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「満月の夜の吊り責め」 」
投稿者= 兵庫県尼崎市 志賀妖一(仮名)

両足にかけられた足枷の皮錠に通した縄を引き締め、吊り環にかけて引き上げてゆきますと、髪の毛は乳房をはなれて、はらはらと散りながら苦しそうに噛まされた猿轡の上へ。さらに喘ぎながらうごめいているその顎の上へと、流れ落ちてゆくのです――。深夜に野外で愛妻を責める悦びを描いた、志賀妖一(仮名)による流麗な文章で彩られた力作投稿作品 。1981年の『S&Mスナイパー』より、再編集して掲載します。
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前編 贅沢な思い

山に入って歩きはじめますと、急に冷気を感じるようでした。下着はもちろん、その上からウインドパーカーなども着込んでいても、かなりひえびえとしてきます。

全裸の後手縛り姿、そしてゴム引き布で作られたマントを一枚羽織っただけの姿の玲子は、ずいぶんと身にしみる寒さでしょう。今夜は、この野外での責めを決行することにしたのです。

私が勝手に拷問室と名付けている半地下式の物置きで準備をし、その部屋を出るときから何もかもすべてを脱がせたのです。黒い色の綿ロープを厳重にかけて締め上げ、また手首と二の腕には皮製の拘束用具をつけて締め上げてあります。さらには両方の足首にも皮製の足伽をつけさせて、この山の中に出かけてきたのです。

車の中では後手錠のうえ、鎖をかけてあり、細い両方の足首にも厳重すぎるほどの鎖付き拘束環をつないであります。

山径を歩かせるために足首の鎖だけは外してやりましたが、一応万一人に出会った場合のことを考えて、目立つことのないように黒っぽい色の防水マントを羽織らせてはいました。頭からは、すっぽりとフードを被らせてやりまして、足首の皮枷をひっかけないように注意を与え、足元を懐中電灯の光に照らしてやりながらゆっくりと歩かせてゆきます。

今夜は満月の一日前です。まんまるい銀色の月が、やや東の空に傾いてかかり、木々の切れ 目の空の見える径のところに来ますと懐中電灯がなくてても充分明かるく、危険もなく歩けるような様子なのでした。

後手に縛られた玲子は、それでもときどき木の根や石ころに躓きながらも、私の前を一生懸命に歩いてゆきました。足を運ぶたびに足枷の金具の音がして、刑場に向かう罪人と刑吏のような雰囲気でした。

吊り責めのための枝をたしかめたり、いろいろな用意をする間も、玲子は岩の上に正座させ、足首もつないで逃げられないようにしておきました。太い木の横枝に捨て縄をかけて用意してきた滑車などの準備をしている間も、

「寒いワ……寒いから何か着せて下さらない」

そう言ってうるさいので、黒色のビニール布を猿轡のかわりに噛ませました。さらに後手の縄元を近くの岩角に固定してやりましたので、玲子は身動きできない姿になりました。

うす透けて見えるビニールの生地で作らせた腰巻き一枚の姿で、いま玲子は、後手、高小手に縛り上げられ、つま先立ちにさせられて次の責めを待っているのです。自由はと言えば、わずかに漏れて聞こえてくる呻き声、ただそれだけなのです。あわれにも、後へ解き流された細い長い黒髪が寒さにちぢかんだ乳房の上に垂れかかっているのです。

後手にねじり上げられた裸の女体は、青い月の光に照らし出されて、わずかに揺れていました。私が手ごろな高さの太い枝に滑車をかけて、ここに吊り下げてやるのだ、とばかり玲子の髪を掴んで上向けにして見せてやりますと、玲子は苦しそうに喘ぎ、ごくゆっくりと首を左右に振りながら、「ウムゥ……」と猿轡の下から呻いていました。





小型でも性能のいい軽金属の滑車は、軽やかきしり音をたてて、後手姿の裸女をゆっくりと吊り上げていきました。つま先が地面から離れてゆくとき、彼女は「ウムゥ……」と低く呻きました。

縛り上げられた不自由な姿の玲子は、ごくゆっくりと回りはじめました。両足にかけられた足枷の皮錠に通した縄を引き締め、吊り環にかけて引き上げていきますと、髪の毛は乳房をはなれて、はらはらと散りながら苦しそうに噛まされた猿轡の上へ、さらに喘ぎながらうごめいているその顎の上へと、流れおちてゆくのです。

足首が上がってゆくにつれ、髪は地面のほうへと乗れ下がって、一層凄惨な姿になってゆきました。逆さ吊りにされた白い女体は、高子小手に縛られた手首を中心にその白い背中を見せていましたが、ゆるやかに回っていって、荒い喘ぎの息をつたえてきました。

私は淡い月の光の下で、この吊り責めを見ながら楽しみました。そして岩の根に腰をおろして、一服つけました。またポケットから小さなビンのウイスキーを出して、ちびりちびりと楽しみながら飲りした。何というぜいたくな酒盛りでしょう。何という立派な見せ物でしょう。月光のもと一人たのしむには、何とも贅沢な思いで一ぱいでした。

あまり長い時間にわたって逆さ吊りにしておきますと、失神に近い状態になり苦しさが、少し薄らいでくるもののようです。そこで私は吊り直すことにしました。こんどは足首を吊り上げている縄をゆるめていって、正座した姿のように吊ってやることにしたのです。

細い長い髪が裸の肩と乳房にかかってきて、あわれにも猿轡でゆがめられた顔は、ほとんどその髪の毛にかくされて見えなくなってゆきました。一時間ぐらいも、そのままの姿に吊り上げておきましたら、荒い息遣いも呻き声も何の音も聞こえてこなくなりました。痛さに馴れてきたためでしょうか。それとも責めの苦しさの分量が減ってきているのでしょうか。

私は細い皮紐を何本も束にして作った鞭で尻の肉を叩いてやりました。

(ビシッ、ビシッ)

大きく滑車が揺れて、猿轡におしつぶされた低い呻き声が、わけのわからない音となって、月光の林の中に流れてゆきました。後手姿の白い物体は、またもゆっくりと回りながら皮鞭をうけて苦しみ、呻き続けてゆくのです。

胸をくっきりと締め上げた黒い綿ロープ、その細い腰から吊られた足首の皮具。ゆっくりと回ってくるその姿を見ていますと、横からは髪の垂れ下がっている白い肩と、二の腕に噛んでみえる縄目が見えます。やがてもっと回ってゆきますと、後ろ高く背中の上のほうに吊り上げられた、両方の手首、首筋に喰いこんだ綿ロープなど……、次々と恐ろしい責めの状況が、順ぐりに見えてくるのです。このようにぐるぐる回っていって、次々と哀れな姿態が、この静かな山の中で青い月光に照らされて展開してゆき、私の酒の肴になっていくのです。何という地獄。何という快感。

このゆるやかな回転が止まりかけますと、またしてもあの皮鞭が、するどい音をたてて飛ぶのです。

(ビシッ! ビシッ!)

咽喉の奥のほうで鳴っているのでしょうか。

「ヒイー、七イ……」

というような音がし、そのあーとで「ウムゥ……」という音に変わってゆき、低く重く呻いてゆくのです。

(つづく)


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