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開催25周年を迎えるフランス映画祭、直前レビュー!!
6月22日から始まる「フランス映画祭 2017 Festival du film français au Japon 2017」。上映される映画全12プログラムの中から、ご存知ターHELL穴トミヤさんが4本の作品を先取りレビュー!!

2017年6月22日(木)~6月25日(日) ※全4日間 有楽町朝日ホール/TOHOシネマズ 日劇ほか
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今年もフランス映画祭が開催される。会期は6月22日(木)から6月25日(日)まで、会場は有楽町朝日ホールおよびTOHOシネマズ日劇。上映される作品の中から、いくつかの作品を先取りレビューしたい。

■6月22日 TOHOシネマズ日劇にて上映
マルタン・プロヴォ監督『The Midwife(英題)』
2017年12月シネスイッチ銀座ほか公開


(C)photo Michael Crotto

本作、すでに前売りが売り切れちゃってる!!!!だから、今からレビューを読んでもらって「観たい!」と思っても12月の全国公開までは観られないんだよな~。半年も待たないといけないのに、観たいんですケド!?となるのは苦痛だし、もうレビューしないほうがいいでしょう!!だからこそ最低限のことだけを伝えると、カトリーヌ・ドヌーヴがジップロックを財布にしてるのが最高。彼女は遊び人で、対する主人公のカトリーヌ・フロは地味な助産婦。冒頭から出産シーンが続き、粘液にまみれた赤ちゃんがバンバン登場。(このまま出産シーンだけが120分続いたらどうしよう......)と思っていると、西成のおばちゃんみたいにギンギンにヒョウ柄のドヌーヴが出て来て、ついでに40代の主人公の恋も始まってしまうのであった!ドヌーヴより一回り歳上のジャンヌ・モローも『クロワッサンで朝食を』(イルマル・ラーグ監督)で、ひねくれ婆さんによる歳下女性との邂逅の物語を演じていたけど、個人主義フランスの老後おひとり様問題の解決策は、やっぱり猫になれとこういうことだと思うんです。

『The Midwife(英題)』
原題=Sage Femme
監督=マルタン・プロヴォ(Martin Provost)
出演=カトリーヌ・ドヌーヴ、カトリーヌ・フロ、オリヴィエ・グルメ
日本配給=キノフィルムズ
2017年|フランス


■6月23日 有楽町朝日ホールにて上映
ポール・ヴァーホーヴェン監督『エル ELLE』
2017年8月、TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開


(C) 2015 SBS PRODUCTIONS - SBS FILMS- TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION - FRANCE 2 CINÉMA - ENTRE CHIEN ET LOUP

主演はイザベル・ユペール。監督はポール・ヴァーホーヴェン。この組み合わせだけで観たくなるのに、テーマは強姦。依頼したアメリカ人の女優全員に出演を断わられ、結果として監督初のフランス撮影となったという、この前情報だけで怪作感が半端ない本作、これも売り切れちゃってるじゃないの!!!(わずかながら当日券の販売もあり)。奇しくも現在、同じく女性への強姦を題材としたイラン映画『セールスマン』(アスガル・ファルハーディー監督)が全国公開されているから、そちらを観るのもいいかもしれない。フランスを舞台とした本作と見比べてみると、同じ題材を扱いながらこうまで違うのかという部分と、社会はここまで同じなのかという部分に、ひるがえって日本の状況も考えてしまわずにいられない。それにしてもヴァー・ホーヴェン、これだけシリアスなトーンで始めながら、やがて何の映画かわからなくなり、しかも何度も笑ってしまう。さすがラジー賞とアカデミー賞を行き来する監督なだけある。ヴァー・ホーヴェンのユーモアは、脱力感とともにやってくる。それこそが彼の個性だということを、かつてないほどにシリアス!?と思ったらやっぱりビザールな本作を観れば感じるはず。

『エル ELLE』
原題=ELLE
監督=ポール・ヴァーホーベン(Paul Verthoeven)
出演=イザベル・ユペール、ローラン・ラフィット
日本配給=ギャガ
2016年|フランス


■6月24日 TOHOシネマズ日劇にて上映
エドゥアール・ベール監督『パリは今夜も開演中』
日本公開未定


(C) Pascal Chantier

老舗劇団を率いるエドゥアール・ベールは、日本からやってきた大物演出家(笈田ヨシ)を前にして本物のチンパンジーを用意すると伝えておきながら着ぐるみで済まそうとするが、その着ぐるみの男が怪我をしてしまい、本物のチンパンジーを今から探さなければいけなくなる。ギャラの支払いが遅れているスタッフたちはストに突入し、名門校からインターンにきたサブリナ・ウアザニはまったく融通が利かず、怒った主演男優は家に帰り、資金はショート寸前で、今晩中に金持ちマダムに融資のお願いをとりつけなければ破産。そんな切羽詰まった状況を前にして、しかし口から生まれてきたエドゥアール・ベールは行き当たりばったりの行動を繰り返し、パリの街を放浪する。はたして劇団の運命やいかに......というコメディ。オドレイ・トトゥがエドゥアール・ベールに振り回されるまじめな事務方を演じている。劇団を舞台にした映画といえば古くは『天井桟敷の人々』(マルセル・カルネ監督)という超絶最高永遠の傑作があったし、最近なら『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)という誰が何と言おうと駄作のアカデミー賞受賞作があったけど、本作はその中間くらいかナ。でもこの映画を観れば、モテる男の秘訣がわかる!それは「この男と一緒に行けば楽しいものをみれるかも」という期待感なのだ、ってこれも売り切れてるよ!!!

