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『二郎は鮨の夢を見る』監督最新作! 寿司の次は絶叫ホラー!
死後間もない人間を蘇生させることが出来る"ラザロ血清"を発見した研究チームが、実験中の事故により一員を失ってしまう。期せずして人間の被験者で実験に突入することになった彼らは死者を蘇らせることに成功するが、それは同時に人智を超えた恐怖の力を解放してしまうことにもなるのだった――。 全国公開中
本作は、死者を蘇らせたら本人が今際の際の走馬灯の中に閉じ込められちゃって、押さえ込んでいたトラウマが無限に蘇り、苦しみ続けちゃってる一方、危ない人にもなってしまっている気がします!やばいです!という絶叫系ホラームービー。この映画でなにが一番意外かって、監督(デヴィッド・ゲルブ)の前作が『二郎は鮨の夢を見る』なとこ。なんで、あのオバマも観た有名なスシドキュメンタリーの次に、死者の蘇生ホラー撮ろうと思ったのか。前作撮影中に次々と捌かれていくネタを見て、何か思うところあったのか。夢に次々と死んだ海産物が出てきて、うなされていた可能性も考えられるのではないか。
大学の研究室で犬の蘇生実験を続ける2人(マーク・デュプラス、オリヴィア・ワイルド)の研究者と、2人の学生(エヴァン・ピーターズ、ドナルド・グローヴァー)。そこにドキュメンタリーフィルムを撮りに、女子学生(サラ・ボルジャー)がやってくる。無神論者マーク・デュプラスの顔が、いかにも傲慢そうでいい。目が笑っていないというか、つねに計算してそうというか、彼はオリヴィア・ワイルドと研究者カップルなんだけど、結婚したら絶対DVするタイプだと思う。「オイ!匂いがつくから俺の包丁でネタをさばくなと言っただろう!」とか言って、まあ今回はスシの映画じゃない。
彼らはついに死んだ犬の復活に成功する。この犬をさっそく家に連れ帰ってペットにしていて、さすがアメリカ人はフランクだな、死後の世界から蘇った生物とも気軽な付き合いを欠かさないんだな、と思っていたら、やっぱり1回死んでる犬はどうも行動が怪しい。
学生の一人、ドナルド・グローヴァーはナード黒人って感じだけど、オリヴィア・ワイルドを深夜にブタの被り物で、いきなり「わっ!」とおどかしたりする。そのあとすかさず食べ物の差し入れを出すあたり、ドキドキを恋に錯覚させる「吊り橋効果」みたいのを狙っているのかもしれない(いかにもナードな奴が思いつきそうなことだ)。もう一人のエヴァン・ピーターズは、早口なところはジェシー・アイゼンバーグっぽいながら、いつも電子タバコを吸っているのが今風でいい。彼が深夜、研究室でPCゲームをやっていると突然、大きな音がしてめちゃびっくりさせられる。何事かと確かめに行くと、なんとあの犬の檻を置いていた部屋が、めちゃくちゃになっているではないか! とまあなんだかんだあって、彼らはついに禁断の人間蘇生にまで手を出してしまう。あとは地下室に閉じ込められるわ、電気は消えるわ、相変わらず突然大きい音がするわで、心臓がいくつあっても足りない絶叫ホラーゾーンへと突入していく。
この映画、動くはずのないものが動く、というのが面白くて、死の世界から復活した人間はいくつか特殊能力を持っている。ペンを自在に飛び回らせたり、人を吹っ飛ばしたり、でも一番動くはずがないのに動いているのは死んだあんただよって感じで、死者の復活シーンが良い。シーツをかけられた死者が、いつのまにか上体を起こしているショック!そのとき上体を起こす動きを見せず、パッと振り向くとさっきまで寝ていた体が起き上がっている。脳内補完させるなんて渋い演出だなーと思っていたら、後半には死体袋がビョーン!と跳ね上がっていたので、いろいろやりたいだけだったのかもしれない。
主人公たちは死者復活に電気ショックを使っていて、これはもうフランケンシュタインの頃からの伝統だ。フランケンシュタインの原作が19世紀、初映画化が20世紀初頭で、電気が生命に関係しているというのは当時、最新の知識だった。本作にもDMTとよばれる、最近の科学知識が取り込まれている。これはアマゾンのシャーマンが儀式で使う非常に強力な幻覚剤に含まれていて、しかし脳内にも普段から存在する化学物質でもあるらしい。そして最近の科学者の中には、このDMTが臨死体験者たちが語る「あの世」の正体なのではないか?という主張を持つ人がいるのだ。
劇中でマーク・デュプラスは、死の瞬間の脳内にはDMTが大量に噴出されて、「あの世」を見せているのだと自説を述べる。対するオリヴィア・ワイルドは、魂はエネルギーで死ぬと他の肉体へと移動していく、その魂が移動するためのドアをDMTが開けているんだと主張する。これが前フリとなって、実際死者が蘇ってみたら「あの世とこの世の間の幻覚世界に閉じ込められて、永遠にさまよい続ける羽目になっちゃいましたー!」というDMTバットトリップこそが、本作第2のホラー。やっぱり今回も夢展開がやってくる、デヴィッド・ゲルブ監督だったのだ。
というわけで、みなさんだったらどんな夢を見てみたいだろうか?おいしいスシがでてきて、次々と食べちゃう夢とかいいよな~(だからそれは前作だっての)!
文=ターHELL穴トミヤ
古より世界中で報告されている死者の復活――
神の領域に足を踏み入れた研究所で、我々は"その先の恐怖"に遭遇する
『ラザロ・エフェクト』
全国公開中
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映画『ラザロ・エフェクト』公式サイト
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