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毎週日曜日更新!
短期集中連載
永山薫×安田理央
対談『アダルトメディアの現在・過去・未来』【4】


構成=編集部
アダルト写真雑誌、AV、エロマンガ……内部に様々な文化的要素を包括しつつ、その商業形態を劇的に変化させているアダルトメディア。出版不況とインターネット産業の相克の中で、今、見据えるべきポイントはどこにあるのか。漫画評論家・永山薫氏とアダルトメディア研究家・安田理央氏が、素肌と脳で感じているアダルトメディアの状況を縦横無尽に語り尽くす! 大ボリュームの短期集中連載、毎週日曜更新です。

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永山薫
1954年大阪生まれ。近畿大学卒。80年代初期からライター、評論家、作家、編集者として活動。エロ系出版とのかかわりは、ビニ本のコピーや自販機雑誌の怪しい記事を書いたのが始まり。主な著書に長編評論『エロマンガスタディーズ』(イーストプレス)、昼間たかしとの共編著『マンガ論争勃発』『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)がある。

安田理央
1967年埼玉県生まれ。美学校考現学教室卒。エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。メディアとエロの関係を考察することがライフワーク。主な著作に『エロの敵』(雨宮まみとの共著 翔泳社)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)『デジハメ娘。』(マドンナ社)など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。
多少規制問題とも絡んでくるんですけど、
児童ポルノの規制の話でも漫画のほうでは結構反応が出てた。
一方で、 実写のほうの業界の反応はほとんど見えない。
その話を知り合いとしてて、どうなの?って。
写真家の団体とか、なんで黙ってるの?(永山)
永山(以降「永」) メディアがこれからどう変わっていくか、というのはあるんだよね。

安田(以降「安」) 漫画を携帯でっていうの、若い人には受け入れられて来てるんですかね。

永 受け入れられてきてるみたいですよ。ただ課金されるものについては、それほどでもない。サンプル的なものは、もの凄いみられてます。だから携帯コミック全体を10あるとしたら、そのうちの8とかは無料部分らしいです。今年、取材したり講演を聞きにいったりしてて面白いなぁと思ったのは、女子高生をリサーチしてる会社社長の講演。2007年までは女子高生の携帯の使用……何のために使用するかっていうと、一位がメールだったんですよ。それが一年経ってみたら逆転してて、ネットのコンテンツのほうに完全に様変わりしてる。つまり携帯小説読んだりとか、携帯で漫画みたりとか、掲示板利用したりとか、そっちのほうに中心が動いてる。だからそれは当然機器の進化っていうのもあるでしょう。

安 携帯は基本のインフラとして定着してますから、そこで何をするかっていうことになってると思うんですけど、紙の本っていうのは要りますか?

永 紙の本はどうなんだろうね。雑誌自体はそういう意味では、携帯のネットコンテンツにある程度取って代わられてくんじゃないかっていう気がします。

安 雑誌の存在自体が難しいですよね。

永 まさに雑誌の雑ってさ、さっきも言ったけど、余計なもんくっつけてるわけじゃないですか。その雑誌買ったって、自分がホントに欲してるものっていったら、180ぺージの雑誌だったら、そのうちの10ページくらいしかない。ホントに読みたい記事って、一本か二本で、あとはおまけで読んでるわけですから。

安 前はそれが当たり前だったけど今はそれだと怒るんですよね、消費者の方々が。いらないよって。まあネットだと見たいとこだけピックアップして読む形ですからね。

永 そうです。だからネットニュース見てれば事足りちゃう。

安 こっち側にいると商売のこと考えちゃうんですけど、自分で見るとネットでいろいろ見るほうが雑誌読むより楽しいんですよね。

永 楽しいですよ。だって複数の雑誌の記事を観れちゃうわけだから。

安 変なものもいっぱいあるし。だから買わねぇよな、雑誌(笑)。自分もやっぱりだんだん買わなくなってきてますし。そりゃ自分たちも買わないんだから売れるわけない。

永 だって北野誠の例の一件(※24)なんかも、普通のニュース見て、さらに検索したら村西さんがこんなこと言ってるとかさ、「2ちゃん」でこういう噂が流れてるとかさ、そこまで見れちゃう。それは週刊誌とか厳しいですよ。

安 お金払わないでこんな面白いのに、払ってつまんないんだったら買わないですよ、それはね。とか言っちゃうと自分たちの首を絞めるだけなんですけど(笑)。買わないよなぁって思っちゃいますよね。

