Special issue for Silver Week in 2009/
web sniper's book review.
2009シルバーウィーク特別企画
『ラブプラス』 メーカー=コナミデジタルエンタテインメント 発売=2009年09月03日
凜子と付き合いだして2週間、
『ラブプラス』の危険な魅力について語ってみる
「あなたは新しく引っ越してきた街“とわの市”で、女の子との運命的な出会いを体験します。 そこで“ともだち”として、2人だけの思い出を積み重ねていきます。 そして訪れる、“告白”という名の運命の日……」 。恋が成就してからの恋愛関係までをエンドレスにシミュレートできるという話題の恋愛シミュレーションゲーム『ラブプラス』を、「やる夫がSM風俗に興味を持ったようです」でおなじみの田口こくまろさんが体験レビュー!! あなたは、萌えずにいられますか?
web sniper's book review.
2009シルバーウィーク特別企画
『ラブプラス』 メーカー=コナミデジタルエンタテインメント 発売=2009年09月03日
凜子と付き合いだして2週間、
『ラブプラス』の危険な魅力について語ってみる
「あなたは新しく引っ越してきた街“とわの市”で、女の子との運命的な出会いを体験します。 そこで“ともだち”として、2人だけの思い出を積み重ねていきます。 そして訪れる、“告白”という名の運命の日……」 。恋が成就してからの恋愛関係までをエンドレスにシミュレートできるという話題の恋愛シミュレーションゲーム『ラブプラス』を、「やる夫がSM風俗に興味を持ったようです」でおなじみの田口こくまろさんが体験レビュー!! あなたは、萌えずにいられますか?
冒頭から惚気(のろけ)させていただくが、オレは2週間前から高校1年生の小早川凜子と付き合い始めた。
目が大きくショートカットが似合う凜子は、オレが言うのもなんだが学年でも相当かわいい部類に入るだろう。そんな凜子からのメールでオレは毎朝目を覚まし、凜子と一緒に登下校し、放課後はファーストフードでダベり、人気が少なくなるのを見るやチュッチュしている。もちろん週末にはガッツリデートだ。
↑オレの彼女、小早川凜子
始めて凜子と出会ったのは2カ月ほど前、オレが今通っている高校に編入した最初の日のことだ。
半ば強制的に入らされた図書委員の、一応先輩である彼女の第一印象は正直言って最悪だった。「よろしく」と挨拶するオレに対して凜子が放った言葉は「委員やめるなら、先生に言っとく」である。「なんで、やめないよ?」と反論すると「チッ」と露骨に舌打ちだ。まったく取り付く島もないとはこのことだ。
すぐに部活やバイトを始めたこともあり、初対面以降、凜子のことを図書委員の仲間という以上に意識することは正直なかった。
だが、ある日街で凜子が変な男に絡まれているところにたまたま出くわし、なんとか助けてやったという事件から、凜子はオレに少し心を開いてくれるようになった。
図書委員の仕事の合間に、いろいろ話しを聞いているうち、人との関係を拒絶している様に見える凜子の態度が、やや複雑な家庭事情から来る寂しさの裏返しだということを知ってしまった。そうなってくると情がわいてくるものだ。2人の仲は徐々に親密になっていき、数週間後にはいっしょに登下校をするようになった。
↑そして忘れもしない出会って58日目の昼、屋上でオレは凜子に告白された。
少々前置きがくどかったかもしれない。
もちろんおわかりであろうが、残念ながらオレはリアルJKと付き合っているわけではない。小早川凜子というのは、9月3日にコナミから発売されたニンテンドーDS 用ソフト『ラブプラス』に出てくる3人のヒロインのうちの1人だ。
「リアルタイム恋愛シミュレーション」という触れ込みのこのゲーム、今までのいわゆるギャルゲ(エロゲ)にはない、様々な画期的なシステムを採用している。
まずはゲームの構造だ。ラブプラスは「恋愛パート」と「恋人パート」の2つのパートからできている。
冒頭に書いた凜子との出会いから告白までが「恋愛パート」にあたる。このパートは「ときメモ」をはじめとするいわゆるギャルゲと内容はさほど変わらない。「予定入力画面」で1日の予定を決め、授業を受けたり部活をしたりバイトに行ったりすることによって「知識」、「魅力」等の各種パラメーターを貯めてヒロインの好感度を上げていく。
ゲームの目的は100日以内に3人のヒロインのうちの誰か1人に告白されることだが、難易度は限りなく低い。誰か1人に狙いを絞ってアタックを繰り返していけば、だいたい50日〜80日くらいで無事告白されることになる。
