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WEB SNIPER Cinema Review!!
ニューヨークドキュメンタリー映画祭2014メトロポリス・コンペディション審査員賞受賞
キッツビュールフィルムフェスティバル2014ベストドキュメンタリー受賞
デザイナーズスーツを着こなす52歳のファッション・フォトグラファー、マーク・レイ。誰もが羨む「勝ち組」に見える彼の寝床は、雑居ビル街にあるアパートメントの屋上だった。家族も恋人も、家も持たない彼のリアルな日々を3年間密着したドキュメント。

全国順次公開中
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同じくスタバの無料Wi-Fiを使いまくっている人間として、他人事ではないのである!本作のマーク・レイはノマドであり、ノマドしすぎちゃった男であり、スタバが閉店するとさらなる深夜営業の店へとMacbookを抱えて移動して行く。身に!覚えが!ありすぎる!のである。
しかし外見は私と大違い。188cmの身長に開襟シャツ、首にはマフラーを瀟洒に巻きつけ、革靴でマンハッタンを闊歩する52歳。一眼レフを構えて、ストリートスナップを撮りまくるその姿は、まさにイケてるニューヨーカーそのもの!しかし、彼はホームレスだった、というのがこのドキュメンタリー。「ここが俺の家だ」と言って案内する場所は、ビルの屋上。掘っ立て小屋があるわけでもなく、その端のほうにある変電装置のような場所の横の窪みで、彼はビニールシートにくるまり毎晩ねむっている。

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マーク・レイの朝は早い。6時くらいには起きてねぐらを抜け出し、ヒゲは道端で剃ったり、公園で剃ったり。行きつけの公衆トイレがあり、そこで身体を洗い、髪も洗う。そのとき、小さなミラーをわざわざ壁にちゃんとテープで貼り付けているのが印象的だった。毎朝、身体を洗うたびにその壁にテープで貼り付け、また剥がしているのだろうか? 寝る前に重ね着をする仕草とか(これは風邪をひかないため)、この主人公けっこう日常の動作が丁寧だ。
都市に散らばる機能を次々にサーフィンして暮らして行くのは、自由で、匿名感があって、すごく楽しい。バックパックで長く旅行していた時はまさに同じ行動様式になったし、しかし野宿はマジで辛い。身体は襲われるかもしれないし、荷物は盗まれるかもしれない。人に見つかる恐怖から朝も早くなり、都会にこっそり暮らすタヌキみたいな気分になってくる。しかしマーク・レイはそんな生活をもう何年も続けながら、スーツでキメた時、その装いに破綻がないのがすごい! どうしたって、端から擦り切れてきたり、よれたりしてきそうなものなのに。彼はそのために月125ドル払って契約しているジムのロッカーを使っている。財産を風雨と盗難から守ってくれるロッカーの輝き(ビバ文明)!そして人目を気にしながらの億劫さに負けないこまめな洗濯、アイロンがけ、ここでもまた彼の丁寧さが活きている。

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カフェでパソコン作業をしながら大声で歌ってるシーンのマーク・レイは、完全にヤバい人だった。2015年に公開されたNYのホームレス映画『神様なんかくそくらえ』(ジョシュア&ベニー・サフディ監督)では、出てくる人間たちがみな、社会とのつながりを失っている。家がないと大抵は社会との繋がりも失う、すると独り言が増え、やがて精神もその穴へと飲み込まれていく。ブツブツ呟きながら歩く人の誕生だ。
本作の主人公には仕事があり、友達がいて、社会との繋がりがある。でも、もしジムを規約違反で追い出されたら?スタバでWi-Fiが使えなくなったら?ほんのひと押しで、全てが崩れ去ってしまうかもしれない、彼はそのエッジにいる。余談ながら最近スタバのWi-Fiポリシーが変更されたため、WEBスナイパーの記事をスタバから見れなくなってしまった(まあ私以外にスタバでWEBスナイパーの記事を読もうとする人はいないと思いますが)。例えば、そんなところから、こう全てが崩れていってしまうかもしれない!?!?!じゃないですか?!!なんか、裏庭の池を埋め立てたら渡り鳥が死滅するみたいな!?!!そういうところあるじゃないですか!?!?!いやスタバのWi-Fiから自分の書いた記事が確認できなくなっても別にショックじゃないですよ!!?!?ただ、そういうちょっとしたことで崩れてしまいそうなエッジ感!?!?!わかるなーって!?!?!