永 思いますよ。だってネットで見て、文春でこんな記事出てるっていう情報があったら、とりあえず図書館行って(笑)、文春の最新号見て、必要とあればそこでコピーとって、10円とか20円でそれで十分OKっていう。どこにお金が発生すんの?って。プロバイダーのお金だけですよね。電気代とかさ、そんなのになっちゃう。だからユーザーとしては素晴らしい時代なんですよ。

安 それこそエロだってね、あれだけ見たかったオマンコがいくらでも見られるわけですから、こんな幸せなことはないんですけど。女の子の質も高いですしね。

永 変態というか、かなりマイナーな趣味でも探せばありますからね。あぁこんな趣味がっていうのが結構ありますから。

安 ネットとか今の状況を憂う部分もあるけど、一ユーザーとしては素晴らしいって思っちゃうところが難しいんですよね、これ(笑)。

永 さっきも言ったみたいにどっかでお金が回るシステムを、ユーザーは恐らく絶対そういう発想はないから、コンテンツホルダーの側が考えないとダメでしょう。

安 全員みんなアマチュアになっちゃえばいいかなとか思うんですけどね、みんな副業。

永 みんな副業で、その代わりそれがたとえばダウンロードされたら、一回につき5円とか入ってくる。

安 そう、それくらいの。基本的に「2ちゃん」のスレとかもそうですけど、ただでやってるじゃないですか、みんな。情報共有してるんで。もうプロなしっていうのも一つのやり方かなとも思うんですよ。みんな同人誌。

永 みんなセミプロになればいい。それこそ自分のブログのページが、ページビューでお金入ってくるとかさ。

安 それで食おうとしちゃいけないっていう。お小遣い制だと思って。そうしちゃえばいいかなと思うんですけど。

永 でもやっぱ、アルファブロガーとかなったら、アフィリエイトが結構利いてきますよね。

安 でもそれほど大したことはないんじゃ……。

永 稼ぐ人は月平均、5万くらい入ってくるそうですね。

安 5万じゃ食えないじゃないですか。

永 食えないけども、十分足しにはなりますよね。

安 だから副業として。クリエイトはすべて副業。

永 自分の趣味に全部使えますからね。三万とか五万とか入ってくれば。

安 そうですね。だけどAVって、アマチュアがいないんですよね。ハメ撮りとかをやってる人はいますけど、AVという作品を作るアマチュアっていない。だから……。

永 ホントの意味でのインディーズがいない。

安 そうなんです。漫画をアマチュアが描くとか、アマチュアバンドとか、そういう存在っていうのがAVってない。あくまでも仕事の上で成り立ってる部分があって。それで作品性とかうんぬん言うのって、ちゃんちゃらおかしいなって思う時もあるんですよ。はじめっから商売じゃんと。

編 裸にするならビジネスだっていう。

安 そうなんですよ。要するにモデル代かかっちゃうっていうのが必然的にあるんで。アマチュアがいない世界。そこが他のジャンルと違うなと。その時点でもう文化って言っちゃいかんなと思うんですけどね。

永 うん。

安 だからみんな売れないからってやめちゃうし。あくまでもみんな仕事としてしか考えてないんで。

永 コスプレのDVD作ってるとこがありますよね、同人ショップに置くような。

安 はい。今ダウンロードで結構出てますね。あれもなんか商売臭いんですよね。

永 うん、商売臭いですよね。

安 どうしても、実写エロって商売の臭いが。エロ漫画はアマチュアがいるじゃないですか。

永 漫画とかの強みっていうのは一人でできるっていう。

安 そうですね。

永 一人で空いた時間にちょこちょこできるっていうのは大きいですよね。

安 でもそれは表現したいっていうか、したくて描くじゃないですか。撮りたくて撮る人はいないんだなぁって思って。

永 撮りたくて撮る人は結局芸術のほうに行っちゃう。自主映画的な方向に行っちゃったりとかするけど、自主AVっていうのが……。

安 インディーズではあるんですけど、でもそれも撮りたくて撮るっていう感じじゃないんですよね。やっぱ商売っていう前提があって。金稼ぎが基本っていうとこがあって、他のジャンルと比べるとつまんないな、違うなって。たとえばエロ漫画描いてる人って、エロ漫画読むじゃないですか。AVやってる人って、AV観ないですよね(笑)。そのへんが結構つまんないなって思いますね。
『制服絶叫フルコース』 監督=中野D児 製作=2003年 レーベル=NOIR メーカー=シネマジック


