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(C)IMPOSIBLE FILMS, S.L. /TRUMANFILM A.I.E./BD CINE S.R.L. 2015

WEB SNIPER Cinema Review!!
スペイン・アカデミー賞<ゴヤ賞>で最多5部門を受賞
人生の残りが急速にカウントダウンし始めたとき、しばらく会っていなかった友人が目の前に現われた――。癌の治療をやめて身辺整理をしていた俳優フリアン(リカルド・ダリン)が、彼を心配してやってきた友人トマス(ハビエル・カマラ)と過ごした特別な4日間。余命わずかなフリアンにとってしあわせな選択とは何か。

ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中
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肺がんを前にして治療を受けないことを選択した男フリアン(リカルド・ダリン)と、彼に会いに行く親友トマス(ハビエル・カマラ)が過ごす、4日間を描いたスペイン映画。トマスは始めこそ治療を受けろと説得するんだけど、フリアンは頑として受け付けない。だんだんもうこいつに何言ってもダメだなモードになって、あとはずっと見まもってるだけ。それでいいのかよ!と思いつつも、横に人が居てくれるありがたさっていうのがあるんだよな。これは相棒というほど運命共同体でもないけど、もちろん他人でもない、「友達」についての映画なのだ。

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リカルド・ダリン演じるフリアンの職業は舞台俳優で、ハビエル・カマラ演じる寡黙なトマスに比べかなりイケイケな性格をしている。交友関係も広く、息子がいて、離婚していて、おまけに愛犬がいて、けれど金はない。とくれば、死んでいく人間がハチャメチャをかましまくって、真面目な介護役が振り回され、でも最後は急にしっぽりしちゃって、なにか教訓を一つ残して死んでいく(場内からはすすり泣きが)~完~、って黄金パターンがくるのかなと思うんだけど、本作はそこから逃れているのが、えらい。車で暴走しながら大声を出したりしないし、介護役の真面目な人間が死にゆく自由人の導きによって自分の殻を破って以前よりひらけた人間になったりもしない!
じゃあどうやって日々を過ごすのかというと、結構淡々としてるんだよな。まるで確定申告か、引越しの準備でもするように、to do listをこなしていく2人。劇的なことが何も起こらない普通の日々の中から、でも一人の人間が消えていってしまうんだという、そんな地味な辛さがシブいのだ。

フリアンが飼っているのは茶色い大型犬で、その里親探しも彼の心残りになっている。募集に応じた人間が人種差別主義者だったりすると、やっぱこいつはダメだ......ってなるし、そんななかやっと見つけた素敵な一家に「じゃあ、今日一日試しに預けてくれないかしら」と言われる。そこで今までイケイケだったフリアンが急に尻込みし始める、セスク・ゲイ監督のうまい演出だ。犬との別れがはじめて死を具体的に感じさせ、その寂しさ、不安感はこちらにまで流れ込んでくる。彼はトマスに「今日は俺の家に泊まってくれ」と言うんだけど、一人では過ごせない夜っていうのが人生にはある! だからこそ友達は大事で、俺にもそんな日があったし、やっぱり友達に「今夜泊めてほしい......」と電話したら、「引っ越したばかりで家が散らかってるから(あと、妻が嫌がるので......)」と言われたのはショックで今でも覚えてますね。犬は結婚して妻のご機嫌をとったりし始めないし、やっぱり持つべきものは友より犬(か猫)!とその時は思ったけど、ペットより先に自分が死んじゃうことも考えないといけないんだなあ。あいつはいよいよ俺が死ぬとなったら、4日間一緒に過ごしてくれるだろうか。2日目くらいに妻からメールが来て帰って行くにちがいない......。でも、この映画のフリアンも「友達は多いけど、みんなそれぞれの人生がある」と言っている。本作のテーマは「友達」だと思っていたけど、実は「死に向かう独身」というほうが大きいのかもしれない。だってトマスは4日経ったら帰っちゃうんだし、妻とは離婚しているし、独身の死と配偶者のいる人間の死は違うのだ!!!!!

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とはいえ彼には息子もいて、ある日、留学先のアムステルダムに2人で会いに行くことになる。一緒に向かったカフェで息子は「ブエノスアイレスに住もうと思うんだ」と唐突に言い出す。そこには暗に「それがパパのルーツ(出身地)であるから」という意味が込められていて、それをだれも口に出さず、でも全員が理解している、そんな抑揚の効いた空気感がいい。フリアンは息子に癌の再発を伝えていなくて、彼がそれを言い出せるのか否か、観客はトマスと一緒に彼を見守ることになる。
そんな時でも、フリアンは金がないからトマスにたかりまくる。息子を前にして「これでうまいものでも食べなさい」と父親ぶりながら、「ユーロあるか」とせびるフリアン。息子には「こいつには大金を貸してるんだ」と説明して、これほどふざけんな!と思いつつ、言われた通りに金を出すしかない瞬間もなかなかないだろう、笑ってしまった。

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本作を観ていると、当たり前だけどスペイン人だってみんなアッパーなわけではないとわかる。空気も読むし、言わずにすますこともたくさんある。けどいきなり、ええ~、そこセックスしますか!?みたいな展開は、さすが情熱の国だった。淡々と死んで行くつもりかもしれないが、映画もそれに付き合いつつ、でもいきなりファックするぞ!死を前にして混乱、悲しみのファックするぞ!!みたいな。これをタナトスの闘牛ファックと名付けたい。でもそれすら寂しさに覆われて行くような、瑣末なことになって行くような、死というものは日常の延長にありながら、すべてを飲み込んでしまう巨大なものなのだ。それに抗えるのはやっぱり、日常だけなのか。一人で過ごせない夜に一緒にいてくれる友達がいない独身が死ぬ時にはどうしたらいいのか。もう兵馬俑自分でつくるしかないのか!?それともオリエント工業か!?うおー!と言いつつ、なんかもうやけくそでタナトスオナニーをはじめるターHELL穴トミヤであった~完~。

文=ターHELL穴トミヤ

限られた時間を"しあわせ"に導いた、友人と愛犬との愛おしい4日間。


『しあわせな人生の選択』
ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中

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原題=『Truman』
監督=セスク・ガイ
脚本=セスク・ゲイ、トマース・アラガイ
出演=リカルド・ダリン、ハビエル・カマラ、ドロシス・フォンシ
配給=ファインフィルムズ

2015│スペイン・アルゼンチン│カラー│スペイン語・英語│108分

関連リンク

映画『しあわせな人生の選択』公式サイト

ヒューマントラストシネマ有楽町

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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