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小林電人、書き下ろし官能羞恥小説の決定版 交錯する物語が急展開!
羞恥の教室 第2部
第十章 堕ちてゆく二人 【2】
著者=小林電人
第1部の登場人物とあらすじはこちら>>
第十章 堕ちてゆく二人
II ゆり 1
藤井は、なんとかその短いお詫びの文章を書き込んだ。それが藤井の読者への精一杯の誠意だった。
藤井の精神状態はボロボロで、とても羞恥小説を書く余裕はなかった。これまで最低週一回というペースを守ってきたが、忍が連絡を絶ってからは、更新もぱったりと止まってしまっていた。
あのドライブの日以来、忍とは個人的な会話を交わしていない。学校で授業中に顔を合わせることはあっても、そこでは教師と一生徒以上のコミュニケーションを取ることは出来ない。そして藤井から忍へメールを出しても返事は一度も返って来なかった。それどころか、しばらくしてメール着信拒否の設定をされてしまった。
脅迫者が自分との連絡を一切断てと、忍に命じているのだろうとは予測がついた。その一方で、忍が自分に冷めてしまったのではという疑念もある。なにしろ自分と関係を持ったことで、これほど恐ろしい状況に堕とされてしまったのだから、そう考えても無理はない。自分と忍の絆は、簡単には切れないものだと思いたいし、信じている藤井だが、それでもこの状況では疑心暗鬼にもなる。
しかも、昨日から、忍は学校も休んでいる。担任のもとには親から風邪だという連絡が入っているようだが、おそらく病気ではあるまい。
いったい忍がどんな状態なのか、藤井には窺い知れない。いづれにせよ、忍が心を痛めているのは間違いない。今、すぐにでも飛んでいって抱きしめてやりたいと思う。しかし、それが許される立場ではないのだ。
藤井はギリギリと心臓を締め上げられるような気持ちのまま過ごしていた。苦しかったが、忍はもっと苦しいのだと思って、ひたすら耐えた。
いくらアルコールを流し込んでも、眠れなかった。一睡も出来ないままに朝を迎え、鏡を見てみると、凄まじいまでにやつれた自分の顔があった。こんな表情のままではとても学校には行けない。藤井は重たい身体を引きずりながらバスルームに入り、熱いシャワーを全身に浴びた。しかし、それは藤井の意識を覚醒させるどころか、さらに混濁させていった。激しい雨のようなお湯の音を聞いているうちに、目の前が真っ白になって、藤井はバスルームの中に崩れ落ちた。
意識が飛んだ。顔を強く床に打ち付けた。鼻孔から血か流れだした。唇も少し切れた。しかし一人暮らしの藤井を助けてくれる者などいない。全裸でシャワーに打たれながら、藤井は失神していた。
しばらくして、意識を取り戻した藤井はよろよろとベッドに倒れ込んだ。濡れた身体をきちんと拭く気力も無かった。
時計を見ると、もう家を出なければならない時刻になっていた。しかし、今日はどうにもならない。起き上がることすら不可能に思えた。
それでも力を振り絞って、学校へ電話した。
「すいません、藤井です。風邪だと思うのですが、ひどく熱が出てしまい......。はい、申し訳ありませんが、休ませていただきたいのですが......。はい、はい。大丈夫です。はい、よろしくお願いいたします......」
電話を切ると同時に、藤井は深い眠りの底へと落ちていった。夜中、あれほど渇望していた眠りだったが、そこで藤井を待ち受けていたのは安らぎではなく、悪夢だった。
何十人もの群衆が騒ぎ立てていた。その中心には、全裸の忍がいた。首輪をつけられ、四つんばいにさせられていた。周りの男たちは、忍を足蹴にして、罵声を浴びせていた。
「この変態女」
「可愛い顔して、とんでもない奴だ」
「そんなにケツの穴をいじめてほしけりゃ、これでも突っ込んでやるよ!」
