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毎週日曜日更新!
短期集中連載
永山薫×安田理央
対談『アダルトメディアの現在・過去・未来』【7】


構成=編集部
アダルト写真雑誌、AV、エロマンガ……その内部に様々な文化的要素を包括しつつ、その商業形態を劇的に変化させているアダルトメディア。出版不況とインターネット産業の相克の中で、今、見据えるべきポイントはどこにあるのか。漫画評論家・永山薫氏とアダルトメディア研究家・安田理央氏が、素肌と脳で感じているアダルトメディアの状況を縦横無尽に語り尽くす! 大ボリュームの短期集中連載、本日にて終了です。

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永山薫
1954年大阪生まれ。近畿大学卒。80年代初期からライター、評論家、作家、編集者として活動。エロ系出版とのかかわりは、ビニ本のコピーや自販機雑誌の怪しい記事を書いたのが始まり。主な著書に長編評論『エロマンガスタディーズ』(イーストプレス)、昼間たかしとの共編著『マンガ論争勃発』『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン社)がある。

安田理央
1967年埼玉県生まれ。美学校考現学教室卒。エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。メディアとエロの関係を考察することがライフワーク。主な著作に『エロの敵』(雨宮まみとの共著 翔泳社)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)『デジハメ娘。』(マドンナ社)など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。
さっきの話じゃないですけど、ユーザーとしてはこんないい時代ないですから。
ネット見りゃあ女子中高性がマンコ出してる写真が
いくらでも手に入るじゃないですか。
そりゃあエロ産業の力も弱まるわって思いますよ。(安田)

ユーザーレベルで言うと、規制が強まれば面白いものは出るでしょう。
ただ幼女のマンコは見られなくなる。
見るのは勝手だけどダウンロードはできなくなる。
さっさとキャッシュを消さないといけない(笑)。(永山)
安田(以下「安」) 児童ポルノの単純所持禁止の話あるじゃないですか。あれってたとえば昔の『写真時代』とか持ってたらいけなくなるんですか?
『写真時代』 1981年9月創刊号 発行=白夜書房


永山(以下「永」) 自民党案で行っちゃうかどうかによってずいぶん変わってきますね。自民党案はかなり厳しい。ホントに所持禁止になるので、さかのぼってアウトになる可能性も出てきます。

安 僕ら資料でたくさん持ってるじゃないですか。それを持ってちゃいけないの?

永 純粋に解釈すると。

安 ですよね。『ビデオ・ザ・ワールド』の創刊号に、ワレメ映ってるロリータヌードがあるんですよ。それ切り取んないといけないんですかね。資料になんないですよね。

永 そこが凄い問題でね。図書館にもない資料なんだよね。一つの文化の証拠というか、遺産という。そこで一個なくなっちゃうんだよね。

安 言ってみれば、僕ら研究家じゃないですか、そういう意味では。それでも……。
『ビデオ・ザ・ワールド』 1983年11月創刊号 発行=白夜書房


永 純粋に解釈すれば、ダメってことになります。だって十四、五のアイドルがおっぱい見せてたらアウトですよ。

安 そうですよね。そうすると僕ら困っちゃうなと。古いエロ雑誌、あの時期のってみんなヌード出てるじゃないですか、少女ヌード。あの頃の白夜の見ると、全然関係ない雑誌でも出てて、笑っちゃいますね。

永 民主党案が多少マシ。取得罪なので、それも一種の常習性っていうか、何度も何度もダウンロードしてる奴、とかになるから多少マシですよ。所持自体を罪にするんじゃなくて取得することを罪にするんで。ただどういうふうに決着つくか、まだ見えてこないんで、これからが問題になるはず。

