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特別すぎない、女の子のリアル。ここにそっとしまってあります…。

『素っ頓狂な花(小学館)

著者=武嶌波


文=さやわか



イキマン出身の新鋭・武嶌波が、女の子のリアルを瑞々しく描き出した珠玉の短編7作品!  
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『素っ頓狂な花』を全く読む気はなかったが、本屋でこの本のオビを見たときに内田春菊が「男に生まれてきてたら、こんなことは考えなくてすんだ」と書いているのを見つけて、やけにカンに障ってしかたがなくなり、こうなったら買って帰って読んでやろうじゃないか、ということにした。

「こんなことは考えなくてすんだ」とは何だろうか。この言葉には「考えなくてもいいようなことを考えなければならない」というニュアンスがある。「こんなこと」という突き放し方には、それがある。男性であれば考えなくてもいい問題が、女性にだけ突きつけられている。疎ましい、とでもいうようである。そうして、同時に、この言葉は「男はこんなこと考えなくていいから楽だよね」という含みを持たせている。何だか気に入らない。

「男に生まれてきてたら、こんなことは考えなくてすんだ」と断定できる人物とは誰だろうか。それは、女性が考えずにはいられない「こんなこと」を、男性が考えていないという絶対的な確証を持っている「彼女」だけである。しかし、この人物はまあ存在しない。なぜなら「彼女」は男性ではないからである。男性ではないのに、どうして男性の心を詳らかに理解できるのか。男女を比較した上で男性に欠けている部分などを語ることができるのか。男性の方が楽だということを示唆できるのか。

いや、一応断るが、「男性にだって女性の気持ちが分かるのです」という話をしたいわけではない。男には女の気持ちは分からないことなんてはっきりしている。確かに、僕は男性だから、彼女たちがどんなことを「考えなくて済まずに」生きているのか知らないし、どんなに努力しても十全には理解できない。しかし、彼女たちが「男性は自分たちが考えるようなことを間違いなく考えていない」という確信を込めて「男に生まれてきてたら、こんなことは考えなくてすんだ」と言うのであれば、それはどうしても認められない。なぜなら、僕が女性のことを分からないのと同じように、女性もまた僕ら男性のことが分からないはずだからである。同性について可知であると述べるために異性という不可知を可知的に扱っているわけで、この言葉は矛盾を抱えている。

安易なフェミニズムに満足する人なら「男性中心社会だから女性には男性の考えていることが分かるのだ」とでも言いそうなところだが、それは他者という存在を安易に分かりやすくしすぎている。本来なら「こんなことを考えるのは女性だけだ」とか、「俺たち男性はこういう考え方をする」とかいう考え方ですら疑問視すべきなのであり、つまりこれは男女の問題ですらないのである。

しかしまあ、彼女たちのように考えることができるのであれば、幸せではある。そういう人は「男に生まれてきてたら、こんなことは考えなくてすんだ」などと、女性を代表するような口調で、男性のことも理解できているという確信を込めたことを言えるのである。同性のことなら理解できるという信頼に寄りかかってしまって、かえって性差について考えることを遠ざけているとは、決して気づかない。

しかし、『素っ頓狂な花』は、そんなオビの言葉に全然沿った本じゃなかった。男性のことが理解できていると思って描いた本ではないのだ。だからこんなオビは、全然いらない。これは、ただ相手を愛して、相手に愛されることだけが人生のすべてを決めるというように生きる人々の姿を描いた短編集である。主人公として登場するのは確かに女性ばかりだから、女性ならではの気持ちを描いたと言われるのかもしれない。しかし主人公は女性を代表したようなことをこれっぽっちも述べたりはしていない。また男性一般について分かったようなことだって言わない。たしかに男性は理解不能なものとして登場するが、しかし他人なんて誰でもそうである。別に性差にこだわった話なんてする必要はないのだ。そこにあるのはごく個人的な、愛や性に取り囲まれた他者とのふれあいである。作者はむしろ女性性を分かりやすく主張せずにそれを描いていて、その生活や気持ちの有り様はとても美しい。

文=さやわか


『素っ頓狂な花(小学館)

著者=武嶌波

価格:650円(税込)
判型/頁:B6判/192頁
ISBN:9784091884442
発売日:2009/01/30
出版社:小学館


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「Hang Reviewers High」
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09.02.15更新 | レビュー  >