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copyright: Jacob Jorgensen, JJFilm, Denmark

WEB SNIPER Cinema Review!!
同じ現実、違う世界。あなたには何色に見えるだろうか?
空間、光、水、霧などの自然界の要素を巧みに使い、人間の知覚に作用するインスタレーションを数多く生み出し続ける現代アートシーンの重要人物オラファー・エリアソン。彼が仕掛けた「時間と空間」「観客と映画」のアート・エクスペリエンスとは――。

8月5日(土)よりアップリンク、横浜シネマ・ジャック&ベティーほか全国劇場公開
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copyright: Jacob Jorgensen, JJFilm, Denmark

素敵な本屋に行って、なんか面白そうな本はないかな~と探す。コーナーごとにいろいろな本が特集されていて、綺麗な表紙だなとか、面白そうな題だなと思って一冊を手に取ると、読んでいるうちに世界が変わってくるような体験をする。そういうのが好きな人には、この映画もおすすめだ。本作は、現代アーティスト、オラファー・エリアソンについてのドキュメンタリー。であると同時に、彼の作品にもなっている。NYのイーストリバーに4つの滝を出現させるという2008年のプロジェクト『ザ・ニューヨークシティ・ウォーターフォールズ』完成までの過程を追いつつ、ベルリンスタジオでの制作風景、アイスランドへの撮影旅行や、その芸術論が語られる。

copyright: Jacob Jorgensen, JJFilm, Denmark

エリアソンは、空間に惹かれるという。そもそも空間とはなんなのか、そこでスクリーンは白一色になり、どうやったらここに奥行きを感じるか?問いかける声だけが映画館に響く。やがて画面の端からオラファー・エリアソンが入ってきて、スクリーンに映っていたのは真っ白なスタジオだったことが判明する。次にエリアソンは手前に向かって歩いてくる。「さらに空間を感じるはずです。僕を見ていた時間が空間を作るのです」と言うのだが、それは運動が距離をつくって、それが空間を感じさせるということだろうか。
copyright: Jacob Jorgensen, JJFilm, Denmark

この映画、興味深い映像が流れつつ、興味深いことが英語で語られるので、ときどき字幕を追って映像を見逃したり、逆に映像を見て字幕を読む暇がなかったりする。だから全体を捉えやすいように、いつもより少し後ろの席から観るのがいいかもしれない。彼はさらにスクリーンは、照明でもあることを語り出す。「さあスクリーン以外の部分を見てください」、俺は斜め前の席のおっさんを見た......。すると多分スクリーンの中でカメラに黄色い色紙をかぶせたのだろう、おっさんの横顔が黄色く染まっていくではないか! 映画館の中にはたくさんの人が座っている。みんなスクリーンからの光に照らされている。壁の非常灯の枠もちょっとスクリーンの光を反射している。と思っていたら、おっさんが黄色から赤に変化していった、エリアソンが色紙を切り替えたのだ。
エリアソンは「どこを見るか」は観客の自由だと言う。環境は見る人間によっても決められている。その話を聞きながら今度は、フジロックを思い出していた。山の上にある、奥のステージ。初めて聴く異国の音楽家の演奏を前に空を眺める、雲が流れて行くあの美しさ。みんなけっこうステージしか見ていない、せっかく野外にいるんだから、周りの木とかも眺めればいいのに! ステージと反対側を向くと、山が見える。遠くで鳥が飛んでいたりする。それを眺めながらあーフジロックいいなーって思う、こういことだよね!?これってエリアソンしちゃってるみたいな!?さらに演奏と演奏の間、無音になると虫の音とかも聴こえてきて、ほんと最高なんだよな~、あー今年もフジロックの季節がやってきた。話がずれてしまった。

copyright: Jacob Jorgensen, JJFilm, Denmark

何も映っていないスクリーンにエリアソンが入ってくると、そこが空間になる。じゃあスクリーンの中で人が歩く代わりに、川というスクリーンから水を吸い上げてまた落としたらどうなるのか。すると川やNYは、どう変わるのか......。映画を観ているうちに、簡単な話から始まって、それがどう都市全体の話にまでスケールアップしていくのか、エリアソンの思考経路を少し体験できるのがおもしろい。
彼は幼少期アイスランドで過ごし、今ではデンマークに暮らしている。仕事場はベルリンにあり、それは大きな工房のようだ。設計、技術、さまざまな専門家たちが集っていて、専門の料理人すらいる。映画の撮影時には金沢21世紀美術館や直島に送るための作品を作っていて、彼は「いろんな言語を使って、でも同じ一つのことを言っているんだ」と言う。それはこの映画を観ている時に、スクリーンからおっさんの横顔へと目を移した時に感じた、あのフィーリングだろうか。それは同時にスクリーンに照らされた自分が、誰かに見られている状況でもあるかもしれない。エリアソンは人々の意識を、目的から引き剥がして今ここに引き戻す。よし俺もそういう感じの実験を今からするぞ!!!あなたはこの文章をいまスマホで見ているだろうか......、パソコンで見ているだろうか......。どちらにせよ視界の中に、あなたの手があるはずだ。親密で、あなたの思い通りに、動いてくれる手......。私も今、手を使ってこれを書いている。手を伝わって外に出た言葉が、手にたぐられてあなたに届いている。たとえあなたの手はマウスを握っていて、文字の上を移ろっているのがポインタだとしても。結局のところ、私の手とあなたの手は今触れているといえないだろうか。さあ私の手の温もりを感じて......。私は生きていて、あなたも今生きている。私たちは今同じ世界にいるのだから、あなたがこの文章を読んでいる瞬間、私もどこかにいて存在している。さあ、私にファンレターを書いて......。ターHELLクン、初めてお便りします......。

copyright: Jacob Jorgensen, JJFilm, Denmark

文=ターHELL穴トミヤ

すべての観客を巻き込む、77分間の知的エンターテイメント!


『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』
8月5日(土)よりアップリンク、横浜シネマ・ジャック&ベティーほか全国劇場公開

copyright: Jacob Jorgensen, JJFilm, Denmark
原題=『Olafur Eliasson : Space is Process』
監督=ヘンリク・ルンデ、ヤコブ・イェルゲンセン
出演= オラファー・エリアソン
配給=ficka
宣伝=サニー映画宣伝事務所

2009│デンマーク│英語、デンマーク語│16:9│ステレオ│カラー│77分

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映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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