安 海外ではどうなってるんですかね、その辺は。

永 海外ではイギリスとフィリピン(※37)でそういう法律が提出されて、凄い日本でも話題になってるんですけど、これもどうなるかよくわからない。今イギリスで問題になってるのは、アマゾンでイギリスのコードだったら必ずひっかかるもの(『レイプレイ』(※38))が売られてたのはけしからんって女性団体とかが怒って。
『レイプレイ』 発売=2006年4月 メーカー=ILLUSION
問題になってるんですけども、ただこれ冷静に考えれば流通の問題なので、そもそもイギリスで売っちゃいけないものが売られてたっていう話なんですよ。それで日本けしからんって言われても、別にイギリスの基準でもの作ってるわけじゃないですから。何とも言いようがない。イギリスで今進められてる法案で、いわゆる漫画とかアニメも規制しようという動きはあるんだけど、それに対しては当然反対論もあって、基準が明確でないとか、そういう形で出てる。あとフィリピンのほうも、どうなのかよくわからない。フィリピンのほうは、さらに訳わかんないのが、日本産って限定かけてる。これは日本の政府が問題にしないといけないと思うんですよね。それ貿易制限だろ、直接名指しでって。フィリピンで売っちゃいけないものを輸入しちゃいけないですよっていうのは別に問題ないですけど、日本製のってついちゃうとそれはもう完全に貿易の問題ですから。その辺もこれからどう転ぶか分からないですけど、そういう外圧、日本が海外でこんなに非難されてますよっていうことを政治的に利用しようとする政治家、これは出てくるかも知れない。

安 結構まあ、擁護しづらいところがあるじゃないですか、政治家にしてみると。難しいですよね。

永 難しいんだけれども、児童ポルノに関しては、実写系の所持、所持はともかく取得は禁止っていう形になるんじゃないですかね。だからそれが取得で止まるか、所持まで行っちゃうか。あと基準が、自民党の基準で行くのか、民主党の基準で行くのかによってずいぶん変わるんですけど、ただ問題になるのは民主党の取得禁止にせよ、影響がないかっていうとそうではないので。そうなってくると古いデータを新たに手に入れることはできないのかってことになりますし。

安 研究目的ならいいとかにしてくれないですかね。そこは難しいでしょうね。

永 研究目的でもいいってことになると、たとえば大学に籍を置いてないとダメとか、研究の実績がないとダメとかって。で、新しい研究者は生まれないみたいな話になる。その辺どうなるのかは、まだまだ。ただ、うーん実写に関してはもう……。

安 今、ネットに女の子たちが自分で撮ってる写メがガンガン出てるじゃないですか。で、何歳か分かんないわけですよ。

永 そこで凄い問題になってくるのは、たとえば十七歳の女の子がセルフヌード撮って公開しちゃった場合、被害者誰よっていう……。

安 アメリカだとその女の子が逮捕されてましたよね。

永 そうなんです。配布してるわけだから。被害者いないんだけど。

安 わいせつ罪と一緒ですよね、扱いは。

永 そういうことですよね。

安 被害者いないけど。

永 草薙君の時も別にね、被害者いないんだけど。うるさかっただけで、騒音被害くらいしかないんだけど。

安 少女のヌードはわいせつ物だということですね。

永 被害者いないんだけども、制作販売、所持が全部禁止ですから。

安 少女はいるだけでわいせつっていうことになりますよね(笑)。お風呂に入ってるだけでも、犯罪ですよ。

永 公開したらね。

安 でもわかんないじゃないですか。誰か見てるかも知れないから(笑)。

編 先日のニュースで、川で裸で遊んでいる女の子を撮影したら、捕まった。問題だって一部のネットユーザーが騒いでたんですけど、自宅を見てみたら百枚以上の児童ポルノ写真が出てきた。

永 モノホンだった。

編 でも、仮にそれがモノホンじゃなかったらっていう。

永 お父さんが子供の写真も撮れないですよ。

安 水着もダメ、下着もダメとかっていうことになったら、お父さんは本当大変ですよね。でも自分のヌードすらだめだっていうことになるとね、凄いですよね。

永 だからそういう極端なことっていうのはあんまり起こんないと思うし……。

安 今起きてるじゃないですか。

永 なんだけどバンバン起きるわけじゃない。冤罪の危険性も確かに拡大するんだけども、それもバンバン起きるわけじゃない。割とみんな無関心なのはその辺もあって。たとえば痴漢冤罪みたいな形で社会問題化すれば注目も集まるし、電車乗る時気をつけようとかさ、そういう実質的な危機感っていうのが持てるわけだけど、この問題は普通の人はなかなか危機感を持てないでしょうね。