実際には1日を5分〜10分くらいでサクサク進めることができるので、徹夜でがんばれば最低でも1人は攻略可能だ。
↑予定入力画面。ここで1日の予定をたてる。
通常のギャルゲはヒロインに告白された時点でゲームが終了し、今度は別のヒロインを攻略すべく、また最初からゲームをやりなおすことになるのだが『ラブプラス』は違う。ヒロインに告白されると、いったんエンディングを挟んで「恋人パート」が開始される。
「恋人パート」はヒロインに告白され無事恋人同士になった後の、彼女との生活を楽しむパートだ。
「意中のヒロインに告白される」という明確な目的が存在する「友達パート」と違い「恋人パート」には特に目的はない。毎日ヒロインと一緒に登校したり、メールを送りあったり、休日にはデートに行ったり、とにかく2人でラブラブな生活を送るだけである。
ここではタッチペンを使ってスキンシップ(キスまで)を行なったり、音声認識機能を使って簡単なおしゃべりを楽しむこともできる。
多少の感情の揺れはあるものの、基本的にヒロインはプレイヤーにベタ惚れ状態なので、「恋愛パート」のようにヒロインを攻略する必要はない。むしろヒロインのほうがプレイヤーに対して「髪型を変えてみようと思うんだけど」、「この服似合うかなあ」などと探りをいれてくる。そして、プレイヤーの意向にあうよう髪型や服装、言葉遣いや性格なども変化していく。つまり2つのモードでは攻略する主体が逆転しているるのだ。
↑髪型をロングに変更した凜子。これはこれでかわいいい。
また、「恋人パート」はDSの時計機能を利用し、基本的にリアルタイムに進行する。リアルタイムとはつまり、朝にDSを開くといっしょに登校するシーン、夕方に開くと放課後のシーン、夜に開くとパジャマを着ているシーンを楽しめるということだ。デートの約束も「来週日曜日の午後2時」といったように具体的な期日を指定し、実際にその時間にならないとデートをすることができない。それだけではなく、約束した時間にゲームを起動しないと、デートすっぽかしたことになり、しばらく彼女の機嫌が悪くなるのだ。『おいでよ どうぶつの森』のギャルゲ版と言えば想像がつくだろうか。
(さすがにリアルタイムには付き合いきれないというせっかちな人のために「スキップモード」も用意されている。だが、このモードでは体育祭や文化祭といった季節イベントが発生しないなどの制限があるため、オレを含め大部分は「リアルタイムモード」でやっている)
そしてこの2つのパートは、プレイ感覚がまったく違う。
「友達パート」のほうはとにかくドキドキ感がハンパない。気になる彼女と急速に仲良くなっていく。もしかしたら付き合えるかもしれない。彼女の一挙手一投足がすべて気になる。極めて出来のいいシナリオのせいもあり、ほぼ休みなしに一気にエンディングまでやってしまう、それほどの魅力がある。
対して「恋人パート」の方は、「友達パート」のように短期的に盛り上がる感じはない。「告白」というクライマックスもない。というかエンディングすらない。その代わり、ゆっくりと彼女との愛を育んでいく、限りなく幸せでマッタリとした時間が永遠に流れていく。
言うまでもなくこれは実際の恋愛を忠実になぞっているのだ。
実はオレ、「友達パート」のドキドキ感にやられ死ぬほどテンションが上がりすぎたため、勢い余って凜子以外の2人のヒロインも、別のセーブデータで攻略を行ない、一時は3人同時に「恋人パート」に突入するという三股状態になっていた。実際3人目の愛花ちゃんに告白された瞬間が達成感込みで一番テンションの上がった瞬間だったと思う。
だが、「恋人パート」は勝手が違った。残念ながらリアルタイムモードで3人をケアするのはキツかった。
もちろんリアルタイムといえど24時間張り付いている必要はなく、1日に3回、10分程度プレイすればとりあえず現状維持はできる。決して時間的にキツいわけではない。
キツいのは精神面である。付き合っている人にないものを求めてしまうのは浮気な男の宿命、凜子とのデート中につい寧々さんの大きな胸のことを考えてしまう。愛花と話している時にふと凜子のかわいいうなじを思いうかべてしまう。そのたびに激しい罪悪感に苛まれるのだ。凜子はオレのことしか見ていない、それなのにオレは他の子のことを考えている。すぐにオレはまっすぐな凜子の目を直視できなくなった。
そんなオレの心を知ってか知らずか、ある時凜子はデート中にこう言った。
