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読者投稿弄虐小説 「撮られた双つ花」
作= 羽鳥止愁

N女子大学文学部教授、真鍋隆博、51歳。毎年、彼の元には単位欲しさにふしだらな取り引きを要求してくる女子学生が複数人やってくる。秘めたサディズムを胸に燃やして危険なコレクションを増やす初老の教授の、エスカレートしていく行為とは……。『S&Mスナイパー』1981年2月号に掲載された力作投稿小説を、再編集の上で全4回に分けてお届けしています。
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【3】理不尽な要求

ぎこちない、遠慮がちな動きだったが、切羽詰まる便意には抗し得ない。感じた風を見せ、気をやった真似をしなければ……。それには、少しくらい、濡らさなければ。

指の腹全体でクレヴァスを上下させ、指先で鋭敏な蕾を刺激し始めた。

こんな異常な事態で、果たして、感じられるのか? 見られている恥ずかしさ、襲いかかる便意との板挾みのなかで、感じることができるのか? しかし、やらねばならない。やるしかないのだ。朱美は指の動きを、その感覚を求めて、激しくくねらせた。

「ああ……」

切ない吐息が洩れ始めた。声を出すことでさらに感情を昂めようとしている。事実、自分の声に刺激された。

その刺激に、感覚も目覚め出した。感覚と感覚がお互いに相乗し、朱美は、官能のうずきに悶え始めた。次第にその行為に没頭しはじめた。

「ああ……せ、先生、やっています。やっていますわ――」
「よしよし、もっとだ、もつとだ、朱美君。昇り詰めなければ駄目だよ。最後までいってしまうんだ。しっかり見ているからね、ごまかしはきかんよ」

まるで朱美を励ますように真鍋も昂奮している。

「ごまかしなんて、そんなッ。燃えていますッ――」

事実、もう、演技で止めようという気はなかった。押し詰められた異常な神経がそうさせるのか、自分から目覚めさせた肉欲の愉悦に溺れ込んだのか、朱美には、演技で終わらせる余裕などなくなっていた。

切迫する便意にも責め立てられ、自分の意志をコントロールする力を失くしていた。

懸命に括約筋を締め付けるその感覚すら、最奥の妖しいうずきに自ら連動させる。白い指が、激しく、ゆるやかに、そしてはげしく蠢き……。真鍋には、その指の動きが急流を逆のぼる若鮎を連想させた。

「せ、せんせい、いきます。もうだめ――」

腕全体が激しく動き、呼吸が切迫し、白い喉がのけぞった。おどろに乱れた黒髪が頬にまとわりつき、がっくりと項(うなじ)を折った。


静寂がただよった。激しく掻き鳴らされていた琴の糸がプツンと切れてしまったような……。

真鍋は、そこにただよってくる牝の匂いを嗅いでいた。

しかし、愉悦を極めたその余韻にひたる余裕もなく、朱美は、今度は苦悶の呻きに悶えはじめた。

「せ、先生ッ、トイレに、早くトイレに――」

その時、ピンポンとチャイムが鳴った。

「誰か来たらしい。ちょっと待っていてくれたまえ」
「そんな! 先に行かせて。手錠を外して、足を解いて――!」
「ちょっと待っていたまえ。これをしておいてあげるから」
「い、いやいや。先生、お願いよ」

朱美の哀願をよそに真鍋は朱美の右手を背中に絞り上げ、再びうしろ手錠に留めてしまった。

「そんなッ。トイレに……。約束よ――」
「約束は守るよ。少し待っていたまえ」

白い瓢箪型をした小さな器具を持ち出した。

「栓をしておいてあげるから、しばらく、我慢するんだ」

瓢箪の太いほうを苦悶のアヌスに押しあてた。

「ヒャッ。ヤメテー、イヤー」

じんわりと押しつけられたそれは、周りの襞を押しのけ、やがて、すっぽりと包み込まれた。
瓢箪のくびれを括約筋が締め付け、白い陶器製であろうか、その半分が顔を覗かせて揺れ動いた。

真鍋は出ていった。口惜しさに、キリリと歯を食いしばり、朱美はなす術もなく、その瓢箪を締め付けていた。

しばらくしてドアが開いた。

「ああ、先生、早く――」

救けを求める朱美の眼に、一人の女子学生が映った。

「キャーッ」

お互いに顔を見合い、驚愕の瞳をぶつけあった。羽田ゆかり――同じゼミナールの学生だ。

「ハッ、いや、やめて――」

激しく揺れた。ガタガタと椅子が揺れる。ゆかりもその場に立ちすくんで動けない。真鍋はドアを閉めて鍵を掛けた。

「せ、せんせい……」
「まあ、高津君の横に掛けたまえ。ゆっくり話そう」
「いやッ、来ないで。来ないで――」
「何を言っているんだ。君のその苦しみを解いてくれるのは羽田君なんだよ。羽田君にトイレに連れて行ってもらうんだから」