安 関係ないですからね。関係ないこともないんだけど。

永 まさかってみんな思うわけ。実際プールで遊んでる自分の子供を撮ったお父さんが、毎日のように捕まるとかね、そういうことはまず想定できないんで。ただこの法律で問題があるとしたら、一つはこの法律によって表現者側の腰が引けちゃう。

安 前のあの、児童ポルノ法(※39)が出た時も、エロ本とか凄かったんですよね。幼い顔のモデル使わないとか。なんか差別だそれって(笑)。ホントにセーラー服とか、バーッとなくなって。

永 身長150センチ以上でないと使わないとかにしないと。

安 まあでも腰は引けるでしょうね。

永 ただこの法律でよくわかんないのはですね、これによって何が抑止されるかってことなんですよ。本当に子供さらってきて、ビデオ撮って売ってるような連中を取り締まれるのかなぁと思うと。

安 日本じゃあんま聞かないですよね。海外ではよくあるんでしょうけど。

永 日本でチャイルドポルノを作って、売りさばいてる連中っていうのはほぼ絶滅してる。そうなってくるとそいつらはもういないわけですよ、日本では。もしそういう連中がいたとしても児童ポルノ法以前の猥褻図画とか、そっちのほうで捕まえることもできるし。

安 今の法律で裁けるわけでしょ、なんなんでしょうね。やっぱりあっちゃいけないっていう……。

永 あっちゃいけないし、日本は頑張ってるんだよっていうところを見せたい。国内に向けても、こんなにちゃんと取り締まってるっていうことは言えると思うんだけども、所持禁止まで行っちゃうと、これまで合法だったものがいきなり非合法になっちゃう。統計的には逆に犯罪が増えちゃう。

安 増えちゃいますね。

永 うん。そんなことにマンパワー使ってるよりも、こないだの大阪の事件みたいに子供が虐待されて、山ん中埋められちゃいましたとかさ、そっちを防止するほうにお金使ったほうが子供は守れると思うんだけど、何が守れるのかなと。

安 まあ体面でしょうね、国としての。

永 だってネットで画像拾ってくるような人を捕まえたって、海外で実際そういうの作って売ってる業者にとっては痛くもかゆくもないでしょ。ただ見してる奴が捕まっただけだから。

安 やっぱりあれじゃないですか。歌舞伎町で風俗店を潰したかったのと一緒で、目に見えるとこにいっぱいあると馬鹿にされるからいやだってことじゃないですかね。

永 東南アジアなんかもそういうとこありますよね。売春天国なんだけど捕まると重罪だとかさ。

安 流れとしてなんらかは決まっちゃいそうですよね。

永 決まりますね。それはこっちがどうこうできる問題ではすでにないので。でもこういう法律が通っていくことで、何やってたんだお前みたいなことは絶対言われるから(笑)。おいおいとか思うんだけど。だからね、これはいつでも僕言うんですけど、表現規制と表現の自由の問題は、恐らく文化ってものができてずーっと続いてる問題であって。もともと表現の自由ってないし、そもそも。あった時代があったら教えてって、俺思うんですけどないです。だから結局その時代その時代の力関係とかそれだけのものなので、今はこうだけどまた十年後二十年後とか百年後とかになったらまた変わっていくわけですよ。だって簡単に言っちゃえば江戸時代禁止されてたものが今全然オッケーになってるってことですよ。

安 逆にオッケーだったものがダメになったりもしますけどね。

永 それはいろいろな形があるので。だからあんまりそこでもう暗黒社会になるとか、思うのは自由だけど、俺はそこにはリアリティは感じられない。

安 表現って結構、規制との戦いの中で生まれてくるとこがある。

永 うん、それはあんまり心配してなくて。イギリスのビクトリア朝時代、つまり19世紀中ごろから20世紀入るくらいまで、もの凄いキリスト教的なモラルが要求される時代があって、机の脚も剥き出しではいけないなんていう……。

安 (笑)。

永 そんな市民モラルが強かった時代があるんですけど、結局ポルノの黄金時代でもあって、建前としてのモラルがあればあるほど、裏ではポルノ文化が花開く。逆に言うと、今、エロ産業がダメなのはそんだけ自由なんだなぁと。

