web sniper's book review sexual art entertainment magazine Striptease de Japan 『SdJ 4(Round Stage)』 文=井上文 ストリップ劇場で売られている雑誌『SdJ』。ストリップをこよなく愛する人たちの手によって作られたこの本は、ストリップは死んでいない!と教えてくれます。 |
ストリップ劇場に行くと時々ちょこんと売られている雑誌があります。『SdJ』というタイトルで、よく見ると「Striptease de Japan」と表記がある。A5判の中綴じで40ページほどの可愛らしい作り。この「可愛らしい」は手に取ったら欲しくなるという意味です。
パラパラ捲ると、写真がいい。編集がいい。どういいのかと言うと、踊り子さんの魅力が表と裏の両方とも押さえられているのです。ストリップ好きな方はお分かりだと思いますが、踊り子さんの晴れ舞台はステージだとしても、お客が感じている魅力はそこだけに留まりません。踊り子さんの人柄であったり、頑張っている姿勢であったり、ちょっとした一言や笑顔が大切な要素であったりします。ストリップは、他の舞台芸術と違って、演者と客との距離感に独特のものがあって、表現されるエロスに加え、お客が対個人として感じる熱や、紡ぐ夢や、幻想を総じたところで全体の魅力を形成しています。
ですからお客と近い視点で写真が撮られ、誌面が作られていると、劇場で味わう幸せの一部を家に持ち帰れたような気持ちになるのです。つまりストリップを愛している人が作っているから「いい」という種類の「いい」は、実質的な力を持っているのです。
個人的な話になりますが、私は以前、早乙女宏美さん(日活ロマンポルノでデビュー後、踊り子としてキャリアを重ね、今は主に自縛・切腹ショーをしています)の担当編集者として、東京近郊のストリップ劇場やその跡地を回ったことがあります。記事のタイトルは「さよならストリップ劇場」にしました。早乙女さん自身が踊り子としての活動に別れを告げようとしていた背景と、ストリップ劇場がどんどんなくなっていく状況を重ね合わせてつけたタイトルです。あれから10年近くが経った今、やはり劇場の数は激減し、一方でステージよりもポラに力を入れる劇場が増え、当時早乙女さんが嘆いていた状況はますます深刻になっているように思えます。
しかし、だからと言ってストリップが死んだわけではないと、『SdJ』は訴えようとしています。『SdJ』が紹介しているのは、今現在、残された場でステージに情熱を傾け、自分の演目に工夫を凝らし、多くのファンを楽しませているプロたちの姿です。40ページの中に幾つものインタビューを載せ、各人のステージの工夫のポイントや、ストリップへの思い、お客との交流のエピソードを生き生きとした写真と共に伝えてくれています。これを読むと、ただ懐古したところで事態はよくならない、お客が劇場に行かなければストリップは盛り上がらないという当たり前のことを考えさせられます。雑誌というものの意味や力を身の内から感じます。つまりはストリップを観に行きたくさせられるのです。
写真を撮っているのは長年踊り子さんを撮り続けている谷口雅彦氏。以前、『S&Mスナイパー』でもストリップ取材の連載をされていました。そして編集人はストリップ愛好家の樫間慎一(かしましんいち)氏。先日お会いする機会があったのですが、「僕はストリップの大ファン。素敵な踊り子さんを、素晴らしいステージを何らかの形で残したい」と個人でストリップ雑誌や書籍の制作を始めた熱い方です。他の仕事の傍ら(関東在住)、劇場の取材で全国を回り、『SdJ』第4号では広島で踊り子さんの密着取材もしています。これはなまなかな情熱ではできないことです。
こうして有志のスタッフだけで地道に作られている『SdJ』は不定期刊で定価1000円。取り扱い劇場及び書店、通販の申し込み先は以下でご確認下さい。ちなみに『WEBスナイパー』ではインベカヲリ★さんの写真&インタビュー連載『舞姫燗満』でもストリップを盛り上げています。あわせてクリックを。
文=井上文
『SdJ 4(Round Stage)』
編集人:樫間慎一
定価:1000円
発行:Round Stage
※通信販売(定価1000円+送料200円)のご希望はメールにて、
round_stage@hotmail.com
Round Stage 樫間慎一まで。
出版社サイトで作品の詳細を確認する>>>こちら
関連記事
『蟹工船 1巻(新潮社)』漫画=原恵一郎 原作=小林多喜二
井上文 1971年生まれ。SM雑誌編集部に勤務後、フリー編集・ライターに。猥褻物を専門に、書籍・雑誌の裏方を務める。発明団体『BENRI編集室』顧問。 |