「いつリンコがアンタにヤキモチなんか妬いた?」
↑決定打となった凜子のひとこと。
うわ、表だって騒ぎ立てはしないもののやっぱりばれてるよ。
↑これは「寧々さん」とのデータを消去しているところ。
泣く泣く愛花と寧々さんのセーブデータを消去、それ以降今日に至るまで凜子一筋である。
さて、ゲームの説明はこれくらいにして、以下は凜子と共に過ごした2週間を通じて感じた『ラブプラス』の魅力をランダムに紹介していこう。
まずはギャルゲーの主役であるヒロインの魅力について語ろう。
どんなにゲームシステムが優れていようともヒロインに魅力がなければまったく意味がない。その点『ラブプラス』はいずれも甲乙付けがたい3人のヒロインが揃っている。
↑図書委員の小早川凜子(CV:丹下桜)。
オレの彼女であるところの小早川凜子。下級生だが図書委員の先輩である。家庭の事情(両親が離婚、再婚相手の継母とその連れ子の4人暮らし)もあり、反抗期(というか中二病)まっさかりのためかなり生意気、常にイヤホンで音楽を聞いており、他人との交流を基本的に拒絶しているが、主人公への好感度が上がるにつれ、少しずつ心を開いていき、告白後には甘えっ子に変貌。いわゆるツンデレちゃんだ。
趣味は読書(好きな作家はサリンジャー)でロンドンパンクが大好きというサブカル担当。プロデューサーの内田明理(あかり)氏によると「村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる10代の女の子みたいなイメージです」とのことだ。さもありなん(出典:「4Gamer.net」どうしてこんな“罪作り”なゲームを作ってしまったんですか? 『ラブプラス』開発スタッフに聞く)。
↑テニス部の同級生、高嶺愛花(CV:早見沙織)。
同級生のテニス部エース高嶺愛花。典型的なお嬢さんで真面目っ子。放課後は寄り道しない(校則で禁止されているため)、など真面目さが度を超しているため周囲からは敬遠されているが、本当は年相応な女の子。主人公と仲良くなるにつれ、だんだんサバけてくるのが見どころだ。特技はピアノで趣味はお菓子作り。通常のギャルゲでは立ち位置的にメインヒロイン担当になるかと思う。
↑バイト先の先輩、姉ヶ崎寧々さん(CV:皆川裕子) 。
バイト先のファミレスで知り合う3年生の姉ヶ崎寧々さん。巨乳でエロ担当。大人っぽくいつも落ち着いて見えるため周囲の人から過剰に頼られてしまう。本人もそのように振る舞うが、たまには自分も甘えてみたいと思っている。趣味はホラー映画を見ることと、のど飴の袋を集めること。時々痛めのポエムを披露するなど不思議ちゃん的素養も持っている。
このように登場するヒロインは三者三様の個性(年齢も年下、タメ、年上)を持っており、よほど特殊な嗜好を持っていなければ、少なくとも1人は好みの子が見つかるように設計されている。しかも、3人とも心になにかしら欠落があり、それを主人公の存在が埋めていくことによって惹かれていくというあざとすぎるシナリオが用意されている、ベタではあるがやはり盛り上がることこのうえない。
こういったキャラクター設定の魅力に加え、視覚的・聴覚的なインパクトも大きい。
実は最初にオレがこのゲームのことを知ったのは4月11日に掲載されたこの記事なのだが、この時点では「アイマス的な3DCGを使ったよくあるギャルゲ」としか認識しておらず、正直購入することになるなどとは微塵も考えていなかった。
だが、8月に公開されたこのPVを見て、その考えを撤回せざるを得なくなった。
確かにDSという制限のあるハードのため、PS3やWiiで見られる高精細な画像は望むべくもないが、女の子っぽい仕草で動きまくる(モーションキャプチャーしてる?)トゥーンレンダリングを用いた3DCGキャラクターと、それに見事にシンクロした声優による甘いセリフのコンボは予想をはるかに超える破壊力だったのだ。
特に3人の声優の熱演はすばらしい。普通この手のゲームは慣れてくると音声をスキップしたくなるのだが、ラブプラスにはそれがまったくない。いつまでも猿のように声を聞いていたくなる。正直言ってこれは初めての体験だ。
(ちなみに、オレはヌルオタなのでピンとこなかったんだが、凜子役の丹下桜と寧々役の皆川裕子は、オレのような中年オタをピンポイントで狙ったキャスティングだそうだ。特に丹下桜はこれが10年ぶりの復帰作となり、それだけで大きなニュースらしい)