安 そうですね。いやぁ、だってさっきの話じゃないですけど、ユーザーとしてはこんないい時代ないですから。ネット見りゃあ女子中高性がマンコ出してる写真がいくらでも手に入るじゃないですか。ありえないですよね。そりゃあエロ産業の力も弱まるわって思いますよ。

永 逆に規制されたら大変だと思う反面、規制されたら面白い表現も出てくるなって思いますね。

安 そうなんですけどね、ガンガン規制していいかっていうと、それもちょっと別ですけどね。

永 別ですけどね、規制されたからって、絶望することはない。

安 ある程度の規制は必要なのかなっていう気もします。

長 必要っていうか、来てもしょうがねえなって。ユーザーレベルで言うと、規制が強まれば面白いものは出るでしょう。ただ幼女のマンコは見られなくなる。見るのは勝手だけどダウンロードはできなくなる。さっさとキャッシュを消さないといけない(笑)。

安 キャッシュの問題、あれはどうするんだろう。それは明文化されるんですか?

編 恣意的に違法行為だと知った上でという、特約的なものがついた上での可決だそうですね。

永 ダウンロードのこと?

編 そうです。

永 だからダウンロードは、ほぼザルですよ。それについてもこの本の中に出てくるんですけど、なんでそうかっていうとですね、縦割り行政の問題も一個ある。いろいろかぶっちゃってるんで。著作権は文化庁なんですよ。通信法はまた別でしょ。省庁の縄張りがあるので、省庁が協力してやるともっと実効性のあるものができるんだろうけど、ホントに縦割りなので、幸か不幸か骨抜きになってしまいましたっていう。暗い展望は結構出たので、そろそろ明るい展望を話しとこうか。


それぞれの立脚点からアダルトメディアの行方を論じる2人。
左 : 安田理央氏 右 : 永山薫氏



お金を払ってくれる人数は少しでも、
エロ業界自体もっとコンパクトになっていい。
今って数が多すぎるんですよ、AVにしろ何しろ。
月に二千本もいらないでしょ、どう考えたって。
もっとコンパクトになって、一つ一つに愛情をもって作る方向にいけば…… (安田)

ちょうど「WEBスナイパー」の女装特集見てたら、
男性向けコルセットのデザインやってる人がいて、
あれなんてSMの文脈の人じゃないでしょ、ファッションの文脈の人でしょ。
そういう他の文脈とリンクするとか、その辺はやりようかな。(永山)
安 明るい展望、難しいですね。

永 難しいんですけど。

安 最初の話に戻るんですけど『オトコノコ倶楽部』が売れたっていうのは、編集者が凄い愛情を持って作ってるのが伝わってくるんですよ。テーマがテーマなんで、マスには絶対なりえないもんだし、めちゃくちゃピンポイントなんだけど、エロ雑誌なんてそういうものでいいんじゃないかと思ったんですよ。

永 そう思いますよそれは。

安 少しの人に向けてホントに好きな人が作れば、それでいいんじゃないかなと。買わない人はどうせ買わないし。だからエロ業界自体もっとコンパクトになっていい。今って数が多すぎるんですよ、AVにしろ何しろ。月に二千本もいらないでしょ、どう考えたって。もっとコンパクトになって、一つ一つに愛情をもって作る方向にいけば……っていう気がするんですけどね。

永 減量はしていかざるを得ないと思うし、そこでやっぱり隙間に入り込んでいく。だからそれにはリサーチも必要だと思うんですけど、何人に売ろうとしてるのかとかね。

安 そうそう、昔って結構どんぶり勘定で濡れ手に粟の商売っていうのがエロだったんですけど、そういうことでももうないんですよね。それもリサーチとかだけではなくて、もうちょっと身の丈にあったことをやっていけばいいんじゃないかなぁって気がするんですよね。

永 ホントに必要としてる人を取り込んでいく。それはホントに好きな人が作るっていうことでしょうね。狭い部分にいる趣味の人たちってのは、ツボをはずすとすごく敏感に反応する。