永 好きじゃないのかな。

安 好きとかいうけど、ホントは好きじゃないんじゃないかって思いますね。

永 他のAV観てる人って、AVライターで監督もするようになった人とか観てますよね、きっと。

安 それも勉強的な見方のような気がしますね。ホントに好きで観てるって感じじゃないですよ。

永 どうだろう、僕の知り合いだと、中野D児さんとか、斉藤修さんとか、ああいうのはもう、最初から好きだよね。好きが高じて、プロになっちゃったみたいな感じなんだけど。

安 その辺の人はいますけどね。あと今、二村ヒトシさんとか。……やっぱ、少ないですね。昔、アダルトCD-ROMが出た時に、これは面白いんじゃないかと思って、かなり期待して原稿もいっぱい書いてたんですけど、アダルトCD-ROM作ってる人もアダルトCD-ROM観ないんですよ。ゲームとちょっと近い位置ではあるんですけど、エロゲー作ってる人はエロゲーをやるし、買う。
『 ブッとびフィストトランス 』 監督=斉藤修 発売=2007年11月 レーベル=ECSTACY メーカー=REAL 
でもアダルトCD-ROM作ってる人は観ないなぁって。そう思って気がついてみると、実写エロの人はみんな仕事でしかやってない。

永 そうなんだよね。だからね、多少規制問題とも絡んでくるんですけど、児童ポルノの規制の話でも漫画のほうは結構反応出たりするんですけど、実写のほうの業界の反応はほとんど見えないですよ。その話を知り合いとしてて、どうなの?って。写真家の団体とか、なんで黙ってるの? 芸術の方面でも少女のヌードとかあるわけじゃない。エロ目的ではなく高尚な。表現として幅狭められることになるから、写真家の団体なりは声明発表してもいいようなもんだけどって言ったら、いやそれはないでしょうって言われて(笑)。仕事だからみたいな、ほとんどが。

安 仕事で考えるとしたら、規制かかったら規制かかんないとこ狙うほうがいいんですよね。それが表現したいわけじゃなかったりするんで。

永 しかもカメラマンっていうのは一部の人を除いて、自分の作品自体大事に思ってないから。ポジとか捨てちゃうしみたいな(笑)。

安 版権がどこにあるかわかんなかったりするんですよね。モデル事務所の問題があったりとかで。その辺がだいぶ違うんですよね。AVの監督だって、監督は自分の作品の版権持ってないですから。自分の作品もまったく使えないっていうのがあるんで、
『ギプス\x87U』 監督=二村ヒトシ 発売=2009年3月 メーカー=HMJM
他のジャンルとは違いますね。それがいいところでもあるし悪いところでもあるっていう感じ。漫画のほうがやっぱり……エロ漫画でも同じですよね、権利関係は他の漫画と。

永 ええ。

安 AVは完全に会社のものですから。

永 それは契約書に書いてあるんですか?

安 契約書ないです。

永 それはね、厳密に言うとですね、出てる人にも、撮ってる人にも、カメラマンにも、ホントは全部に権利がかかってるんですよね。

安 はい。

永 裁判やったらその辺はっきりすると思うんだけど、まあそういう裁判ないし。

安 したくないですからね。

永 契約書もないから。実はその版権版権って言ってるけども、厳密に言っちゃうとそれを展開した時に監督のもとにもある程度のパーセント、ホントは入んないとおかしいんですよ。

安 モデルは今、契約書書くよね。

編 だいたい書きますね。

安 監督とかにはないですね。ライターもそうですけど、くれたりくれなかったりで(笑)。

編 永山さんも昔からエロ本でライターをなさっていて、結構無法地帯だったんじゃないですか。勝手に載せたりとか。

永 なあなあのもたれあいの部分が強かったっていうのもあるし。

安 それがいいところでもあるんですけどね。特にあと、他のジャンルと違うなって思うのは、たとえばAVって、再販した時、女の子の側はイヤだろうなっていうのがある。普通の作品は再販されれば出演者は嬉しいと思うんです、お金以外でも。だけどエロの場合は、女の側としてはもう出して欲しくないって、大体思ってるわけじゃないですか。たとえば僕が昔のものを紹介する時でも、考えちゃうことあるんですよね。文化として考えるならば昔のものとか、これよかったっていうの紹介したいんですけど、引退してる女の子たちを傷つけちゃうことになっちゃうのかなと。

