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「満月の夜の吊り責め」 」
投稿者= 兵庫県尼崎市 志賀妖一(仮名)

両足にかけられた足枷の皮錠に通した縄を引き締め、吊り環にかけて引き上げてゆきますと、髪の毛は乳房をはなれて、はらはらと散りながら苦しそうに噛まされた猿轡の上へ。さらに喘ぎながらうごめいているその顎の上へと、流れ落ちてゆくのです――。深夜に野外で愛妻を責める悦びを描いた、志賀妖一(仮名)による流麗な文章で彩られた力作投稿作品 。後編です。
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後編 夜明け前

私のこのような吊り責めは、一年ぐらい前から始めたのでした。

吊りの初めは、ただ後手の背がけの縄を木の枝にかけて、つま先立ちからほんの少しだけ地面を離れているだけでしたし、時間もほんの数分間ぐらいのものでした。やがてだんだんと高く吊り上げ、より強烈な苦しみも充分に与えるはげしい吊り責めとなり、そうして逆さ吊りへとなってゆき、野外での吊り責めへと発展していったのです。

今夜の責めなどは、吊り上げておいて鞭打ちを与えるという、最も恐ろしいものになってきているのです。逆さ吊りでも足首だけで吊る本格的な責めと、髪の毛だけで吊る髪の毛吊り責めなど、そのすべてが厳重な、後手高小手緯りのうえで行なうのです。しかも息すらも自由にできないような、ゴムとかビニール布製の猿轡や緘口具などをかけてのものなのです。それは失神するまで、責め上げてゆくほどになってきているのです。

今夜の責めも、はや夜半をすでにまわった時間になっていますから、吊り責めがはじまってから、もう三時間以上も経過しているのです。玲子ははやくも失神したような様子なので、私は滑車の止め縄をゆるめて枝から降ろしてやり、地面にころがしてやがて正座をさせてやりました。

咽喉の音がはげしいので猿轡だけは外してやりましたところ、

「ゆるして……」
「もう許して下さい……」

と、玲子は後手縛りの姿のままの、不自由な体を揺らせて言うのでした。もう夜中の寒さも何も感じないのでしょうけれども、肩に触れてみますと氷のように冷え切っていました。

私はとりあえず前手錠の姿に直してやり、鎖をかけてゴム引き布のマントを羽織らせてやりました。

ごく薄く刷毛ではいたような雲が、月面を音もなく流れてゆきました。林の切れ目の小さな木立ちに見えかくれして、山の小径脇にある小さな地蔵さんを照らし出していました。

岩の上に正座させられた手錠姿の玲子は、にぶい月の光にゴム引き布をぶるぶると震わせて、寒さに耐えているような有様でした。

玲子は皮とかゴムやビニール、ゴム引き布のような防水性で通気性のないものが直接肌にふれる感触が、たまらなく好きなようです。このことは口に出しては言いませんけれど、この種のフェチになってきていることは間違いない事実のようです。縄や鎖での責めの味は、長い教育の期間耐えてきて、今ではかなりの強烈な責めにも何とかついて来るようになっています。

私は月に一度ぐらいは野外での責めや、責め場面の写真のロケなどに縄付きの姿のままで連れ出し、手錠姿のままで昼間歩かせたりもするのです。

月の光の下、こんな思い出に酔っていましたが、じっとしていると寒いようなので、岩室(いわむろ)にとじこめる、次の責めに場所を移動することにしました。やはり裸足のままで、全裸のまま前手錠の姿で歩かせることにします。

ちょうど玲子が座って入れるかどうかぐらいの大きさの岩室があり、以前なにかの仏さまがまつられていたと思われるところです。

ところが今では、誰かに石仏か何かが持ち去られ、単なる岩室となっているのです。その前の広いところで後手姿に縛り直してから、その体をかかえ上げて岩室の中へ入れてやりました。ちょうど正座して、頭の先端が天井に一ぱいの箱のように見えます。

前向きの姿、横向きの縄姿、つぎは後手首に縄の充分見えるように、などと順ぐりに写真を撮ってゆきますが、何しろ岩の荒れ床の上に裸のままの姿ですから、玲子は痛さに耐えられず姿勢の変更を命じられるたびに、猿轡の下から呻き声を洩らして必死に耐えているようでした。

木々の間から見えかくれしていた街の灯もめっきりとその数が減ってきて、もうほとんどの人々は深いねむりに入っているのでしょうか。静かというよりも、むしろ幽すいな感じさえするこの山の中にも、さらに一層、月が冴えてきて寒さもひとしお加わってきたようです。

白い石地蔵なども、何か不気味に見えはじめてきました。東の空がしらんでくるまでには、何時間もかからないでしょう。





岩室の中にとじこめておいた玲子も、もう許してやることにします。

やはり裸足のままですが、手錠と両足首を鎖の短いのでつないで、歩かせました。

歩くたびごとに、鎖のふれ合う金属音が聞こえ、それにはゴム引き布のマントのゆれ動く音が入りまじっているのです。私は静かな林の小径を車の止めてある山門のところまで下りながら、そのサディスティックな音を楽しんだのでした。

月は西の空に回っていました。私は車の駐車灯が見える右段の上まで来てから玲子の猿轡を外してやりましたが、鎖につながれたままの手を顔に上げて撫でまわしているだけで、なにひとつ声も出さず、静かにゆっくりと歩いて下りました。玲子はもちろん、私も言葉ひとつ出ないほどに疲れ切っていたのでしょう。

帰り道の間もなく東空のしらんでくるらしい夜明け前の国道を走りながら、玲子にきいてみました。

「苦しかったか?」
「今夜は死ぬかと思った……」
「そんなに苦しかったのか……」
「そうよ……今までのうちで、 一番くるしかったワ……」

それから、玲子はつづけてこうも言ったのです。

「でも楽しかったわ……とても苦しかっただけに、よけいに……」

月はまだ西の空に、その姿をはっきりと残しておりました。

投稿者=志賀妖一(仮名)


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