安 敏感ですよね。

永 うん、違うだろうって。余裕のある時だったら、これくらいは我慢しようか、目ぇつぶろうかっていうのはあっただろうけど、みんな財布の紐硬いし。

安 読者とかユーザーの顔がもっと見えるものを作っていくべきなんじゃないか、この人に向けて作ってるとか、そういうのある程度分かってたほうがいいんだろうな。

永 だからね、ニューハーフじゃなくて、女装のほう行っちゃったっていうのは凄い正解だと思って。ニューハーフになっちゃうと、やっぱりお水なんだよね。

安 プロなんですよね。

永 うん。プロだし、やっぱ手垢ついちゃってるんですよ、イメージが。オトコノコっていう形で持ってきたのは凄い正解で。逆に言うと、なんでニューハーフが限定されちゃうかって言えば彼女たちはプロだし、カラダいじるし、本気の世界なんだよね。はっきり言えばマニアの世界。オトコノコって、それは名前変わってるだけかも知れないけど、実はホルモン打ってるかもしれないけど、わりと自分との日常とも近いし、変態度数ってのが、ハードルが若干低くなるっていうのは凄くあると思うんですよ。だから他のフェティシズムでもきっと一緒で、これまでにも脚フェチの本とかいろいろ出てるんだけども、やっぱりマニア向けの色が強いですよ。そうじゃなくてもっと薄い人たちでも入っていけるものを作れば、フェティシズムの領域ってのはありかなって思うんですよ。

編 それはSMにも言えそうな話ですね。

永 うん、いきなりね、座禅縛りとかやられてもなぁって。実際ホントにSM好きな人でも、言葉責めで十分、そっちのほうが却って刺激される人もいるだろうし。写真にしたって、そんな凄いマニアックな縛りじゃなくて、軽い拘束でウリウリってやってる程度がグッとくる人もいるだろうし。M男にしたってさ、彼らにしたっていきなり女王様にケツの穴に突っ込まれたら引くよ。そりゃあ死ぬかもしれないよ。そういうのじゃなしに、ホントにちょっと苛められるとかさ。その辺をもうひとつ考えていってもいいなと思ったのは、ちょうど「WEBスナイパー」の女装特集見てたら、男性向けコルセットのデザインやってる人がいて、あれなんてSMの文脈の人じゃないでしょ、ファッションの文脈の人でしょ。だからそういう他の文脈とリンクするとか、さっきの脚フェチでもホントに靴のデザインやってる人とか、実際、街でどんな靴が履かれてるとか、その辺で全然違ってくると思うんですよ。その辺はやりようかな、パッケージングの仕方かなと思うし。

安 やり方はありますよね。やることはやりつくしてるんだけれども、やることはあるんですよね。

永 そう。その辺の見せ方っていうか、プレゼンの工夫とかも結構デカいかなぁ。

安 昔みたいにコンビニで何十万部も売れるってのは、もう難しいでしょう。

永 難しいですよ。

安 その頃が逆におかしいんですけどね。エロ本が軒並み十万部以上が当たり前だった時代があるじゃないですか。やっぱおかしいですよね、それは。

永 だから『S&Mスナイパー』がやっぱりね、歴史的使命を終えてしまったわけですが。「WEBスナイパー」もね、もうちょっと枝分かれさせても面白いかなと思いますよ。もっとライトな方向に。
『S&Mスナイパー』 2009年1月号 発行=ワイレア出版


編 雑誌の頃に比べるとかなりライトな方向にしてますけどね。

永 女装系でも、やればもの凄い幅広いし。

安 女装の盛り上がりには注目してるんですけど、正直僕は女装自体には興味がない(笑)。だけど編集者が好きで作ってるとか、こないだのイベントの時も凄い熱意を感じたんですよ。そういうのがあんまり今ないじゃないですか、エロ全体で。なんか今「しょうがない」で作ってね、予算ないから借りてきてとか、これは売れるんじゃないかとか、そういう感じが出過ぎちっゃてて。最近、編集の人と話してても面白くないんですよね。みんな元気ないし。AVの人はAVの人で、売れるか売れないかっていうのがものすごく切羽詰まった問題になっちゃってて。これは当たった、これは当たんないって話ばっかりになってて。商売はもちろん大事なんですけど、もうちょっと熱意欲しいなぁっていうのを感じますね。