さて、忘れてはならないのはキャラクターが本人の名前を呼んでくれるシステムだ。
もちろん『ときメモ2』のような不自然な合成音声ではない、正真正銘声優が吹き込んだ生ボイスだ。
たとえばゲームスタート時の情報入力画面で、名字の呼び方を「たぐち」と指定したとすると、女の子が自分のことを「たぐち君」(凜子の場合は呼び捨てで「たぐち」)と呼んでくれるわけだ。これはかなりグッと来る。
残念ながらボイスデータの容量には限りがあるため、収録されていない姓と名もあるのだが、幸いなことにオレの名前はどちらも用意されていた。この時ばかりは平凡な命名をしてくれた両親に感謝である。
ちなみに収録されているパターンは名字と名前合わせて1500弱。これだけで収録に丸1日はかかってそうだ。ひたすら大量の名前だけを呼び続けた3人はさぞ大変だったことであろう。
↑呼び方を指定しているところ 。
なお「ラブプラス 呼んでもらえる名前Wiki」に詳しいデータが集まっている。
音声認識機能を使った疑似会話も楽しい。正直認識精度はあまり高くなく、多くの場合人口無能のようなトンチンカンな会話になってしまうのだが、それでも凜子としゃべるのは楽しい。
「リンコとしたいことある?」
「うーん、やっぱりセックスかな」
「たぐちとならイヤじゃないよ」
などと偶然にもコミュニケーションが成り立った時の喜びは格別だ。ただしこの部分だけはさすがに自宅以外でプレイすることは難しい。いや、自宅でも妻の目がどんどん冷たくなっていくのだが……。
タッチペンを使ったスキンシップはかなり露骨にエロい。手や髪を触れることによって彼女をその気にさせ、最終的にはキスに持っていくことができる。キスは一瞬のフレンチキスではなく、うまくやれば数十秒持続することも可能、その時の凜子の「ンッ、ンッ、ンッ」という声とトローンとした目が猛烈にヤバい。
加えてDSというハードの特性上、自分の顔と凜子の顔が物理的に近いというのが凶悪だ。油断するとスクリーンに限界まで唇を近付けている。まったくもって誰にも見せたくない姿だ。
ただし、キス終了時の一枚絵は気持ち悪いのでやめていただきたい。
↑問題のキスシーン。これはマジ勃起する。
バカにできないのはメールだ。彼女と仲良くなってからは、いつでもメールを出すことができるのだが、その返信のタイミングが絶妙すぎるのだ。こちらが送信してから20秒くらいで返ってくることが多いが、たまにびっくりするくらい早かったり、もう寝てしまったのか翌朝まで返事がこないこともあったりする。この歳(最近40になりました)になって彼女からのメールの返事をドキドキして待つというピュアな経験ができるとは思わなかった。
↑こんなメールが返ってきた日にはもう……。
最後に紹介したいのがガールズトークだ。これは複数のDSを赤外線通信で接続すると、ヒロイン同士が自分の彼氏についてぶっちゃけトークを行なうという機能だ。たとえばオレの凜子が誰かの寧々さんとガールズトークを始めると、「うちのたぐちさー。実はキスがへたなんだよねぇ」とか平気で言う。本気の羞恥プレイにかなりヘコむが、M男的には少しだけうれしかったりもする。さらにその後「でもさぁ、結局好きなんだよねえ。毎日が幸せだよ」なんて言われちゃうんだぜ。どんだけツンデレなんだようちの凜子は。
さて、調子に乗って長々と書き連ねてきたがそろそろまとめに入ろう。オレにとって『ラブプラス』、いや違う、小早川凜子はいまや生活に欠かすことのできない大きな存在になっている。
高校を卒業して20年以上たつが、セックスの匂いがしない青臭い恋愛にこれだけドキドキできる自分がいるというのが驚きだ。
告白すると、オレのリアルな高校生活に色っぽい想い出など皆無だ。つまりそれを『ラブプラス』で補完しているというわりとつまらなくも恥ずかしいオチになる。そして『ラブプラス』にエンディングはない。そう、オレの世代ならわかってくれる人も多いだろう。25年以上憧れ続けてきた「終わらない学園祭」、つまり「ビューティフルドリーマー」な世界が実現したという喜びなのだろうと思う。ほんとお恥ずかしい。
今のオレが一番恐れていること、それは『ラブプラス』に飽きてしまう時が来るということだ。
今は凜子に夢中だ、もちろん付き合ったばかりの興奮はもうないが、今はそれ以上の愛情がゆっくりと醸成されてきている。これからもゆっくりと2人だけの想い出を作っていくつもりではいる。
