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『S&Mスナイパー』1982年12月号 読者投稿小説
「H感覚な午後」
作= 大沼正

好奇心旺盛でちょっとHな19歳の女の子・真理にふりかかる、かなりアブない凌辱体験。年頃の乙女はショックの中で何を思い、何を感じたのか……。『S&Mスナイパー』1982年12月号に掲載された読者投稿小説を、再編集の上で全6回に分けてお届けしています。
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【4】待ち構える淫靡な罠

「凄えなあ……」
「ああ……」
「モロだぜ。パックリとよ」

縛り上げられた女が、大きく股間を晒らしている。突き上げられた尻に、浣腸器が深々と差し入れられている。紙面を埋め尽くす淫らな写真の数々に、3人は一様に喉を鳴らし、頻りと生唾を呑んでいる。

「ここへ、ぶち込むんだぜ」
「堪んねえだろうな」

穴のあくほど見入っている雑誌の表紙には、「S&Mスナイバー」とある。圭介が兄の部屋から持ち出してきたものだ。

「凄え本だよな。だけど、スナイパーって何のことだ?」
「バッカだな……おめえ、英語習ってんだろう。狙撃手のことだよ」
「ズドーンと、狙い打ちだよ」

圭介が卑猥な手付きをしてみせる。

「俺んちの飯場にも、こんな本がゴロゴロしてらあ。そりやあ凄いぜ」

正彦が昂奮気味に言う。その時、真理が駆けてきた。上下ともに揃いの真赤な夕オル地のホットパンツと、タンクトップといういでたちだ。真理も3人に気付いたのか、チラッと一瞥をくれてから、素知らぬ顔で公園の中ほどにある図書館の壁に向かって、ジョカリーのラケットを振り出した。

「あいつだぜ……」

3人の位置からは真理の後ろ姿が窺見る。ラケットを握り、腰を引いて前屈みに構える真理のホットパンツには、臀部の盛り上がりがくっきりと眩しいくらいに突き上がっている。

「……堪んねえ尻だぜ」
「こんな雑誌見てからだと、もうどうしようもねえな」
「俺……もう、ギンギンだぜ。あの尻の喰い込んだ辺り見てるとよ、噴き出しそうで……」

3人は、また大きく喉を鳴らして、それぞれに舌舐めずりした。

「俺、あいつに握られたこと、あるんだぜ」

新治が得意そうに声を上げた。

「えっ……本当かよう」

後の2人が、同時に目を大きく見開いて新治を見遣る。

「ああ、モロに俺の物を掴みやがってよう、虚ろな目で溜め息つきながら扱きやがるのよ」

新治は随分と話を脚色して、とうとう公園のトイレの中で真理の口いっぱいに頬張らせ、舐められているうちに思わず射精したことになってしまった。

「俺、もう、とろけそうでよ。とうとう出しちまったら、美味そうに喉を鳴らして飲みやがるのよ。あいつ……随分と好き者なんだぜ」

新治はニンマリと笑って見せた。

「あの可愛い口で、おまえの物をしゃぶったのか……」

正彦は信じられないといった顔だ。

「で……本番は、やらなかったのかよう」

圭介の眼差しが煌めいている。

「ああ……隣りに誰か入って来やがってよう。あいつ、慌てて逃げ出しやがった。もうチョイだったのによう」

3人の間に奇妙な静寂が訪れた。誰かが大きく喉を鳴らした。

「やろうか……」

正彦が小さく言う。 

「ああ、こないだの仕返しもあるしよ。たっぷりおかえししなくちゃ……」

圭介が顔を引き攣らせたように笑う。 

「よおし、やろう。今度こそぶち込んでやる」

新治が、コックリと頷いた。

「この本みたいによう。縛り上げて写真をいっぽい撮ってよう。さんざんいたぶった後で……」

3人はしぱらくくヒソヒソと円を組んでいたが、やがて圭介が立ち上がると、勇んで自転車を走らせていった。家へポラロイド・カメラを取りに行ったのだ。

残った正彦が目を輝かせ、遠くの真理の腰の辺りに人差し指で狙いを定め、ズドーンと小さく叫んでいた。新治の目は、喰い入るように真理に注がれている。

ひとしきりジョカリに打ち込み、汗びっしょりの真理は、芝に転がって休んでいた。炎天下の運動で、さすがに息が荒い。首に巻いていた真紅のタオルで拭う。

仰むけに眺める空に、黒雲が涌き始めていた。涼しい風が吹き降ろしてくる。

――また今日も降ってくるかな。早く帰らなくちゃ……。

真理が立ち上がりかけた時、バタバタと新治が駆けてきた。

「酒屋のお姉さん、大変だよ。ちょっと来てよ。どうしていいのか分かんなくてよ」

新治は真理の手を掴んで、急ぎたてるように引く。

「どうしたのよ?」
「ほら向こうに正彦の家の倉庫があるだろ」

公園の脇を流れる川伝いに、東に500メートルも下った田圃の中に、広い敷地を取って真宮組の資材置場と倉庫がある。どうやらそこは、正彦や悪餓鬼どもの恰好の溜まり場になっているらしい。

「今は、みんな仕事に行ってるから倉庫には誰もいるはずのないのに、妙な音がするので覗いてみたら、女の人が縛られて泣いているんだよ」
「だったら、早く助けてやったらいいでしょう」
「だって……」

新治は急に声をおとし、タンクトップを突き上げた真理の乳房の大きさを計るように凝視してから、顔を真っ赤にしてしどろもどろ。

「その人、素っ裸で……股を開げるように空中に吊られているんだよ」
「まあ……!」

真理はドキンとした。

「俺達、どうしていいか分らなくて……。確かお姉さんがここにいるの知ってたから、急いで俺が呼びに来たんだ。俺達じゃあ……あのロープほどけないよ。恥ずかしくって」
「でも、近くに誰かいるのじゃなくて? そんな悪いことする奴だから、きっと凶暴な……」
「うう……うん」

新治は大きく頭を横に振る。

「正彦と圭介が外で見張っているけど、その女の人以外に誰もいないよ。早く、早く、……早くほどいてやらないと大変だよ」

嘘でもなさそうだ。裸で女が股間を晒らして縛られているなんて、子供が思いついて口に出すようなこととも思えなかった。好奇心が人一倍旺盛な真理は、急いで新治の後を走った。

「待って……先に警察に届けなくちゃ」
「駄目だよ。女の人、すごく苦しそうなんだから。先に降ろしてやんないと……。それに男の人に見られるの可哀相だよ」

ハアハア言いながら金網囲いの一部に、やっと人ひとり通れるくらい開いた穴を潜って資材置場に出ると、倉庫の前にいた2人が、

「早く、早く」

と手招きする。上手の上の道を挾んで前は川、三方は広々とした田圃の中で、遠くを電車の走る音がする。ちょっとやそっとの声や音など、高い空に吸われて何処へも届きそうにない。如何にも犯罪の匂いがしそうなところだ。

(続く)

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