special issue for happy new year 2011.
2011新春特別企画
四日市 × ターHELL穴トミヤ〜初顔合わせ対談:2010年を振り返る【後編】2011年お正月企画第2弾はエヴァンゲリオン研究家の四日市さんとヒーマニストのターHELL穴トミヤさんが初顔合わせ! 趣味嗜好の異なるお二人に2010年を振り返っていただきました。本日は後編の掲載です!
四日市:2010年とコスプレ願望と言うと少しズレますが、アニメの造形感覚がだいぶ現実のファッションにも振れてきたように思います。渋谷や原宿を歩いていると「らき☆すた」のつかさのようなリボンが増え、oioiを歩けば少女漫画のコスプレ衣装かと思うような服が多々伺えました。今年の流行は「耳」だそうで。若者のファッションは当然、若者に向けられたものなのだから、これは若者の消費するコンテンツだとかファッションだとかが牽引しているのではなく、お互いがからみ合って螺旋のように作られたムーブメントだと思いますね。はい。
ターHELL:若者が、自己完結し始めたと! 若者の大人離れが進んでいるということでしょうか?
ターHELL:実在しないというのが重要なんですね。
四日市:エヴァンゲリオンの悲願が達成されてきてるんじゃないですか。アニメやドラマが現実の地続き、「ありえない、けれどもあるかもしれない」だの「これは僕の話だ!」なんてところから、全く切り離された物語になっている。これは2010年の話というより、00年代後半の傾向な気がしますけどね。みんな現実に帰った。アニメや漫画で言うなら、どんどん男性主人公がなくなって女の子ハーレムが増えてきているのもそこら辺があるような気がする。その反面、これは女の子って設定がつけられているだけで男そのものであからさまに感情移入の対象だよな、ってのもありますが。
ターHELL:女の子しかいないみたいな? 女の子ばかりのアニメが増えた理由って言うのはなんかあるんですかね。
四日市:アニメはアニメって割り切れた見方ができるようになったこと、あとはちんこが切断されただけじゃないですかね。エロ同人誌を描く人はちんこ不足で困ってるんじゃないですか。
ターHELL:男がそもそも原作に一人も出てこないという?
ターHELL:それって新ジャンルとして、女の子しかいない大地が発見されたみたいな感じなんですか?
四日市:うーん。 アニメはアニメだし、そこに自分がいるわけじゃないし、という普通の楽しみ方が出来てるだけかな。 エヴァ「破」で「シンジさん」って呼ばれた現象がある。あとさっきの「とある魔術の禁書目録」の上条さん。他人なんですよね。
ターHELL:憧れ、同一化の時代が終わったと言う感じなんでしょうか?
四日市:そういう感じかな。
ターHELL:なんか大人だなー。それとも生活に余裕がなくなっただけとか?
四日市:物語に自分を仮託しない、というか。
ターHELL:じゃあ、逆に耳がついてる服を着てても、その服に物語性は無いという。
四日市:コスプレはなりきりじゃないですか。
ターHELL:はい。
四日市:で、秋葉原の路上で見かける女装の魔理沙がなりきってるか、って全然なりきってない。まあ、女装で出歩いてる人たちは奇行なので同じに並べることはできないかもしれないけど。耳のついたファッションについてはかわいい、ってのはあると思うんですけど、そこには「かわいい or NOT かわいい」しかない。「椎名林檎みたいな」とか、そういうのはない。インターネットのせい、もあるかもしれませんね。
ターHELL:インターネットのせいっていうのは?
四日市:インターネットでは簡単に他人になれる、というのはよく言われることですけど、Twitter、mixi、GREE、モバゲー、サービスごとにキャラを使い分けたり、コミュニティ別にキャラを分けるなんて当たり前にやっていることだと思う。この感覚は現実にも当然持ち込まれる。90年代の自分探しって例えば学校と家族でペルソナを使い分けて「これは本当の私ではない」と言うことで、本当の私ってなんだろう、って。物語の中に求めてみたりしたって部分はあると思う。ただむちゃくちゃな数のキャラを使い分けて、あちこちで、そんなにつらい思いをすることもなく、和気藹々とやれたら本当の自分がどこかにいるはず、なんて感覚は消失するんじゃないですかね。キャラなんてのはいくらでも作れるし、結局演じているのは自分だ、って感じかな。スタイルシートで全く見栄えが変えてあっても、根本で動いてるのはMTなんですよ。ソーシャルコミュニケーションって楽しいし、楽しい上にかつそういうものを自覚せざるをえない仕組みを内包している、と今思いついた。今、な!