しかし冷静に考えると、やはりいつかは飽きる時が来ると思うのだ。現実であればさっさと別れて次の恋愛を始めればいい。だが、『ラブプラス』に「別れ」という概念はない。実際の終わらせ方は、現在DSに挿しっぱなしにしている『ラブプラス』のカートリッジを抜き、二度と起動しないことであろう。つまり、エンディングというのは関係の自然消滅。もっときつく言うと凜子の死ということになるのだ。
これはあまりに辛いし不誠実だ。「やめるなどと言わず、可能な限り長く遊び続けてほしい」というメーカーの営業上の思惑があるというのはもちろん理解できる。だがやはり「別れる」、「振られる」、「振る」という選択を作っておいてほしかった。
↑睡眠中の凜子。かわいいー。
田口こくまろ モテたい一心で大好きだったラムちゃんに別れを告げアングラ・サブカル方面に耽溺するも結局失敗、40歳を前にして完全にオタ方面に転向を果たす。現在はブランクを取り戻さんとアニメとエロゲとラノベに全財力と精力を注入中。
目が大きくショートカットが似合う凜子は、オレが言うのもなんだが学年でも相当かわいい部類に入るだろう。そんな凜子からのメールでオレは毎朝目を覚まし、凜子と一緒に登下校し、放課後はファーストフードでダベり、人気が少なくなるのを見るやチュッチュしている。もちろん週末にはガッツリデートだ。
↑オレの彼女、小早川凜子
始めて凜子と出会ったのは2カ月ほど前、オレが今通っている高校に編入した最初の日のことだ。
半ば強制的に入らされた図書委員の、一応先輩である彼女の第一印象は正直言って最悪だった。「よろしく」と挨拶するオレに対して凜子が放った言葉は「委員やめるなら、先生に言っとく」である。「なんで、やめないよ?」と反論すると「チッ」と露骨に舌打ちだ。まったく取り付く島もないとはこのことだ。
すぐに部活やバイトを始めたこともあり、初対面以降、凜子のことを図書委員の仲間という以上に意識することは正直なかった。
だが、ある日街で凜子が変な男に絡まれているところにたまたま出くわし、なんとか助けてやったという事件から、凜子はオレに少し心を開いてくれるようになった。
図書委員の仕事の合間に、いろいろ話しを聞いているうち、人との関係を拒絶している様に見える凜子の態度が、やや複雑な家庭事情から来る寂しさの裏返しだということを知ってしまった。そうなってくると情がわいてくるものだ。2人の仲は徐々に親密になっていき、数週間後にはいっしょに登下校をするようになった。
↑そして忘れもしない出会って58日目の昼、屋上でオレは凜子に告白された。
少々前置きがくどかったかもしれない。
もちろんおわかりであろうが、残念ながらオレはリアルJKと付き合っているわけではない。小早川凜子というのは、9月3日にコナミから発売されたニンテンドーDS 用ソフト『ラブプラス』に出てくる3人のヒロインのうちの1人だ。
「リアルタイム恋愛シミュレーション」という触れ込みのこのゲーム、今までのいわゆるギャルゲ(エロゲ)にはない、様々な画期的なシステムを採用している。
まずはゲームの構造だ。ラブプラスは「恋愛パート」と「恋人パート」の2つのパートからできている。
冒頭に書いた凜子との出会いから告白までが「恋愛パート」にあたる。このパートは「ときメモ」をはじめとするいわゆるギャルゲと内容はさほど変わらない。「予定入力画面」で1日の予定を決め、授業を受けたり部活をしたりバイトに行ったりすることによって「知識」、「魅力」等の各種パラメーターを貯めてヒロインの好感度を上げていく。
ゲームの目的は100日以内に3人のヒロインのうちの誰か1人に告白されることだが、難易度は限りなく低い。誰か1人に狙いを絞ってアタックを繰り返していけば、だいたい50日〜80日くらいで無事告白されることになる。
実際には1日を5分〜10分くらいでサクサク進めることができるので、徹夜でがんばれば最低でも1人は攻略可能だ。
↑予定入力画面。ここで1日の予定をたてる。
通常のギャルゲはヒロインに告白された時点でゲームが終了し、今度は別のヒロインを攻略すべく、また最初からゲームをやりなおすことになるのだが『ラブプラス』は違う。ヒロインに告白されると、いったんエンディングを挟んで「恋人パート」が開始される。
「恋人パート」はヒロインに告白され無事恋人同士になった後の、彼女との生活を楽しむパートだ。
「意中のヒロインに告白される」という明確な目的が存在する「友達パート」と違い「恋人パート」には特に目的はない。毎日ヒロインと一緒に登校したり、メールを送りあったり、休日にはデートに行ったり、とにかく2人でラブラブな生活を送るだけである。