永 そもそも出てる女の子たちはホントの意味での女優とか表現者っていう意識はないんですよね。

安 そうですね。それを喜ぶ人も一部にはいるだろうけど、女の子にとっては隠しておきたい。僕なんかもAVの歴史とか好きでやりたいんだけども、時々そのこと考えちゃうんですよね。喜ばれないことでもあるなと。

永 今の現役の人だったらね。

安 それは全然いいんですけどね。そういうこと考えると、アーカイブ的なものっていうのは難しいなと。

永 難しいですよ。

安 他のジャンルはいいなぁとかって思う時ありますよ(笑)。




AVのエロ抜きがないんですよね。
漫画とエロ漫画はつながってるじゃないですか。
だけど映画とかテレビとAVは繋がらないんですよね、表現として。
まったく違う世界だから―― (安田)
永 若い人のオナニーどうしてんのって、突きつめてあんま聞いてないんで、聞いてみたいですね。

安 AVに関していうと、本来オナニーツールでいいっちゃいいんですよね。そこに余計なもんつけるほうが間違ってて。漫画としてはどうなんですか。エロ漫画はオナニーツールなんですか。

永 三流劇画の時代はまだオナニーツールっていう要素が強かったのかもっていう仮説を立てることはできます。それは消費の形を見るとね、三流劇画とそれからレディースコミックっていうのは雑誌は出ても単行本はあんまり出ないんですよ。

安 ああ。

永 つまり今はもうほとんどみかけなくなったけど、結局お父さんお母さんが、買っても家には持ちこまないもの。ペンギンの箱(有害図書回収ポスト)とかそういうとこに入れちゃう本だったわけですよ。
「白ポスト」「ペンギンの箱」などと呼ばれている有害図書回収ポストの一例(「吉野川市青少年育成補導センター」より)
ところがロリコン漫画が出てきて美少女系が主流になると、単行本が売れる――売れてた時代にはよほどのことがない限り単行本が出てた。だから単行本をみんな買うと。そういう消費の形を見ると、オナニーツールにコレクターズアイテム的なものがくっついてきた。コレクターズアイテムっていう消費の形が出てきて、やはり漫画を読む楽しみっていうのがそこにはっきり出てくる、とは思います。

安 単行本を買うっていうのは、ちょっと特別な感じありますもんね。その作家のを買うっていうことで、作家性がそこにありますから。今は漫画として、エロの要素もある漫画として読まれてるものが多いんですか。

永 いや、やはりそこはハードなもののほうが強いことは強いでしょう。オナニーツール的な消費のされ方はやはり大きいんで。大きいっていうかそっちが主でしょう。

安 でも単行本で買うんですよね。

永 買いますね。

安 単行本で買うけど、オナニーツール。

永 うん。

安 それはやっぱ作家性っていうか、この作家がエロいから好きっていう感じなんでしょうか。

永 それはありますね。生き残っていくやつはそうですよ。ハードなだけではなくて、作家性がちゃんとあって、この人でなければ――みたいなものがある人は生き残っていくんですよ。

安 ある程度ストーリー性があるとか、そういうほうが生き残り易い?

永 そこは作家によって違ってくるんだけど。ストーリー性という部分と、あと表現の巧みさとか。はっきり言っちゃえばエロ描写うまいとか。その辺も関わってくるんで、一概にはストーリー性ってことは言えないし、今のようなエロをノルマとするような編集者が多い状況では、ストーリーの部分にそんなページを割けないとか、シチュエーションに凝れないとかは当然あるので。ただその枠の中でちゃんとストーリー性とか、テーマ性とか、やれる人は強いです。だから今エロ漫画で売れている人たちっていうのは、今すぐ一般誌のほうに移っても十分やっていける人。

安 結構いますよね。

永 結構います。実際萌え系とかが一般誌のほうへすぐ引き抜かれるし。

安 やっぱり漫画家としての地力がある人のほうが、売れる漫画家になりやすい。エロ漫画家でも。

永 なりやすい。

安 でも……AVからは、行く人いないからなぁ。AVのエロ抜きがないんですよね。漫画とエロ漫画はつながってるじゃないですか。だけど映画とかテレビとAVは繋がらないんですよね、表現として。まったく違う世界だから。