男たちは忍を担ぎ上げて、脚を大きく広げさせた。剥き出しになった忍の肛門へ、ビール瓶を突き立てた。忍が悲鳴をあげる。
「忍、忍!」
藤井は叫んで、助けだそうとするのだが、身体は全く動かない。藤井の声は忍にも聞こえていないらしい。それでも藤井は叫ばずにはいられなかった。
その悪夢は、無機質な電子音によって終焉を迎えた。現実の世界に引き戻された藤井は、自分が置かれている状況を、一瞬把握できなかった。ベッドの上で全裸のままで倒れ込むようにして眠っていたのだと、わかるまでに数十秒かかった。そして訪問者がベルを鳴らしているのだということを、ようやく理解した。
あわてて起き上がり、インターホンの受話器を取る。
「はい」
自分でもびっくりしてしまうようなしゃがれ声だった。そして、訪問者の姿を液晶モニター越しに見て、さらに藤井は驚く。
「あの、藤井先生のお宅ですか? 谷口です」
そこには、同僚の新任教師である谷口ゆりの姿があったのだ。
「え、谷口先生?」
「はい、あの、お体の方、大丈夫でしょうか? ちょっと心配になったものですから」
「あ、少しお待ち下さい」
なぜ、谷口先生が? 藤井は慌てた。それほど親しくもない同僚の女教師が、なぜ自分の部屋を訪ねてきたのか? いや、その前に、自分は全裸のままだ。とにかく何か着なければ。
藤井は近くにあった下着と服を慌てて身につける。そして自分が10時間もの間、眠っていたことを知った。もう陽は暮れていた。学校も終わったという時刻なのだ。
混乱した頭のまま、藤井はドアを開けた。そこに立っていたゆりは、目を丸くしていた。
「藤井先生、どうしたんですか、その顔!」
言われて藤井は顔に何かがこびりついている感触に初めて気づいた。しかしそれが何であるかはわからない。
「血が、血がついてますよ」
ゆりはとっさにハンカチを取り出して、藤井の顔を拭った。
ようやく藤井は自分がバスルームで転倒したことを思い出す。そういえば鼻の辺りが、まだズキズキと痛む。
「あの、上がらせていただいてもいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
藤井は押し切られるように応えてしまった。
基本的には、いつでも部屋は綺麗に整えている藤井だが、さすがにここ数日は、少し荒れたままではあった。それでも、普通の独身男性よりは、片付いている方だろう。
「その血はどうしたんですか?」
「ああ、ちょっとバスルームで意識を失っちゃって、転んじゃったみたいなんだ。それほどたいしたことじゃないよ」
「意識を失うって、それだけでも大変ですよ」
「いや、本当に大丈夫ですから」
心配そうな表情のゆりをとりあえずソファに座らせる。
育ちのよさそうな線の細い美人である。二十代半ばのはずだが、年齢よりもずっと幼い印象があり、女生徒たちからは、親しみと共に少し軽く見られているようだった。
「しかし、驚いたな。谷口先生がお見舞いに来てくれるなんて......」
顔を濡れタオルで拭って、こびりついた血を落としながら藤井は言った。
「藤井先生、ずっと調子悪いみたいでしたし、心配だったんです。いつも藤井先生には親切にしていただいていますし......」
ゆりは、そう言って藤井の顔をまっすぐ見た。藤井は慌てて視線をそらす。
「気を使わせちゃってすいませんね。大丈夫ですよ。もう熱も下がったし」
「でも意識を失うなんて、よほどのことですから......。あの、寝ていてください。もし、何か欲しいものとかあれば買ってきます。いちおう、少し飲み物を買ってきたんですが」
ゆりはウーロン茶と野菜ジュースのペットボトルとゼリーの入ったコンビニの袋を藤井に差し出した。
「あ、ありがとうございます」
「病院には行ったんですか?」
「いや、行ってませんが、もう熱も下がりましたし大丈夫ですよ」
「あの......、もしかして風邪とかではなく、何か悩み事とかあるんじゃないですか?」