ここではタッチペンを使ってスキンシップ(キスまで)を行なったり、音声認識機能を使って簡単なおしゃべりを楽しむこともできる。
多少の感情の揺れはあるものの、基本的にヒロインはプレイヤーにベタ惚れ状態なので、「恋愛パート」のようにヒロインを攻略する必要はない。むしろヒロインのほうがプレイヤーに対して「髪型を変えてみようと思うんだけど」、「この服似合うかなあ」などと探りをいれてくる。そして、プレイヤーの意向にあうよう髪型や服装、言葉遣いや性格なども変化していく。つまり2つのモードでは攻略する主体が逆転しているるのだ。
↑髪型をロングに変更した凜子。これはこれでかわいいい。
また、「恋人パート」はDSの時計機能を利用し、基本的にリアルタイムに進行する。リアルタイムとはつまり、朝にDSを開くといっしょに登校するシーン、夕方に開くと放課後のシーン、夜に開くとパジャマを着ているシーンを楽しめるということだ。デートの約束も「来週日曜日の午後2時」といったように具体的な期日を指定し、実際にその時間にならないとデートをすることができない。それだけではなく、約束した時間にゲームを起動しないと、デートすっぽかしたことになり、しばらく彼女の機嫌が悪くなるのだ。『おいでよ どうぶつの森』のギャルゲ版と言えば想像がつくだろうか。
(さすがにリアルタイムには付き合いきれないというせっかちな人のために「スキップモード」も用意されている。だが、このモードでは体育祭や文化祭といった季節イベントが発生しないなどの制限があるため、オレを含め大部分は「リアルタイムモード」でやっている)
そしてこの2つのパートは、プレイ感覚がまったく違う。
「友達パート」のほうはとにかくドキドキ感がハンパない。気になる彼女と急速に仲良くなっていく。もしかしたら付き合えるかもしれない。彼女の一挙手一投足がすべて気になる。極めて出来のいいシナリオのせいもあり、ほぼ休みなしに一気にエンディングまでやってしまう、それほどの魅力がある。
対して「恋人パート」の方は、「友達パート」のように短期的に盛り上がる感じはない。「告白」というクライマックスもない。というかエンディングすらない。その代わり、ゆっくりと彼女との愛を育んでいく、限りなく幸せでマッタリとした時間が永遠に流れていく。
言うまでもなくこれは実際の恋愛を忠実になぞっているのだ。
実はオレ、「友達パート」のドキドキ感にやられ死ぬほどテンションが上がりすぎたため、勢い余って凜子以外の2人のヒロインも、別のセーブデータで攻略を行ない、一時は3人同時に「恋人パート」に突入するという三股状態になっていた。実際3人目の愛花ちゃんに告白された瞬間が達成感込みで一番テンションの上がった瞬間だったと思う。
だが、「恋人パート」は勝手が違った。残念ながらリアルタイムモードで3人をケアするのはキツかった。
もちろんリアルタイムといえど24時間張り付いている必要はなく、1日に3回、10分程度プレイすればとりあえず現状維持はできる。決して時間的にキツいわけではない。
キツいのは精神面である。付き合っている人にないものを求めてしまうのは浮気な男の宿命、凜子とのデート中につい寧々さんの大きな胸のことを考えてしまう。愛花と話している時にふと凜子のかわいいうなじを思いうかべてしまう。そのたびに激しい罪悪感に苛まれるのだ。凜子はオレのことしか見ていない、それなのにオレは他の子のことを考えている。すぐにオレはまっすぐな凜子の目を直視できなくなった。
そんなオレの心を知ってか知らずか、ある時凜子はデート中にこう言った。
「いつリンコがアンタにヤキモチなんか妬いた?」
↑決定打となった凜子のひとこと。
うわ、表だって騒ぎ立てはしないもののやっぱりばれてるよ。
↑これは「寧々さん」とのデータを消去しているところ。
泣く泣く愛花と寧々さんのセーブデータを消去、それ以降今日に至るまで凜子一筋である。
さて、ゲームの説明はこれくらいにして、以下は凜子と共に過ごした2週間を通じて感じた『ラブプラス』の魅力をランダムに紹介していこう。
まずはギャルゲーの主役であるヒロインの魅力について語ろう。
どんなにゲームシステムが優れていようともヒロインに魅力がなければまったく意味がない。その点『ラブプラス』はいずれも甲乙付けがたい3人のヒロインが揃っている。
↑図書委員の小早川凜子(CV:丹下桜)。
