ちゃっかり徴兵免除されたりして、父権的なものに護られながら優等生然として生きているからなのだが、そんな彼が女モンスターと出会ってしまったところに本作のコメディー的なおもしろさがあるのだ。セックスレスと正しき結婚像のはざまで悩む彼に、村川絵梨が「あんた妹とヤったの?気持ちよかった?」と唐突に聞くシーン、「えっ!?」とたじろぐ林遣都にはおもわず笑ってしまった。村川絵梨はこのときニヤニヤしていて、その反応を「観察」している。そこには自分だけが人間生活の当事者じゃないというような、カミュ的な生命の稀薄さがある。最後どこかへ旅立っていく主人公は、小説では「娼婦」となっていくような匂わせ方になっているが、本作ではまた別の、たとえばゴジラを覚醒させたり、全人類が滅亡する病原菌をばらまいたり、そういう人類を滅亡させるために一役買う人間になりそうな得体の知れなさを感じさせていた。

(C)2016「花芯」製作委員会

そんな村川絵梨のセックス七変化がよくて、義務的に夫とヤるときは完全マグロ状態。さらに拒んでいるのに無理やり求められた時は、いやーな顔。けど近所の大学生と一発ヤった後では、つまらない夫とのセックスさえ楽しみはじめてイイ表情になる。しかし、その後に「愛がなくたって、気持ちよくなれるのよ。私試したんだから」という一言で夫をどん底に叩き落しつつ、「本当に好きな人としたら、どうなっちゃうんだろう......」とひとりごちる。ここでもうその後に起きるであろう「本当に好きな人とする村川絵梨のセックス演技」への期待値ががーん!とあがるワケです!そして改めて思う、モンペファックの色気なさと、和服ファックの素晴らしさ。本当に好きな人とする和服でのファック最高だよね!!!!!
それにしても本作のセックスシーン、前戯ぜんぜんない気がしたけど、どうなんだろうか。いいの?ありなんですか?昭和ではそれが普通だった?いきなり入れて、でもなんかまんざらじゃない感じにいつもなってるけど、それもひとつのスタイルですか?前戯は絶対必要!そんな思い込みにとらわれていては、ワイルドな花芯は満足させられない?!小説版にもその辺の記述はなく、このうえは当事者の意見を聞くしかないので是非みなさんからのメール、件名「花芯」で待っています。

(C)2016「花芯」製作委員会

文=ターHELL穴トミヤ

発表当時「子宮作家」と批判を浴びた
瀬戸内寂聴原作の鮮烈な恋愛映画 初の映画化


『花芯』
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(C)2016「花芯」製作委員会
原作 =瀬戸内寂聴『花芯』(講談社文庫刊)
監督=安藤尋
脚本=黒沢久子
出演=村川絵梨、林遣都、安藤政信、毬谷友子、他
配給=クロックワークス
製作=東映ビデオ、クロックワークス​

2016年│日本│カラー│95分│ビスタサイズ│DCP5.1ch

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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