永 いっそもう、ただにしちゃう。

安 商売しない。広告も取らない(笑)。

永 広告はいいんだけど基本ただで。雑誌をただで作って、配る。フリーペーパーは俺、ありだと思ってますよ。収益は広告でとればいい。さっきのテレビ欄だけの新聞みたいな発想ですよね。

安 ただ『R25』が受けて、だーっとフリーペーパーブームが来たんですけど、今度の不況でみんな広告引き上げられちゃってみんなアウトっていう。広告頼りってこえーっていう。
『R25』 2008年5月29日号 発行=リクルート


永 広告頼りは怖いんですけどね。結構、広告がネットのほうに流れてる。

安 流れてるといっても、そんなにでもないですね。分散がスゴいですから。

永 今はテレビとか見てても、話題って言えば何が安いとか、百円で何買えるとか、アウトレットがどうとか。

安 激安ジーンズがとか。

永 そうそうそう。そういう話になっちゃうんで、だからエロはどうやって生き残るのかな。……みんなただでやる(笑)。

安 でも今がそういう状況じゃないですか。ネットがみんなそうでしょ。やっぱ好きな人に向けて作るしかないような気がしますけどね。

編 もっと広く浅いエロっていうものを……。

安 そしたら、価値がなくなっちゃうんじゃないですか。

永 まあ今、ネット全体がそうなので。そうすると差別化していくために何かっていう。やっぱりどっかでまとめてないと、ダメだし。

編 そこでフェティシズムとか。

永 フェティシズムっていうのは結構、ポイントかなと思うんですよ。だから海外の写真のサイトとか見てても、こいつら馬鹿だろうと思うのは、いろいろ面白いコスプレとかさ、ゴスロリとかやるんだけど、最後脱がしちゃう。後半部は素っ裸って意味ねえじゃんと。やっぱゴスロリとかやるんだったら最後まで脱がしちゃだめで、着衣セックスだろうと思うんですよ。せめてゴールは。だから着衣セックスだよこれからは。

安 (笑)。

編 着衣セックスですかね。

永 うん(笑)。だってね、脱いじゃったら一緒じゃん。脱いだら違うのはオトコノコくらいで。

安 全部脱いじゃうと、ただの男になっちゃいますからね、やっぱり全部は脱いじゃだめですね。

永 できれば包茎のほうがいいとかね(笑)。

編 モザイク入りますよ(笑)。

永 あれもやっぱり変だなと思う。シーメールとかチンコでかすぎ。

安 あー。チンコでかくないとダメなんですか、シーメールって。

永 チンコでかいのが結構出てきますよ、シーメールは。

安 チンコが大事なんでしょ。

永 チンコ好きな人多いよね。

安 多いですよ。僕はチンコ嫌いなんでね、人のチンコ。自分のチンコもそんな見たくないしね。だからよくわからないとこあるんですよね。

永 タイのレディボーイとかさ、あんなにチンコちっちゃいけど、どう見てもこれ十八歳未満だろうと(笑)。どうなんだと思いますね。どう見てもこれ十四、五とかいますよね。それが日本から取り寄せた制服きて、なんちゃって女子高生やってるやつとかあるじゃないですか。ハマりすぎだよお前、似合いすぎってさ。

安 (笑)。

編 日本の外務省が日本のカワイイを売りものにしよう(※40)と、制服の可愛いスタイルをいろんなところにアピールしようとしてるんですよ。タイとかに行って、タイの女の子に制服を着させてショーとかさせてイベントを打ってるんです。

永 そのくせ児童ポルノはダメ、猥褻はダメ。

安 マッチポンプですね。

永 じゃあ、エロじゃなければOKなのか。

安 たぶんそういうことですよ。

編 規制したいのはわいせつ。

永 実効性というよりも、努力してる姿勢を見せたいんじゃないですかね。



(了)


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nagayama-yasuda-eronoteki-prof.jpg 安田理央 1967年埼玉県生まれ。美学校考現学教室卒。エロ系ライター、アダルトメディア研究家、パンク歌手、ほか色々。メディアとエロの関係を考察することがライフワーク。主な著作に『エロの敵』(雨宮まみとの共著 翔泳社)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)『デジハメ娘。』(マドンナ社)など。趣味は物産展めぐり。でも旅行は苦手。

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