■「ジブリ汗まみれ」が面白い
ターHELL:最近、iPod落としたんですけど、それでpodcast全然聞かなくなっちゃったんですよ。
四日市:最近podcast聞いてるって話かと思ったら聞いてないって話ですか。
四日市:はい。
ターHELL:今日は、今までの全エピソードをプリントアウトして持って来たんで!!! それをいじくりながら「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」を振り返りたいんですけど。それで、まず説明すると 「ジブリ汗まみれ」っていうのは完全に鈴木敏夫の個人ラジオなんですよ。で、宮崎駿には内緒で放送してるっていう前提があって。それで柱が4つあるんですけど、まず1つ目が野球。鈴木敏夫が熱狂的な中日ファンなんで、その話をひたすらしてるっていう。僕は全然野球に興味ないんでこの回はおもしろくないんですけど。
四日市:俺もスポーツは全く興味がないので勘弁していただきたいですね。
ターHELL:で、もう1つは新作映画発表前後の番組群で、声優の子がゲストだったり、宣伝部の人が来たりして、新作映画について語るという。これも、まあ製作秘話とかおもしろかったりもするんですけど、そこまでじゃない。でもう1つが、これがメインで、毎回鈴木敏夫が気になる人をゲストに呼んで自由に喋るっていう。大体、時事とか、社会状況についてなんですけど。これは学者、作家、歌手、取引のある会社の広報から、ただの同級生まで、人も内容も幅広くてかなりおもしろいんですね。
四日市:どんな人がいたんですか。
ターHELL:三池崇監督とか、中沢新一。あと、宮本茂とか。鈴木敏夫が最近の疑問をぶつけて、答えてもらったりしてるんですけど、それが企画会議を聞いてる感じで「ああ、こうやってジブリの新作決めてってるのかなー」みたいな。しまおまほを呼んで、じいちゃんとばあちゃんについてずっと聞いてる回もありましたね。なんか文学者なんですよね、有名な。
四日市:しまおまほ。『死の棘』の島尾敏雄さんのお孫さんですね。
四日市:マジで!
四日市:その人もおもしろいけどターHELLさんがおもしろいと思うポイントも俗でいいですね。
ターHELL:鈴木敏夫さんが俗なんですよ! そこの浮世離れした宮崎駿との対比がまた面白いんですけど。で、最後の4本目が、宮崎駿欠席裁判ですね。この回は最高で、駿監督の近しい知り合いが出て、ダークサイドを語るという。その筆頭は押井守なんですけど。
四日市:「押井守軍団がれんが屋に!?」ですね。軍団ってのは?
ターHELL:誰だったかな…プロダクションIGの石井さんとか。「最も尊敬する人物は押井守」とかいうライターの野田真外もいましたね。
四日市:どんな話をしていたんですか。
四日市:ああ。あれライバル意識あったのか……。
ターHELL:戦ってたのかみたいな。で、鈴木敏夫が「全然良くないじゃん!」とか言ってて。そこで押井守が「映画の見方が分からない人に説明してもしょうがないんだよ!」って、まあ逆切れするのがハイライトなんですけど。鈴木敏夫的には「アバターのあそこはナウシカじゃん!」とか言ってて、やっぱり本人もそう思ってたんだと思いつつ…で宮崎駿も批判しつつ、鈴木敏夫ともケンカになるっていう。この回は大満足ですね。ちなみに四日市さんはジブリはどうですか?
四日市:好きですよ。アリエッティは本当につまらなかったナァ。
ターHELL:ほんとにネェ。曲もださかった。まさかの難病系映画でしたね。
四日市:難病っていうかなんかもう。っていうか、またあのパターンじゃないですか。原作むっちゃ長いのに、その頭だけ。あとあれね、ヒロイン、つまりアリエッティの髪型がボブカットにならなかった。ジブリたるものボブカットなんですよ。最初はロングでも最後にはボブになってるでしょう。ラピュタとか。ムスカに撃たれて。
ターHELL:確かに言われてみればそうですね!