オレの彼女であるところの小早川凜子。下級生だが図書委員の先輩である。家庭の事情(両親が離婚、再婚相手の継母とその連れ子の4人暮らし)もあり、反抗期(というか中二病)まっさかりのためかなり生意気、常にイヤホンで音楽を聞いており、他人との交流を基本的に拒絶しているが、主人公への好感度が上がるにつれ、少しずつ心を開いていき、告白後には甘えっ子に変貌。いわゆるツンデレちゃんだ。
趣味は読書(好きな作家はサリンジャー)でロンドンパンクが大好きというサブカル担当。プロデューサーの内田明理(あかり)氏によると「村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる10代の女の子みたいなイメージです」とのことだ。さもありなん(出典:「4Gamer.net」どうしてこんな“罪作り”なゲームを作ってしまったんですか? 『ラブプラス』開発スタッフに聞く)。
↑テニス部の同級生、高嶺愛花(CV:早見沙織)。
同級生のテニス部エース高嶺愛花。典型的なお嬢さんで真面目っ子。放課後は寄り道しない(校則で禁止されているため)、など真面目さが度を超しているため周囲からは敬遠されているが、本当は年相応な女の子。主人公と仲良くなるにつれ、だんだんサバけてくるのが見どころだ。特技はピアノで趣味はお菓子作り。通常のギャルゲでは立ち位置的にメインヒロイン担当になるかと思う。
↑バイト先の先輩、姉ヶ崎寧々さん(CV:皆川裕子) 。
バイト先のファミレスで知り合う3年生の姉ヶ崎寧々さん。巨乳でエロ担当。大人っぽくいつも落ち着いて見えるため周囲の人から過剰に頼られてしまう。本人もそのように振る舞うが、たまには自分も甘えてみたいと思っている。趣味はホラー映画を見ることと、のど飴の袋を集めること。時々痛めのポエムを披露するなど不思議ちゃん的素養も持っている。
このように登場するヒロインは三者三様の個性(年齢も年下、タメ、年上)を持っており、よほど特殊な嗜好を持っていなければ、少なくとも1人は好みの子が見つかるように設計されている。しかも、3人とも心になにかしら欠落があり、それを主人公の存在が埋めていくことによって惹かれていくというあざとすぎるシナリオが用意されている、ベタではあるがやはり盛り上がることこのうえない。
こういったキャラクター設定の魅力に加え、視覚的・聴覚的なインパクトも大きい。
実は最初にオレがこのゲームのことを知ったのは4月11日に掲載されたこの記事なのだが、この時点では「アイマス的な3DCGを使ったよくあるギャルゲ」としか認識しておらず、正直購入することになるなどとは微塵も考えていなかった。
だが、8月に公開されたこのPVを見て、その考えを撤回せざるを得なくなった。
確かにDSという制限のあるハードのため、PS3やWiiで見られる高精細な画像は望むべくもないが、女の子っぽい仕草で動きまくる(モーションキャプチャーしてる?)トゥーンレンダリングを用いた3DCGキャラクターと、それに見事にシンクロした声優による甘いセリフのコンボは予想をはるかに超える破壊力だったのだ。
特に3人の声優の熱演はすばらしい。普通この手のゲームは慣れてくると音声をスキップしたくなるのだが、ラブプラスにはそれがまったくない。いつまでも猿のように声を聞いていたくなる。正直言ってこれは初めての体験だ。
(ちなみに、オレはヌルオタなのでピンとこなかったんだが、凜子役の丹下桜と寧々役の皆川裕子は、オレのような中年オタをピンポイントで狙ったキャスティングだそうだ。特に丹下桜はこれが10年ぶりの復帰作となり、それだけで大きなニュースらしい)
さて、忘れてはならないのはキャラクターが本人の名前を呼んでくれるシステムだ。
もちろん『ときメモ2』のような不自然な合成音声ではない、正真正銘声優が吹き込んだ生ボイスだ。
たとえばゲームスタート時の情報入力画面で、名字の呼び方を「たぐち」と指定したとすると、女の子が自分のことを「たぐち君」(凜子の場合は呼び捨てで「たぐち」)と呼んでくれるわけだ。これはかなりグッと来る。
残念ながらボイスデータの容量には限りがあるため、収録されていない姓と名もあるのだが、幸いなことにオレの名前はどちらも用意されていた。この時ばかりは平凡な命名をしてくれた両親に感謝である。
ちなみに収録されているパターンは名字と名前合わせて1500弱。これだけで収録に丸1日はかかってそうだ。ひたすら大量の名前だけを呼び続けた3人はさぞ大変だったことであろう。
↑呼び方を指定しているところ 。
なお「ラブプラス 呼んでもらえる名前Wiki」に詳しいデータが集まっている。