『パリは今夜も開演中』
原題=Ouvert la nuit
監督=エドゥアール・ベール(Édouard Baer)
出演=エドゥアール・ベール、オドレイ・トゥトゥ、サブリナ・ウアザ二
日本配給=未配給
2016年|フランス

■6月25日(日)上映
トラン・アン・ユン監督『エタニティ 永遠の花たちへ』
今秋、シネスイッチ銀座ほかにて公開


(C)2011 EPILEPTIC FILM

今回紹介する中で、最もオススメしたい1本。繰り返される生と死はまるで深沢七郎『笛吹川』のような、家族の歴史は高速リピート『東京物語』(小津安次郎監督)のような、19世紀の小説がまず主人公の両親の説明から始めるその序章だけがずっと続いて行くような、本作は『ノルウェイの森』のトラン・アン・ユン監督の作品だ。
映画が始まると、7人の子供がいるフランスのブルジョワ家が登場する。うち2人は生まれてすぐに死に、5人が愛されて育ち、うち3人が娘で、そのうちの1人をオドレイ・トトゥが演じている。彼女は幼児になり少女になり、すぐに結婚相手を見つけて、結婚し、子供を5人産む。そしてその子供が、出征して死んだり、病気で死んだり、夫が死んだり、また赤ちゃんが生まれたり、やがて次の世代になり息子が結婚し、その妻がまた赤子を生み、次も生み、また誰かが死に、ずーーーーーーっとそんな話が繰り返される。生まれて、愛し、生み、誰かと死別し、最後は自分も死ぬ。そんなことがずーーーーーっと続く。そのバックではクラシックがかかっている(たとえばドビュッシーのアラベスク)。または女性の一人語りか、虫の音や風の音、子供達の声が聞こえている。幸せか、悲しいか。ずっと人生のハイライトだけが繋げられ、予告編じゃあるまいし、そんなことで映画になるのかよと思うんだけど、なっているし飽きないから面白いんだよな。そして、人生は思い出だということが伝わってくる。
観ていて時々今のシーンが回想なのか、リアルタイムなのか分からなくなる。けどそれはどっちでもよくて、オドレイ・トトゥは「そして人生とは死別することなのだと知った」とまるで、「さよならだけが人生だ」みたいなことを言う。この映画、洗礼シーンは出て来るけれどそんなにキリスト教的な感じがしなくて、とにかく動物的に生まれて、育って、死ぬことだけにフォーカスが当たっている。それは、ベトナム生まれである監督のアジア的な死生観って感じがするんだけど、いやむしろ土着的、原初的な、世界中にあるものなのかもしれない。
思い出は、たとえば幼馴染の結婚相手との、たわむれだったりする。「自転車に乗りたい?」と女の子が両手の人差し指を伸ばしてさし出す、それをハンドルのように握って目を瞑ると、顔に息を吹きかけてくれる......。または夫と死別したあとに、ふと夢で思い出す、夫と部屋でキスした思い出。または、古い友達と、部屋の中でだらだらしているだけの場面。そこにはストーリーがなくて、イメージだけがある。いや、長く生きていればいろいろあるよね、というような家族史が、本作には一応ある。でも思い出シーンを見るたびに、まるで音楽のように、思い出が、どんどん消え去っていってしまう、過ぎ去っていってしまうんだってことが感じられる。今、消え去るものを見せられているのだというのを感じる。または、消え去ったものを観せられているのだというのを感じる。この映画は、消え去るというのを何度も描こうとしている。で、最後は、5人ではじまったブルジョワ家の子供たちは、今では○×人になりましたといって、まるで人口統計調書のように終わる。でもそれでいいって感じ、なぜなら2時間かけて、観客はその数字の中には消え去る思い出の束としての人生があるんだと、すでに分かっているから。そして本作はまだ前売りチケットが売り切れていない!上映は日曜日です。

『エタニティ 永遠の花たちへ』
原題=Éternité
監督=トラン・アン・ユン(Tran Anh Hung)
出演=オドレイ・トトゥ、メラニー・ロラン、ベレニス・べジョ
日本配給=キノフィルムズ
2016年|フランス=ベルギー合作

他にも、人肉食映画『Raw』(これはもう売り切れてる!)とか、ジャック・ドワイヨンの新作『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』(私もこれから前売り買うつもり!)とか魅力的な作品が上映される。劇場でターHELL 穴トミヤっぽい人を見かけたらどんどん逆ナンしてくれよな!(第一声は「この作家は長い不遇時代があったんですよ......」で決まり!)待ってるよ!

文=ターHELL穴トミヤ

「フランス映画祭 2017 Festival du film français au Japon 2017予告動画!!


■開催概要
名称=「フランス映画祭 2017 Festival du film français au Japon 2017」
期間=2017年6月22日(木)~6月25日(日) ※全4日間
会場=有楽町朝日ホール(メイン会場・有楽町マリオン11F)
TOHOシネマズ 日劇(オープニング会場・有楽町マリオン11階、レイトショー会場・有楽町マリオン9F)

主催=ユニフランス
共催=朝日新聞社

助成=在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本/CNC/フランス文化省/フランス外務省
協賛=Procirep/ルノー/ラコステ/エールフランス航空/スターチャンネル
特別協力=TOHOシネマズ/帝国ホテル/TITRA FILM

Supporting Radio=J-WAVE 81.3FM

運営=ユニフランス/東京フィルメックス
宣伝=プレイタイム/シャントラパ/平井直子
2017年4月3日現在

関連リンク

「フランス映画祭 2017 Festival du film français au Japon 2017」公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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