藤井は驚いてゆりを見た。今度はゆりが慌てて視線をそらす。
「え?」
「すいません。でも、藤井先生、ここのところずっと思い詰めた顔をしてらっしゃいましたから」
「ああ......。まいったな。まぁ、ちょっとプライベートなことですから」
「ごめんなさい。立ち入ったことを言ってしまって」
「いやぁ、おれ、そんなに顔に出てましたか。ダメだな、教師失格だ」
藤井は苦笑する。
「生徒たちも、噂してましたよ。藤井先生が元気ないって。失恋したんじゃないかって」
「......失恋ですか。まぁ、近いような近くないような......」
「あ、本当にそういう話なんですか?」
ゆりは、またじっと藤井の顔を見つめる。藤井は驚く。その表情に、妙な女っぽさを感じたからだ。美人であることは知っていたが、地味であまり色気のない性格だったので、これまで特にゆりを女性として意識したことはなかった。しかし、改めて見てみると、彼女の清楚さな美しさは藤井の好みのタイプではないか。どこか忍に通じる魅力もある。
いや、おれは何を考えているんだ。今はそれどころじゃないはずだろう......。藤井は妙な事を考えてしまった自分を恥じた。
「でも、病気じゃないみたいで、少し安心しました」
「はは、すいません。こんなことで学校を休んじゃうなんて、教師失格ですね、おれ」
「いえ、精神的なものって、病気より辛いですから、しょうがないと思います。私に何かお役に立てることがあるといいんですが......」
「大丈夫ですよ。ここのところ、よく眠れなかったのがよくなかったんです。明日にはちゃんと学校に行けますから」
「そうですか。じゃあ、私はそろそろ」
ゆりはソファから立ち上がる。
「変な心配かけてしまって、申し訳ありませんでしたね」
少しホッとした気分で、藤井はゆりを送り出した。プライベートな、それも決して知られてはならない悩みを同僚に気遣われるのは、たまらなかった。
「私の家、割と近いんですよ。もし、何か必要なことがありましたら、遠慮なく言って下さいね」
「はい、本当に大丈夫ですから」
「でも......、藤井先生がそんなになってしまうほど思われる女性がいるなんて、ちょっと羨ましいな」
ドアの前で、ゆりがそんなことを言い出した。藤井は呆気にとられる。
「あ、ごめんなさい。変なこと言ってしまって......」
この女は自分に対して気があるのだ。藤井は確信する。こんな状況でなかったら、それは小躍りするほど嬉しい話だろう。しかし、今はそれどころじゃないのだ。
ゆりは、再び藤井をじっと見て、そして意を決したように言う。
「また来てもいいですか?」
藤井は困惑する。しかし、冷たくはねのける言葉を言うのもためらわれた。
「あ、ああ、もしよかったら......」
「わぁ、うれしいです」
ゆりの顔がパッと明るくなる。
「それでは、お邪魔しました。お大事に」
「どうもご心配かけちゃってすいません。ありがとうございました」
ゆりが去った後、藤井は大きくため息をついてベッドに倒れ込んだ。頭が混乱していた。そして、ゆりの裸身を想像した。ゆりのアナルを嬲ることを妄想した。しかし、すぐに忍のことに意識が戻る。そんなことを一瞬でも考えてしまった自分を恥じた。
一方、藤井の部屋を出たゆりは、さっきまでの恋する乙女のような表情を捨て去っていた。歩きながら携帯電話をかける。
「ゆりです。行ってきました......」
ゆりは、明らかに何かに怯えていた。
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第十章 堕ちてゆく二人 【2】
著者=小林電人
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第十章 堕ちてゆく二人
II ゆり 1
「羞恥学園新聞」更新休止のお知らせ
