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革命を目指す若者達の青春群像劇。
この物語の登場人物達は決して特別ではない――。

『レッド(講談社)

著者= 山本直樹


文=さやわか


ごく普通の若者達が、矛盾に満ちた国家体制を打破するため、革命運動に身を投じていく。それは、正しいことのはずだった……。激動の学生運動の行き着く先とはどこなのか!? 全ての世代に捧げる、若き革命家達の青春群像劇。。  
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特に今読むべきというわけではなかったが、前から読もうと思っていた本なので山本直樹『レッド』を読んだ。題材は言うまでもなく、非常に有名なものだ。七〇年代安保を頂点として学生運動が下火になりつつある頃に非合法闘争へと追い詰められ、やがて内ゲバによるリンチへと至ってしまった連合赤軍事件を扱っている。

本来なら善良と正義を目指す閉鎖された集団が結果的に社会と対立してしてしまい破局を迎えるというテーマ性は、同作者がオウム真理教事件を下敷きにした『ビリーバーズ』(小学館、一九九九)と通底するものがある。しかし本作はドキュメンタリータッチとも言えるような史実に沿った構成を持っているのが特徴で、これにくらべれば『ビリーバーズ』ははるかにフィクションとして自由に記述されていると言っていいだろう。本作では折りにつけ、膨大な登場人物に対するナレーションとして、その人物や逮捕や殺害死という「結末」を迎えるまでの残り時間が記され、また殺害される人物については死亡の時系列順にナンバリングが施される。これによって、物語に登場する学生たちが青春を謳歌しているシーンであろうと革命思想に耽溺しているシーンであろうと、または平凡に食事を採っているシーンであろうと、彼らにはわずかな時間しか残されておらず、早晩破局を迎えるということが読者には強く意識される仕組みになっている。この冷ややかな演出は実にうまい。人物が予定通りに殺害された瞬間、つまり死体となって「結末」を迎えた瞬間にナンバリングが消されるなどのシニカルなやり方も含めて山本直樹らしいものだと言っていいだろう。この仕掛け自体が、物語を読ませる原動力となっている。

このような仕掛けを持たせたことで、結果として本作は物語性よりも史実を追っていく側面を強く打ち出すものになった。ここにはたしかに、年表を紐解くようなスリリングさがある。しかしここで山本直樹がいわば史実モノをやっているのだと考えては誤りである。細部にわたってどこが創作であるかとか、またこのような描き方は史実にとって誤りだとか言うのには値しないのである。予定された破局は、どんなシーンでも繰り返しナレーションされる。それは「忘れるな」と言うようである。そのシーンで描かれている若者の描写が、最終的な破局として説明されるものと食い違っていればいるほど、そこには「なぜ」という違和感が残る。それは現在に生きる我々からの違和感であり、また暴走してしまった集団に対する、社会という外部からの違和感である。しかしそれはまた、そのシーンの時点ではまだ生きていた若者自身にとっての違和感でもある。次第に暴走していった集団は、本来なら平凡な若者たちによって築かれていた。それなのに彼らは最終的に大きな違和感を残させるような「結末」へ至ってしまった。彼らを決定的に狂わせたものがどの時点だったのか。もしくは、彼らは過程のすべてをもって狂ってしまったということ。そのことをこの作品は、冷徹な形式によって淡々と示そうとしている。

文=さやわか


『レッド (1)(講談社)

著者= 山本直樹

価格:1,000円(税込)
ISBN:978-4-06-372322-9
発行:2007/09/21
出版社:講談社


出版社サイトにて詳細を確認する>>


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「Hang Reviewers High」
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09.04.26更新 | レビュー  >