赤線廃止50周年記念!! 戦後物語られた遊女たちの真相 『娼婦学ノート(データハウス)』 風俗の現場を30年以上も見続けてきた著者が、敗戦直後から、売春防止法施行、現代に至る「戦後日本の娼婦の実像」を小説を通して浮かび上がらせる! |
今年2008年の3月31日は日本から「赤線」が消えてちょうど50年になる。売春防止法の事実上の全面実施、罰則を適用した取締り規定の施行が1958年4月1日。この日、「赤線」という形で黙認されていた日本の公娼制度が事実上姿を消して、娼婦という職業は非合法なアンダーグラウンドのものとなった。
この『娼婦学ノート』は娼婦を主人公とした小説、いわゆる娼婦小説の評論集である。取り上げられている作品は戦前の名作、田村泰次郎『肉体の門』から映画化やドラマ化で話題となった山田宗樹『嫌われ松子の一生』など計35篇。
現在法政大学の修士課程に在籍中という著者の伊藤祐作は30年以上も風俗ライターとして娼婦たちの周辺で取材を繰り返してきたという。そうして彼はフィクションとして描かれた娼婦たちと、自分が出会ってきた非合法の娼婦たちとの関係を見出すべく「娼婦学」としての研究を始める。本書はその最初の成果といって差し支えないだろう。
“物語を通して浮かび上がる現代日本の娼婦の実像”、帯に書かれたこのコピーは本書の内容を的確に表わしているが、本書は娼婦小説なるものの非常に的確でわかりやすい手引書でもある。そして著者はあとがきでこのように記している。
「運命としてでしか語られなかった娼婦論が自立して生きる女性の人生の選択肢の問題として語られる時代がやってくる」
すでに現代はその玄関口にまで差し掛かっているように思う。
男性はもちろんのこと、自立を目指す女性にこそ読んでいただきたい一冊である。
文=編集部・五十嵐彰
『娼婦学ノート(データハウス)』
発売日:2008年2月8日
著者:伊藤祐作
定価:1785円
ISBN:978-4-88718-962-1
判型:四六判上製 266頁
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