一身上の都合により、しばらくの間、更新することができなくなってしまいました。拙作を楽しみに読んで下さっている愛読者の方には大変申し訳ありませんが、少しの間、お待ち下さい。
S学園長
藤井は、なんとかその短いお詫びの文章を書き込んだ。それが藤井の読者への精一杯の誠意だった。
藤井の精神状態はボロボロで、とても羞恥小説を書く余裕はなかった。これまで最低週一回というペースを守ってきたが、忍が連絡を絶ってからは、更新もぱったりと止まってしまっていた。
あのドライブの日以来、忍とは個人的な会話を交わしていない。学校で授業中に顔を合わせることはあっても、そこでは教師と一生徒以上のコミュニケーションを取ることは出来ない。そして藤井から忍へメールを出しても返事は一度も返って来なかった。それどころか、しばらくしてメール着信拒否の設定をされてしまった。
脅迫者が自分との連絡を一切断てと、忍に命じているのだろうとは予測がついた。その一方で、忍が自分に冷めてしまったのではという疑念もある。なにしろ自分と関係を持ったことで、これほど恐ろしい状況に堕とされてしまったのだから、そう考えても無理はない。自分と忍の絆は、簡単には切れないものだと思いたいし、信じている藤井だが、それでもこの状況では疑心暗鬼にもなる。
しかも、昨日から、忍は学校も休んでいる。担任のもとには親から風邪だという連絡が入っているようだが、おそらく病気ではあるまい。
いったい忍がどんな状態なのか、藤井には窺い知れない。いづれにせよ、忍が心を痛めているのは間違いない。今、すぐにでも飛んでいって抱きしめてやりたいと思う。しかし、それが許される立場ではないのだ。
藤井はギリギリと心臓を締め上げられるような気持ちのまま過ごしていた。苦しかったが、忍はもっと苦しいのだと思って、ひたすら耐えた。
いくらアルコールを流し込んでも、眠れなかった。一睡も出来ないままに朝を迎え、鏡を見てみると、凄まじいまでにやつれた自分の顔があった。こんな表情のままではとても学校には行けない。藤井は重たい身体を引きずりながらバスルームに入り、熱いシャワーを全身に浴びた。しかし、それは藤井の意識を覚醒させるどころか、さらに混濁させていった。激しい雨のようなお湯の音を聞いているうちに、目の前が真っ白になって、藤井はバスルームの中に崩れ落ちた。
意識が飛んだ。顔を強く床に打ち付けた。鼻孔から血か流れだした。唇も少し切れた。しかし一人暮らしの藤井を助けてくれる者などいない。全裸でシャワーに打たれながら、藤井は失神していた。
しばらくして、意識を取り戻した藤井はよろよろとベッドに倒れ込んだ。濡れた身体をきちんと拭く気力も無かった。
時計を見ると、もう家を出なければならない時刻になっていた。しかし、今日はどうにもならない。起き上がることすら不可能に思えた。
それでも力を振り絞って、学校へ電話した。
「すいません、藤井です。風邪だと思うのですが、ひどく熱が出てしまい......。はい、申し訳ありませんが、休ませていただきたいのですが......。はい、はい。大丈夫です。はい、よろしくお願いいたします......」
電話を切ると同時に、藤井は深い眠りの底へと落ちていった。夜中、あれほど渇望していた眠りだったが、そこで藤井を待ち受けていたのは安らぎではなく、悪夢だった。
何十人もの群衆が騒ぎ立てていた。その中心には、全裸の忍がいた。首輪をつけられ、四つんばいにさせられていた。周りの男たちは、忍を足蹴にして、罵声を浴びせていた。
「この変態女」
「可愛い顔して、とんでもない奴だ」
「そんなにケツの穴をいじめてほしけりゃ、これでも突っ込んでやるよ!」
男たちは忍を担ぎ上げて、脚を大きく広げさせた。剥き出しになった忍の肛門へ、ビール瓶を突き立てた。忍が悲鳴をあげる。
「忍、忍!」
藤井は叫んで、助けだそうとするのだが、身体は全く動かない。藤井の声は忍にも聞こえていないらしい。それでも藤井は叫ばずにはいられなかった。
