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WEB SNIPER Cinema Review!!
1万年以上続いた「縄文」という謎
縄文時代が終焉を迎えて約2500年。この時間の流れの中で日本人は一体何を失い、忘れてしまったのか。縄文にハマっている人をはじめ、考古学や民俗学の専門家、さらには文化人やアーティスト、そして縄文に情熱の全てを傾ける人々への取材を経てその秘密の核心へと迫ってゆく――。

2018年7月7日(土)より渋谷イメージフォーラムほかにて全国ロードショー
※記事中には作品本編の内容が仔細に記載されています。未見の方はご注意ください。
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縄文にハマる人々を通して現代日本社会の姿が浮かび上がってくる点、大変優れたドキュメンタリーになっていた......みたいな予定調和をぶっ飛ばす縄文パワーにより、現代社会などどうでもよくなり、縄文が最高。縄文がいい。本作を観ている間は脳内縄文シナプスが発火しており、縄文時代のフェスに絶対行きたい。縄文時代のフェスにはすごい音楽と恍惚があり、生贄にされるのは勘弁だけど、山の向こうから来た超ホットな4人組とかがいて、観たことないすごいファッションとかしていて、聴いたこともない音楽を演奏し始めて、これはもう感動したから鮭を4匹あげるしかないみたいな、そんなことが起きていたのだと思う。この映画にそんな話をしている人は出てこないのだが、それは絶対起きていたはずで、なぜなら自分が縄文人だったらそうであってほしいからだが、そこで「FF外から失礼します。それはありえないですね、なぜなら......」みたいなことを言われたりしないのが、縄文時代のいいところだというのが本作を観ると分かってくる。というのは縄文人たちが文字を持たなかったからで、さらにはあまりに昔すぎるため(1万3000年くらい前から2500年くらい前までとされている)、推論できる余地がでかく、何を言ってもツッコミがされにくいのである。

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というわけで、本作にはまず「縄文人は宇宙創生と生命誕生の統一理論を構築していて、その秘密は土偶のうずまきにあり、世界にそれを伝えなければ人類は絶滅する」という主張のおじさんが出てくる。縄文時代をかなり楽しんでいる感じだ! 次に出てくる女性は「縄文ストレッチ」を提唱していて、「火焔土器を毎日見ていたら、体が曲がりだした。縄文土器の中に入ってみたいなと思った」と言う。こちらも意味不明だが、昔ヒップホップのドキュメンタリーを観ていたところ、グラフィティ・アーティストのラメルジーが「HIPHOPというのは総合芸術であり、それはブレイクダンス、グラフィティ、ラップ、DJの四大要素からなっているが、中でもブレイクダンスはグラフィティの文字の動きを身体で表現したものである」と言っていたのを思い出した。仮に今から5000年後の人類が土の下からグラフィティ・アーティストによって"落書き"された壁を発掘し、美術館で眺めていたところ、この女性のような人間が、突然「あの文字の動きを表現したい」と言い出して踊り出したらどうだろうか。その人は「ブレイクダンス」を蘇らせたということにならないか? 土器と違って動きが残らない以上、彼女の縄文ストレッチにだって、耳を傾ける価値はあるのだ......。

監督は、ひょんなきっかけから縄文に興味を持ちはじめる。調べてみると、縄文の土器や土偶は驚くほどに多種多様で、無視できないほどに素晴らしい。それなのに、それが何を表しているのか、どんな意味を持って生まれてきたものなのか、いくらインタビューを重ねても、誰にも断言ができない。
学者は発掘されたものやアイヌの伝承をもとに推論を重ね、実験考古学者は手にとって触らなければわからないと言い、元文化庁は縄文人は可能なのに井戸を掘らないのがナゾと言い、学研「日本の歴史」の表紙イラストを描いている人は、真実よりリアリティのある物語のほうが真実なのではと語る。北海道に竪穴式住居を作り自給自足してみた人、東大の人工生命学者、グラフィックデザイナー、ネイティブアメリカン、岡本太郎記念館の人、みんな様々なアプローチで縄文時代について語っていく。
驚いたのは、縄文時代といえば1万年も続いただけあり平和で自由な世界だったという従来の視点をくつがえす、「縄文時代、しばりキツかった」説を唱える遺物修復家。彼は自らが工芸家である視点から、縄文人を粘土造形を知り尽くしたプロフェッショナルだと認める。それなのになぜ彼らは土器・土偶だけを作り、動物や植物の人形を作らなかったのか。土偶も、土器の模様も、もっと写実的にうまく作れるはずなのに、なぜ素朴風なのか。それは縄文社会に、生き物を模写することは命をコピーすることという、強烈なタブーが存在していたからではないか、と推論するのだ。
それは現在の我々が、動物をクローンできる技術を持ちながら、人間のクローンだけはタブー感ゆえに作っていないことに、通じるかもしれない。命をつくることへの畏れこそは、現代人と縄文人の共通点なのかもしれない。

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縄文遺跡は北海道から鹿児島まで幅広く分布していて、監督は津々浦々に出かけていく。縄文土器が出てくるところは田舎が多く、となると縄文で町おこしが始まり、その縄文と自治体のコラボもおもしろい。街道沿いの案内柱の上にちょこんと載る土偶にグッとくる。郷土館の看板に配置された仮面の歪みっぷりがすごいし、巨大土偶「しゃこちゃん」が正面に張り付いた駅舎なんかはもう最高。その良さは、日本中に行き渡った均質でつまらないデザインと、「デザイン原案・縄文人」の狂いすぎた造形の、まさかの同居から発生している。それはある日、郵便受けに入っていたスーパーのチラシを見たら、納豆とかネギが全部サルバドール・ダリの絵でしたみたいな、そんな衝撃だろうか。

死とはなにか、命とは何か。縄文を追っていくと、最後は縄文の死生観に行きつき、やっぱりそれはわからない。でも本作を観終わった今、私の脳内縄文シナプスがこう語りかけてくる、命はかわいいのだと。命はかわいくて、縄文人もかわいくて、縄文で町おこしもかわいくて、たぬきもかわいくて、植物もかわいくて、粘土もかわいくて(粘土を命あるものとして捉えていた説もおもしろかった)、俺たちはみんなかわいい。そんな命のかわいさを本作ではナレーター=コムアイの声で表現していて、ほんとぴったり!!! 縄文時代のフェスに行ったら、絶対コムアイがいるはず! と思ったらコムアイは現代の日本にいるし、この幸せを土偶に感謝せずにいられない。やっぱり現代もイイじゃん!コムアイさんメールください!竪穴式デートしよっ!

文=ターHELL穴トミヤ

全国100か所にも及ぶ縄文探求の旅の果てにたどり着いた現代人必見の謎の正体とは?


『縄文にハマる人々』
2018年7月7日(土)より渋谷イメージフォーラムほかにて全国ロードショー

(C)2017rtapikcar,inc
監督=山岡信貴
ナレーション=コムアイ
出演=小林達雄、佐藤卓、いとうせいこう、猪風来、小山修三、小杉康、池上高志、デニス・バンクス
製作・配給=リタピクチャル

2018年│日本映画│ビスタサイズ│HD│カラー│ドルビーデジタル│103分

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映画『縄文にハマる人々』公式サイト

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。
http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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