四日市:最初に人間の家に忍び込んだ時はすごくワクワクしたんだけどなー。
ターHELL:ボブカットって言うのは、宮崎駿の「女子たるもの活動的で元気でなくちゃいかん!」という哲学が反映された髪型なんですかね。
四日市:あとエヴァンゲリオン効果が起きてなかったのはすごいと思った。エヴァンゲリオン効果ってのは、シーンによってエヴァがビルより大きかったり、ビルより小さかったり、大きさがまちまちって奴ですね。
ターHELL:僕が唯一よかったのは、あのおもちゃの家の中に使い終わった小人の家具があって、それを見つけた母親が「やっぱりいたんだー」って言うシーン。ただ全体的に、とにかく繋ぎのリズム感が悪いのが気になりましたね。
四日市:いいシーンと言えばお父さんのハンダ付けですね。あんなにかっこいいハンダ付けは今まで見たことがない。お父さん、怪我してくれて本当によかった。あのお父さんがいたらなんでも解決してくれそう。あいつが怪我してくれなかったら「こんな問題、あのパパがいればあっさり解決できるだろ」って思ってしまう。
ターHELL:一番の不満は、監督が普通の人ってとこで、ジブリはやっぱ奥に病んだモノが見えるのがよくて、アリエッティにはそれがなかった。やっぱ宮崎駿みたいに人格が破綻してたりしてないとおもしろくないんだって凄く思いましたね。宮崎駿の作品には全部そういう歪みがあって、そういうところでハッと心を突かれる。まあその歪みを逆サイドからサンドイッチして楽しめるのが「ジブリ汗まみれ」なんですけど。っていつの間にかアリエッティの話になってたんで、無理矢理まとめてみましたけど!
四日市:宮崎駿の人格はともかく、アニメーションの快楽というものをあの人はわかっていて、すごく気持ちの良い映像を作ってくれる。アリエッティはそこまでのものがなかったなあ。
■2010年最大のホットトピックとは!?
四日市:俺としては夏コミで同人誌を出せたことですかねえ……。
四日市:デケデケデケデケデケデケデケデケ……。
ターHELL:そう!あれ!「ンぉーふ ンぉーふ」あれはかなり良くなったと思ったんですけど。
四日市:検索したら出てきた……NO MORE 映画泥棒すら盗まれているインターネットの底知れぬ恐ろしさ。 バックトラックが研ぎ澄まされてますよね。
ターHELL:そう! かかった瞬間に「お!」って思いましたよ。曲も前のに比べて微妙に曲が間抜けRemixされてていいんですよね。
四日市:これのRemix集だしたいですね。おい!!!ファンによる二次創作だぞ!!!!
ターHELL:映画が真似されています! 新作も見たいですね。1年に1本作るべきですよ! 2011年に新しくならないですかね。でも今観ると、映画泥棒のビデオカメラもう結構旧式ですね。
四日市:新キャラも増えたし、これで1本つくってもいい。
ターHELL:映画泥棒が風呂入ってたりして。レンタル屋でビデオ選んでたり。普段は普通に映画ファンみたいな。
四日市:それをコピーしてるのか。 ファンゆえに映画泥棒になってしまった、という悲哀が欲しい。
ターHELL:ハイビジョンで映画を盗む、頭の形がもっとかっこいい新しい奴が出て来たりして。
四日市:俺は昔ながらの盗み方をするんだ、ってガンコ泥棒が描かれて。まとめて逮捕。
ターHELL:いいなー。
四日市:NO MORE 映画泥棒が盗まれていますって動画も出てくるべき。
四日市:どんどん深い階層に落ちていって「NO MORE 映画泥棒の二次創作をパロディしたNO MORE 映画泥棒」を撮ったり。どこに著作権があるのかわからなくなる。
ターHELL:当然「NO MORE 映画泥棒が盗まれています」っていう動画はNO MORE 映画泥棒の前に流れる訳だから、どんどん長くなるし。
四日市:本編が始まる頃にはもう2,3時間が過ぎてる。すごい、時間が伸びるし、インセプションだ。
ターHELL:本編始まるまでに、もう色んなタイプの「NO MORE 映画泥棒物語」が何十回も始まったり終わったりするの観せられてますから、いざ本編観終わっても、俺はほんとに映画観終わってるのかなみたいな。
四日市:2011年に託すことがまさかNO MORE 映画泥棒の新作とは……。
ターHELL:これだけ増えたマナー広告は、これから洗練化されていくしかないわけですから! 映画が率先して洗練しないで、何が率先するんですか、四日市さんもがつんと言ってやってくださいよ!
四日市:ニコニコ動画の時報もうざいうざい、と言われ続けたら「どうせ、時報女です」とか自分の扱いを踏まえた上での変化球を投げてウケているわけだし。マナー広告や公共の広告にもそういうセンス、ほしいですね。
ターHELL:そう、そんな革新的なマナー広告がもっと早くみたい! 関係者は2011年バージョンのNO MORE 映画泥棒を、一刻も早くYoutubeにリークすべきですよ!
四日市:Winnyでもいいよ!
文・構成=四日市・ターHELL 穴トミヤ
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