その悪夢は、無機質な電子音によって終焉を迎えた。現実の世界に引き戻された藤井は、自分が置かれている状況を、一瞬把握できなかった。ベッドの上で全裸のままで倒れ込むようにして眠っていたのだと、わかるまでに数十秒かかった。そして訪問者がベルを鳴らしているのだということを、ようやく理解した。
あわてて起き上がり、インターホンの受話器を取る。
「はい」
自分でもびっくりしてしまうようなしゃがれ声だった。そして、訪問者の姿を液晶モニター越しに見て、さらに藤井は驚く。
「あの、藤井先生のお宅ですか? 谷口です」
そこには、同僚の新任教師である谷口ゆりの姿があったのだ。
「え、谷口先生?」
「はい、あの、お体の方、大丈夫でしょうか? ちょっと心配になったものですから」
「あ、少しお待ち下さい」
なぜ、谷口先生が? 藤井は慌てた。それほど親しくもない同僚の女教師が、なぜ自分の部屋を訪ねてきたのか? いや、その前に、自分は全裸のままだ。とにかく何か着なければ。
藤井は近くにあった下着と服を慌てて身につける。そして自分が10時間もの間、眠っていたことを知った。もう陽は暮れていた。学校も終わったという時刻なのだ。
混乱した頭のまま、藤井はドアを開けた。そこに立っていたゆりは、目を丸くしていた。
「藤井先生、どうしたんですか、その顔!」
言われて藤井は顔に何かがこびりついている感触に初めて気づいた。しかしそれが何であるかはわからない。
「血が、血がついてますよ」
ゆりはとっさにハンカチを取り出して、藤井の顔を拭った。
ようやく藤井は自分がバスルームで転倒したことを思い出す。そういえば鼻の辺りが、まだズキズキと痛む。
「あの、上がらせていただいてもいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
藤井は押し切られるように応えてしまった。
基本的には、いつでも部屋は綺麗に整えている藤井だが、さすがにここ数日は、少し荒れたままではあった。それでも、普通の独身男性よりは、片付いている方だろう。
「その血はどうしたんですか?」
「ああ、ちょっとバスルームで意識を失っちゃって、転んじゃったみたいなんだ。それほどたいしたことじゃないよ」
「意識を失うって、それだけでも大変ですよ」
「いや、本当に大丈夫ですから」
心配そうな表情のゆりをとりあえずソファに座らせる。
育ちのよさそうな線の細い美人である。二十代半ばのはずだが、年齢よりもずっと幼い印象があり、女生徒たちからは、親しみと共に少し軽く見られているようだった。
「しかし、驚いたな。谷口先生がお見舞いに来てくれるなんて......」
顔を濡れタオルで拭って、こびりついた血を落としながら藤井は言った。
「藤井先生、ずっと調子悪いみたいでしたし、心配だったんです。いつも藤井先生には親切にしていただいていますし......」
ゆりは、そう言って藤井の顔をまっすぐ見た。藤井は慌てて視線をそらす。
「気を使わせちゃってすいませんね。大丈夫ですよ。もう熱も下がったし」
「でも意識を失うなんて、よほどのことですから......。あの、寝ていてください。もし、何か欲しいものとかあれば買ってきます。いちおう、少し飲み物を買ってきたんですが」
ゆりはウーロン茶と野菜ジュースのペットボトルとゼリーの入ったコンビニの袋を藤井に差し出した。
「あ、ありがとうございます」
「病院には行ったんですか?」
「いや、行ってませんが、もう熱も下がりましたし大丈夫ですよ」
「あの......、もしかして風邪とかではなく、何か悩み事とかあるんじゃないですか?」
藤井は驚いてゆりを見た。今度はゆりが慌てて視線をそらす。
「え?」
「すいません。でも、藤井先生、ここのところずっと思い詰めた顔をしてらっしゃいましたから」