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おなじく NYのホームレス映画『真夜中のカーボーイ』(ジョン・シュレシンジャー監督)では、廃ビルに寝泊まりするダスティン・ホフマンが体調を崩すことで映画が終わっていく。本作にはマーク・レイが「俳優組合に所属しているから安くすむ」と話しながら、保険代を払いにいくシーンが映っている。この健康保険も輝いている!健康保険があれば『真夜中のカーボーイ』も違った結末になったはず!!健康保険はエッジな人にとってマジで大事!!!オバマ・ケアは絶対残したほうがいい(もう遅いけど)!!!!健康保険ばんざい!!!!というふうに、この映画を観てると「きちんとアイロンがけする」とか、「寝るときは重ね着をして、風邪をひかないようにする」とか、「保険料を払う」とか、母親の小言みたいなことが、死なないためにこの上もなく重要な技術として浮かび上がってくる。きちんとする。日々の細かい丁寧さこそが、マーク・レイを現世につなぎとめている、最大の錨なのは間違いない。

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それにしても月300ドルの家賃でチェルシーホテルに住んでいたレイ、ある日立ち退きを迫られて、それからずっと屋上暮らしだなんて、どうしてそんなことが起きるんだろう。タイミング?やる気がなかった?なんとなく? もちろん直接の原因は経済的な問題(マンハッタンの家賃は猛烈に高い)だけど、やがて彼の内面へと立ち入っていく後半は恐ろしい。いつも冗談ばかりの彼は、楽しい性格ではあるけれど、なにか人生の根幹を投げているのではないか。「冒険もしたけれど、何も成し遂げなかった」というセリフがやばい。目の前のことは淡々とこなすが、なにか根源的に自分を奮い立たせていない、根本的な部分でやる気が出ていない感じ、なんか分かる気がするんですが?!「僕はこの歳まで生きてきて誰にも愛していると言ったことがない」というセリフ。その裏に潜むのはナルシシズムか、他人への恐怖か。その結果として結局ひとりでしかないならば、生活にこだわりはなくなっていく。その先に、家へのこだわりもなくなる、そんな未来が待っているかもしれないとしたら!
丁寧さこそは、死なないための最後の砦だと、本作のマーク・レイは証明している。とことん雑に暮らしてきた私だったが、本作を観て完全に心を入れ替えた。もうノマドじみたこともやめる!金輪際、社会に散らばった機能を拾い食いして歩くような真似はしない!!魂の暗部が狙撃できないスタバの無料Wi-Fiをにも頼らない!!自分で焙煎した豆を挽いてコーヒーを入れ、筆を使って書いたレビューを、郵便で送る!!!そう決めました(来週からはスキャンされた毛筆レビューが掲載されます)。

文=ターHELL穴トミヤ

マーク・レイ、52歳。職業:ファッション・フォトグラファー
世界一スタイリッシュなホームレス。


『ホームレス ニューヨークと寝た男』
全国順次公開中

(C)2014 Schatzi Productions/Filmhaus Films. All rights reserved
原題=『Homme Less』
監督=トーマス・ヴィルテンゾーン
出演=マーク・レイ
配給=ミモザフィルムズ
宣伝=プレイタイム、サニー映画宣伝事務所

2014年│オーストリア、アメリカ│英語│ドキュメンタリー│83分

関連リンク

映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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