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『月刊ニュータイプ』300号記念!
『月刊ニュータイプ』が創刊から300号を迎えました。別冊付録は25年の歴史を丸ごと1冊で振り返る100ページ特別編集本。
300号までの表紙ギャラリー、そして「マッドハウス」、「ガイナックス」、「プロダクションI.G」、「ボンズ」の歴代ヒーロー&ヒロインが大集合した豪華な描き下ろしイラストなどを収録。そんな『月刊ニュータイプ』にばるぼら氏が迫ります。
軽く歴史のおさらいをすると、『ニュータイプ』の前身は『ザテレビジョン』のアニメコーナーである(『ザテレビジョン』の創刊は1982年10月1日号)。この雑誌のアニメ情報ページを担当していたのが現・角川書店代表取締役社長の井上伸一郎で、『アニメック』(ラポート)から独立しての参加だった。『ザテレビジョン』は基本は芸能情報誌だが、1984年1月27日号で「聖戦士ダンバイン」最終回を特集し、ヒロイン・キャラクターのチャム・ファウを表紙にしている(※)。この時の成績が良かったのだろう、同年12月に別冊で『重戦機エルガイム』のムックを出しており、翌年の『ニュータイプ』創刊への準備が整った(『ニュータイプ』第1号は1985年4月号)。
300号付録の井上インタビューによれば、初代編集長となる佐藤良悦(現・トイズプレス代表取締役)らと『ニュータイプ』創刊について話し合ったのは1984年11月のこと。『エスクァイア』『ブルータス』『ポパイ』などを参考に、それまであったアニメ雑誌のフォーマットをぶち壊し「普通の若者が読めるアニメ雑誌とは何だろうか」を考えぬいた末の誌面だったという。アニメファン以外に判りづらい表現は使わない、版権描き下ろしイラストの質にこだわる、声優を「CV(キャラクター・ヴォイス)」と言い換えるなど、他誌との差別化を図った内容面での方向性はもとより、ここで改めて取り上げたいのはそのデザイン面である。
朝倉は『ニュータイプ』の前に『ザテレビジョン』のデザインにスタッフで参加しており(ADはメタ・マニエラの大賀匠津)、その流れで編集部にいた佐藤良悦と意気投合して新雑誌創刊に誘われるのだが、当時の『ザテレビジョン』の表紙と『ニュータイプ』の表紙を並べると、同じ方法論で作られていたのが判ると思う。つまり『ニュータイプ』のデザインの洗練は、アニメ雑誌の外部から輸入されてきたものであり、アニメ文化の中からは出てこなかった発想を持ち込んだ最初のアニメ誌が『ニュータイプ』なのだ。
参考文献
『別冊ザテレビジョン 20th Memorial Book』(角川書店/2002年9月22日発行)
『ライトノベル完全読本Vol.3』(日経BPムック/2005年12月1日発行)
文=ばるぼら
『月刊ニュータイプ 2010年3月号 The 300th ANNIVERSARY SPECIAL(角川書店)』
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『シューゲイザー・ディスク・ガイド(株式会社ブルース・インターアクションズ)』
ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』(共に翔泳社)『NYLON 100%』(アスペクト)など。『アイデア』不定期連載中。
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