音声認識機能を使った疑似会話も楽しい。正直認識精度はあまり高くなく、多くの場合人口無能のようなトンチンカンな会話になってしまうのだが、それでも凜子としゃべるのは楽しい。
「リンコとしたいことある?」
「うーん、やっぱりセックスかな」
「たぐちとならイヤじゃないよ」
などと偶然にもコミュニケーションが成り立った時の喜びは格別だ。ただしこの部分だけはさすがに自宅以外でプレイすることは難しい。いや、自宅でも妻の目がどんどん冷たくなっていくのだが……。
タッチペンを使ったスキンシップはかなり露骨にエロい。手や髪を触れることによって彼女をその気にさせ、最終的にはキスに持っていくことができる。キスは一瞬のフレンチキスではなく、うまくやれば数十秒持続することも可能、その時の凜子の「ンッ、ンッ、ンッ」という声とトローンとした目が猛烈にヤバい。
加えてDSというハードの特性上、自分の顔と凜子の顔が物理的に近いというのが凶悪だ。油断するとスクリーンに限界まで唇を近付けている。まったくもって誰にも見せたくない姿だ。
ただし、キス終了時の一枚絵は気持ち悪いのでやめていただきたい。
↑問題のキスシーン。これはマジ勃起する。
バカにできないのはメールだ。彼女と仲良くなってからは、いつでもメールを出すことができるのだが、その返信のタイミングが絶妙すぎるのだ。こちらが送信してから20秒くらいで返ってくることが多いが、たまにびっくりするくらい早かったり、もう寝てしまったのか翌朝まで返事がこないこともあったりする。この歳(最近40になりました)になって彼女からのメールの返事をドキドキして待つというピュアな経験ができるとは思わなかった。
↑こんなメールが返ってきた日にはもう……。
最後に紹介したいのがガールズトークだ。これは複数のDSを赤外線通信で接続すると、ヒロイン同士が自分の彼氏についてぶっちゃけトークを行なうという機能だ。たとえばオレの凜子が誰かの寧々さんとガールズトークを始めると、「うちのたぐちさー。実はキスがへたなんだよねぇ」とか平気で言う。本気の羞恥プレイにかなりヘコむが、M男的には少しだけうれしかったりもする。さらにその後「でもさぁ、結局好きなんだよねえ。毎日が幸せだよ」なんて言われちゃうんだぜ。どんだけツンデレなんだようちの凜子は。
さて、調子に乗って長々と書き連ねてきたがそろそろまとめに入ろう。オレにとって『ラブプラス』、いや違う、小早川凜子はいまや生活に欠かすことのできない大きな存在になっている。
高校を卒業して20年以上たつが、セックスの匂いがしない青臭い恋愛にこれだけドキドキできる自分がいるというのが驚きだ。
告白すると、オレのリアルな高校生活に色っぽい想い出など皆無だ。つまりそれを『ラブプラス』で補完しているというわりとつまらなくも恥ずかしいオチになる。そして『ラブプラス』にエンディングはない。そう、オレの世代ならわかってくれる人も多いだろう。25年以上憧れ続けてきた「終わらない学園祭」、つまり「ビューティフルドリーマー」な世界が実現したという喜びなのだろうと思う。ほんとお恥ずかしい。
今のオレが一番恐れていること、それは『ラブプラス』に飽きてしまう時が来るということだ。
今は凜子に夢中だ、もちろん付き合ったばかりの興奮はもうないが、今はそれ以上の愛情がゆっくりと醸成されてきている。これからもゆっくりと2人だけの想い出を作っていくつもりではいる。
しかし冷静に考えると、やはりいつかは飽きる時が来ると思うのだ。現実であればさっさと別れて次の恋愛を始めればいい。だが、『ラブプラス』に「別れ」という概念はない。実際の終わらせ方は、現在DSに挿しっぱなしにしている『ラブプラス』のカートリッジを抜き、二度と起動しないことであろう。つまり、エンディングというのは関係の自然消滅。もっときつく言うと凜子の死ということになるのだ。
これはあまりに辛いし不誠実だ。「やめるなどと言わず、可能な限り長く遊び続けてほしい」というメーカーの営業上の思惑があるというのはもちろん理解できる。だがやはり「別れる」、「振られる」、「振る」という選択を作っておいてほしかった。
↑睡眠中の凜子。かわいいー。
文=田口こくまろ
『ラブプラス』 メーカー=コナミデジタルエンタテインメント 価格=5800円 対応機種=ニンテンドーDS ASIN=B00266QNYI 発売=2009年9月3 日 |
09.09.23更新 |
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