「ああ......。まいったな。まぁ、ちょっとプライベートなことですから」
「ごめんなさい。立ち入ったことを言ってしまって」
「いやぁ、おれ、そんなに顔に出てましたか。ダメだな、教師失格だ」
藤井は苦笑する。
「生徒たちも、噂してましたよ。藤井先生が元気ないって。失恋したんじゃないかって」
「......失恋ですか。まぁ、近いような近くないような......」
「あ、本当にそういう話なんですか?」
ゆりは、またじっと藤井の顔を見つめる。藤井は驚く。その表情に、妙な女っぽさを感じたからだ。美人であることは知っていたが、地味であまり色気のない性格だったので、これまで特にゆりを女性として意識したことはなかった。しかし、改めて見てみると、彼女の清楚さな美しさは藤井の好みのタイプではないか。どこか忍に通じる魅力もある。
いや、おれは何を考えているんだ。今はそれどころじゃないはずだろう......。藤井は妙な事を考えてしまった自分を恥じた。
「でも、病気じゃないみたいで、少し安心しました」
「はは、すいません。こんなことで学校を休んじゃうなんて、教師失格ですね、おれ」
「いえ、精神的なものって、病気より辛いですから、しょうがないと思います。私に何かお役に立てることがあるといいんですが......」
「大丈夫ですよ。ここのところ、よく眠れなかったのがよくなかったんです。明日にはちゃんと学校に行けますから」
「そうですか。じゃあ、私はそろそろ」
ゆりはソファから立ち上がる。
「変な心配かけてしまって、申し訳ありませんでしたね」
少しホッとした気分で、藤井はゆりを送り出した。プライベートな、それも決して知られてはならない悩みを同僚に気遣われるのは、たまらなかった。
「私の家、割と近いんですよ。もし、何か必要なことがありましたら、遠慮なく言って下さいね」
「はい、本当に大丈夫ですから」
「でも......、藤井先生がそんなになってしまうほど思われる女性がいるなんて、ちょっと羨ましいな」
ドアの前で、ゆりがそんなことを言い出した。藤井は呆気にとられる。
「あ、ごめんなさい。変なこと言ってしまって......」
この女は自分に対して気があるのだ。藤井は確信する。こんな状況でなかったら、それは小躍りするほど嬉しい話だろう。しかし、今はそれどころじゃないのだ。
ゆりは、再び藤井をじっと見て、そして意を決したように言う。
「また来てもいいですか?」
藤井は困惑する。しかし、冷たくはねのける言葉を言うのもためらわれた。
「あ、ああ、もしよかったら......」
「わぁ、うれしいです」
ゆりの顔がパッと明るくなる。
「それでは、お邪魔しました。お大事に」
「どうもご心配かけちゃってすいません。ありがとうございました」
ゆりが去った後、藤井は大きくため息をついてベッドに倒れ込んだ。頭が混乱していた。そして、ゆりの裸身を想像した。ゆりのアナルを嬲ることを妄想した。しかし、すぐに忍のことに意識が戻る。そんなことを一瞬でも考えてしまった自分を恥じた。
一方、藤井の部屋を出たゆりは、さっきまでの恋する乙女のような表情を捨て去っていた。歩きながら携帯電話をかける。
「ゆりです。行ってきました......」
ゆりは、明らかに何かに怯えていた。
(続く)
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著者=小林電人 長年夢見ていた自分の「理想のSMビデオ」を自主制作したことがきっかけで、AV&SM業界のはじっこに首をつっこむことになった都内在住の40代自営業。ひたすら羞恥責め、アナル責めを好み、70年代永井豪エッチ漫画の世界を愛する。これまでの監督作品として「1年S組 高橋真弓のおしおき」「同2」「穴牝奴〜町内会人妻肛虐倶楽部 」がある。以前、永井漫画をモチーフにした小説をネットに発表したことはあるが、オリジナルは本作が初めて。 |