WEB SNIPER Cinema Review!!
甘詰留太による同名コミックの実写映画化第2弾!!
幼なじみのナナとカオル。隣どうしに住む高校生の2人はふとしたことから"息抜き"と称したSMプレイにはまっていく――。甘詰留太による同名コミックの実写映画化。その第2弾となる今作は、禁断行為の舞台を長野県に移し、プレイの内容もエスカレート。拘束、羞恥、スパンキング......。グラビアアイドル・青野未来が演じるナナの熱演にもご注目!!9月8日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー
「ヤングアニマル」「ヤングアニマル嵐」にて絶賛連載中の青春SM漫画『ナナとカオル』が実写化されたのは今から1年半前。
美人で優等生で生徒会長のナナと落ちこぼれで唯一の趣味はSMのカオル、幼なじみの2人がふとしたことから"息抜き"という名のSMプレイを始めるというセンセーショナルなストーリーが話題を呼んだ本作。その第2弾が早くも公開されることになった。
どんな映画でも続編を作るというのは難しいものだと思う。
1作目はナナとカオルがSMごっこを始めるようになったいきさつや心情を中心にしたインパクトのあるストーリー展開だったけれど、2作目で同じことをやっても意味がない。この秀逸な設定と2人の甘酸っぱい関係性をキープしながら毛色の違う物語を見せるために清水厚監督が選んだのは、舞台を都会から長野の田舎に移すことだった。
高校2年の春休み。転勤した日本史の先生に誘われて、長野の高校の生徒会メンバーと長野のパワースポット巡りをすることになったナナ(青野未来)。彼女は一緒に行かないかと幼なじみのカオル(栩原楽人)を誘うが、上から目線の物言いにカチンときたカオルはそれを断わってしまう。
しかし長野に来てみると、なんとそこには温泉でバイトをするカオルの姿が。なりゆきで一緒にパワースポット巡りをすることになった2人は、同行のみんなに隠れて屋外で"秘密の息抜き"を始める――。
放課後の教室で放置プレイをしたり、みんなと一緒にいるときにノーパンにならせたりと、1作目から見ると2人のSMプレイも少し進化しているように見えるがそのへんはさておいて。
本作を観てまず感じたのは、80年代アイドル映画ばりのベタさだ。
ナナが髪につけている大きな白いリボンや、カオルを演じる栩原楽人の過剰なほどにコミカルな演技は、今どきの映画っぽくなく妙なノスタルジーを感じさせる。作品本体にはさほど必要とも思えない田舎の風景や、ケンカしてじゃれあう男女、ミニスカートの制服、泊まりがけの旅行にウキウキする友達以上恋人未満の2人。
でも、それでいいんである。なぜなら一見センセーショナルな題材を扱っているようでいて、この映画のメインテーマになっているのはなんともベタな「胸キュン」というシロモノだからだ。
物語の中盤、パワースポット巡りの途中で迷子になってしまった2人は、人気のない古民家で"仕方なく"一夜を共にすることになる(これまたベタ!)。
しかし80年代アイドル映画と唯一違うのは、ここでいきなりSMプレイが始まるところだ。
ドキドキしながら別々の布団に入ったものの、なぜかスパンキングプレイに突入する2人。白いムチムチのお尻を素手で叩かれて「私はプライドの高い、悪い子です~!」と半泣きで絶叫するナナ。そんな姿に興奮し、狂ったように叩きまくるカオル。肉感的なボディをしたナナが三枚目キャラのカオルの膝に乗せられておしおきされるシーンはちょっと笑ってしまいそうな雰囲気もあるのだが、迫力満点。間違いなく1作目の上をいく熱演だ。
スパンキングを宣言されたナナが「お尻、こわれちゃう......」と潤んだ目でつぶやくところや、これからおしおきされるために自分でお尻にクリームを塗るシーンもゾクッとくる。
スパンキングプレイというハードルを越えたことで、また少し距離を縮めたナナとカオル。でも、1作目がそうだったように今回もやっぱり最後までプラトニックのまま。キスはもちろん、互いに気持ちを伝えることすらしない。
こうなると、2人は肉体関係を持たないまま秘密を共有することで"終わらない夏休み"を過ごしているんじゃないかという気がしてくる。
男女の性愛に目覚めきっていない年頃の男の子と女の子にとって一番エロいもの。それは「秘密の共有」だと思う。長い人生の中でほんの一瞬しか味わうことのできないその感覚は、セックスなんかよりSMなんかよりずっとずっと卑猥だ。
本作は「東京から世界中の愛すべき無器用な男子たち」に向けて発信される『東京思春期』シリーズとして公開されてるんだとか。でも、この映画を観て本当に震えることができるのは、あの感覚を二度と味わうことができない大人たちのほうなんじゃないかと思う。
また、余談だけれど長野出身の私は本作の端々に出てくる"長野ネタ"にも地味に笑わせてもらった。
よく見れば長野の宿でナナと先生の前に並べられたお茶受けは野沢菜と蚕の蛹(!)だし、東京へ帰るナナとカオルを見送る長野の高校生たちは、駅のホームでいきなり万歳三唱を始める(注・どっちも長野の風習です......)。
きっと監督は「秘密のケンミンショー」ファンに違いない。
文=遠藤遊佐
青春純愛"SM"映画第2弾
エスカレートするふたりの"秘密の息抜き"がたどり着くのは......
FLV形式 10.01MB 1分42秒
『ナナとカオル 第2章』
9月8日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー
関連リンク
映画『ナナとカオル 第2章』公式サイト
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