真鍋はデスクに座った。

「ひどい、ひどい。いやよ――」

許されない。こんな侮辱、辱めが許されるはずがない。いやだ。絶対にいやだ。

「羽田君、まあ椅子に掛けたまえ」
「……は……はい……」

犬の首輪、鎖をつけられ、椅子に繋ぎ留められている朱美の姿に、ゆかりは呆然、声もない。

「いつまでもそこにいたら高津君が余計に恥ずかしがるだけだ。いっそ、ひと思いに見てやったほうが彼女にも救いになるよ。朱美君、君からも頼んだらどうだい、トイレにつれていってくれってね」
「鬼ッ、気狂い。変態ーッ」

閉じ合わすことのできない羞恥の極地を羽田ゆかりに覗かれるなんて。イヤダ――。

「羽田君がこんな話を持ってきたのには少々驚いたよ。成績も優秀だし、ここにいる朱美君とは大違い、性格もおとなしい君が……。しかし、この就職難だ。四年制の女子大は特にひどい。少しでもいい会社に入らねばならない君の家庭の事情はよく分かるよ。二年前だったかね、お父さんが亡くなったのは。せっかく入った大学だからと、続けさせてくれたお母さんの苦労に報いるためにも、いい会社に入らねばならない。そこで、私の親戚がやっている貿易会社に無理矢理頼み込もうと思ってね」

ゆかりはうなだれたまま、真鍋の話を聞いていた。思い詰めてやってきた自分の覚悟を、さらに胸の中に閉じこめてでもおくように。

朱美の呻吟が激しくなった。

「羽田君、高津君は便秘気味だというんでね、今、浣腸をしてあげたんだ。すぐに出してしまっては効き目もないから、我慢させてあるんだが、いよいよ限界のようだ。君、すまないがトイレに連れていってやってくれないか」
「イヤッ、いやよ――。来ないで――」
「いいのかね。意地っ張りだね、君も。でも、そんなところに爆発されたんじゃたまらないからね、羽田君、足の手錠を解いてやってくれたまえ。その前に君も裸になってもらう。そのほうがお互い、遠慮がなくなっていいだろう」

俯いて、じっとしているゆかりの身体は小刻みに震えていた。

「朱美君、ゆかり君に頼んだらどうだ。早く服を脱いでくれって、ゆかり君が裸にならない限り、君はトイレにつれていってもらえない」
「ウウ……、ククッ――」

たったひとつの拠り所であるアヌス栓を締め付けて、朱美は全身にあぶら汗を光らせ始めた。キリキリと、締め付けるような鈍痛は、下腹全体を激しく上下している。

「ああ、く、くるしい……、たすけて――」
「羽田君、裸になってやってくれないか。高津君はなかなか負けん気が強いから、君に頼むことができないんだ。でも、このまま放っておくわけにもいかん。君が裸になってくれたら、すぐにトイレにつれていってやるから」

理不尽な要求をなじり、口答えする余裕もなく、ゆかりは観念した。理不尽を知って応じた話ではないか……。

ゆかりはブレザーに手をかけた。

「こっちへ来て脱ぎたまえ。私の前で」

真鍋はゆかりをカメラの前に立たせた。朱美の恥ずかしい苦悶の姿を背に、ゆかりは真鍋と対した。

ブレザーを脱ぎ、セーターを脱ぎ、スカートを落とした。スリップを床に舞わせると、ブラジャーとパンティ、パンティ・ストッキング……。

「高津君は素っ裸になって三十点稼いだ。そして首輪を付けて、牝犬になって一十点、そしてくれはなかなか見ものだったよ。牝大のオナニーをやって二十点。この頃の学生は何でもするんだね。感心したよ。あと十点で朱美君は合格だ。もう卒業できたようなものだ。もっとも、君の場合は卒業は問題ないのだから点数なんて要らないな。ぼくを信用してくれるかどうかだが、君がその気になれば必ず就職は責任を持つよ、安心していたまえ」

ゆかりはストッキングを脱いだ。 
真鍋は、モニタート交互にゆかりの様子を見ていた。

朱美の苦悶の呻きを後ろで聞きながら、ゆかりはブラジャーを外した。朱美はもう何もかも見せて真鍋に翻弄されているのだ。異常と思える行為だが、自分の最後の布切れを取り払ってしまうのに、その朱美の羞態は、わずかな救いとなってくれた。

真鍋の命令で、ゆかりは両手を頭の上に組んで全裸像を晒した。天井を見詰めるようにして唇を噛んでいる。わななく膝頭がカタカタと鳴った。

真鍋は満足であった。朱美が真っ赤なバラの花ならばゆかりは可隣な白百合の花を思わせる。二つの美しい花を、これから存分にいたぶれるのだ。

ゆかりに後ろを向かせた。美しいヒップの豊かなラインが、胴のくびれをさらに細く見せていた。深く切れ込む蟲惑の臀裂も悩ましい。

ゆかりは苦悶に呻く朱美の姿をかすむ瞳のなかで見ていた。「よしよし、ゆかり君、綺麗な肌だ。感心したよ。さ、それじゃ、約束だ。その苦しそうにしているお嬢さんをトイレにつれていってやってくれるかね」

デスクに近寄らせて、手錠の鍵を渡した。

モニターに、近寄ってくるゆかりの股間がアップになって、ぼやけていた。

(続く)

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