永 だから今の一般誌の漫画なんか見てても、これで3ページくらいの本番シーン入ってたら、十分エロ漫画だっていうのがいっぱいありますよ。でも一般誌だからそこの部分はぼかされたり、割と簡略に処理されてたりするんだけども。そこの部分をもっと長くすれば十分エロ漫画。

安 エロ漫画は漫画と繋がっているから、そうなるんですよね。

永 昔はエロ漫画から一般誌に行った人たちが一般誌のエロ担当だったりしたんですよ。

安 そうですね。

永 ところが今はそうじゃなくなってきた。やっぱりエロ担当の人はいるんだけど、全然違う方向の話を描かされたり、そっちの方向で成功したりっていうのも凄い多くなってて。

安 それはやっぱり、漫画家として力があったってことでしょうね。




アダルトメディアって、昔から何かを表現する人たちに門戸を開く場所、
入門の場所みたいな意識があったと思うんですけど
現状はどうなんでしょうか。(編集者)

今は、エロ漫画以外(にそういう場所)はないんじゃないですか。 (安田)
編 アダルトメディアって、昔から何かを表現する人たちに門戸を開く場所、入門の場所みたいな意識があったと……。

安 単に敷居が低い(笑)。

編 はい(笑)。そういう側面があったと思うんですけど、現状はどうなんでしょう。

安 今は、エロ漫画以外はないんじゃないですか。

永 エロ漫画は、まだまだあります。

安 エロ漫画は、そこから一般誌に行く人はいると思うんですけど、今もうエロ雑誌はそういうページないですし。

永 ないですね、ライターが活躍する場が。

安 まったくないですね、エロライターがもういないですけどね。

永 いないですよ。一般誌のライターもやっててエロ本も書きますよっていう人はいくらでもいるけど、エロ専業の人っていない。昔は自販機もあったし、ビニ本のコピー書きもあったし、いわゆる一色のページですね。エロ雑誌が一色ページを持っていたから。

安 あとB級文化人とかに原稿書かすっていうのが。今それが全然なくなっちゃったんですよね。

永 『ヘイ!バディ』とか凄かったですから。グラビア以外はゴールデン街の文化人で埋められてた。

安 めちゃくちゃ面白いですけどね。やっぱり昔の雑誌はそういうのが当たり前っていう感覚で僕なんかは読んできちゃったんで……。

永 だからそういうふうにね、そこで還元してたのかなって。エロで儲けたお金を文化的にさ(笑)。

安 そうそうそう。今はそれがないんで、たぶんこれから先漫画以外でエロ業界から出てくる人っていないんじゃないかなぁって気がしますね。

永 出にくいですよね。

安 普通にライターってことで考えても、出づらいですよね。『別冊宝島』もだいぶ実用的になっちゃいましたよね。昔はまず『別冊宝島』に書いて、とかありましたね。

永 昔の月刊と別冊の宝島。そこで自販機があって、かなり駆け出しのライターの受け皿になってたんですけど。
『ぼのぼの』 文庫版第1巻 いがらしみきお著 発売=2002年7月 発行=竹書房


安 ですよね。普通の漫画家さんも、エロの臭いがついてない人でもエロ本で描いてたじゃないですか、吉田戦車さんとか。その辺の人たちも書いてたし、入りやすいところではあったんですけど、そういうのが今は……。

永 なくなっちゃいました。たとえばいがらしみきお(※25)さんとかもそうですけど。

安 今考えるとね、なんでこの人がエロ本に書いちゃうんだろうっていう(笑)。

永 だってエロ漫画系から出てきた人ってもの凄く多いですから。






(続く)


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nagayama-yasuda-plof2.jpg 永山薫 1954年大阪生まれ。近畿大学卒。80年代初期からライター、評論家、作家、編集者として活動。エロ系出版とのかかわりは、ビニ本のコピーや自販機雑誌の怪しい記事を書いたのが始まり。主な著書に長編評論『エロマンガスタディーズ』(イーストプレス)、昼間たかしとの共編著『マンガ論争勃発』『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)がある。

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nagayama-yasuda-plof.jpg 安田理央 1967年埼玉県生まれ。美学校考現学教室卒。エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。メディアとエロの関係を考察することがライフワーク。主な著作に『エロの敵』(雨宮まみとの共著 翔泳社)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)『デジハメ娘。』(マドンナ社)など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。

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