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私の嗜肛錯誤の日々 第一回

告白者=広瀬謙吉(仮名・50歳)

女の顔は忘れても、アヌスだけはハッキリ覚えているのです――。様々な女のアヌスを味わい尽くしてきた一人のマニア男性が綴る、エロティシズムへの冒険心と猛々しい肉欲まみれの放蕩録。『S&Mスナイパー』に送られてきた貴重な手記を全三回に分けて再録します。
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一、ケツ穴道楽

早いもので、私がこの世に生を享けてから五十年になろうとしている。 東京は築地の高級料亭のひとり息子だった私は、我侭三昧に生きてきた。

まあ、その結果、両親が心血を注いで築きあげた身上をまさに蕩尽してしまったわけだが、今、こうして、下町の堀立小屋のような貸家で、荒淫のためにすっかり精気を喪った躯を引きずりながら気息奄々といった体で時を過ごしていても、まったく後悔の念はない。

今まで関わってきた数多くの女たちとの珍奇な交情を想い出していると、一日などはまたたく間に過ぎてしまい、仕事もなく訪ねてくる女もいないのだが、無聊とは無縁なのだ。

両親の身上を蕩尽したと私は言ったが、それは、今の私に残された金に較べればの話。私とて商売人の端くれだったわけで、一汁一菜の粗食に甘んじていれば生きていけるだけの金は残してあるのだ。 我田引水だが、身を持ち崩し野垂れ死にしたとしても世間様が、「やっぱりねェ、あれだけムチャをすれば、あたり前だ」と言われても不思議のないほどの私が、今だにこうして生き永らえているのも、一種の才覚ではあるまいか……。

ことほど左様に私は、全盛時、「いやァ、すごい遊びっぷりですな。ムチャを通り過ぎて、こりゃ、もう、立派です」などと、妬み半分、馬鹿にされていたほどお人好しではなく、小ずるく、また、醒めている所があった。

いくら金があったとしても、おつむが足りなければ、金を毟り取られるだけで、玄人、素人、生娘を問わず女を籠絡し、次々と変えていく芸当ができるはずがない。

さて、いったいぜんたい何故そうなのか、かいもく見当もつかないのだが、私は女に惚れたことがない。「おめェ、あんないい女、もう二度とめっけることなんかできねェぜ」などと、道楽仲間が首をひねるような女も平気の平左で捨てたものだ。

こんな風に女そのものには何の未練も感じない私だったが、こと、女のケツの穴に関しては、尋常でない執着があった。 女のご面相は忘れてもケツの穴の有様は、ひとつひとつ克明に想い出すことができるのは不思議と言えば不思議なことだ。


二 、ケツ穴淫婦・美代子

初めて女を抱いたのが、十六歳。料亭で住込みで働いていた二十六歳の賄婦だった。離婚歴のある女で、日常の起居振舞には楚々とした風情があるのだが、こと、同衾に至ると淫婦に変じ、四十八手裏表、ありとあらゆる秘技を尽くして、私の若い肉体を味わうのだった。

その女との関係は、途絶えながらも一年余り続いただろうか……。女の部屋を訪れる男が私だけでないことは、うすうす感じてはいたが、その女が新しい働き場所を求めて出て行ったとき、私は身を引き裂かれるような痛みを覚えたものだった。

世間でいう初恋とは、あまりにも懸け離れた、爛熟とでも形容できる関係ではあったが、私にとっては紛れもなく初恋だったのだ。



爾来、何人かの女と情交を重ねたのだが、その中には生娘もいた。よく、「生娘を己れの手練手管で成熟させていくのが一番の愉しみだ」などと言われているが、私はそれほど感興を催さなかった。「……男なんか、掃いて捨てるほどいるもんさ」などと、男の身も心も知りぬいているつもりの成熟した女を、さまざまな駆引を弄して、骨抜きにする醍醐味にまさるものはこの世にない――と私は信じている。 こうして女の肉悦を探求するうち私が到達したものが 秘部の奥にひそやかに息づいている可憐なアヌスだったのだ。

アヌスはもちろん肉悦を昂める効用があるのだが、その醍醐味は何と言っても女の羞恥の源泉という一点にかかっている。

どんな女でもアヌスを嬲られれば羞恥のために身の置きどころかないといった表情を浮かべて身悶える。羞恥と快感に悩乱する女の姿態ほど私を煽りたてるものはこの世にはないのだ。 さて、私が初めての女のアヌスに興味を持ったのは、十九歳のときだった。

そのころはもう一端の遊び人気取りで、両親に幾度となく諌められ、勘当まで申しわたされたりもしたのだが、ひとり息子の私を本気で勘当するわけはないと高を括り、色道一直線だった。

相手は二十三歳。近所の小料理屋の手伝いで、心中未遂事件を起こしたこともある直情型の女だった。名を美代子といった。「おい、謙吉よゥ、あの美代子と懇(ねんごろ)になってみなよ」と、これまた私に劣らぬ放蕩児の研一郎にけしかけ喋られたとき私は、

「と、とんでもねェ、あの手の女は御免だよ。惚れられちまって、思い詰められてよゥ、寝首を掻かれちゃ、股間のムスコに怨まれっちまうよ」

研一郎の家は神田の医療器具問屋で、私の家の身上とは較べうるほどのものもなく、研一郎はどちらかといえば、私にタカることが多かったのだが、なかなか気風がよく、その上、色の道に関しては旺盛な探求心を持ち、奇抜な思いつきを私に語って、飽きさせることがなかったので、私のお気に入りだった。

「そこをうまくやるのが、男の甲斐性じゃねえか。美代子はきっと床上手だぜ。おめえ、言ってたじゃねえか、もっと刺激的な女はいねえか、って……」

その研一郎にあれこれと言いくるめられ、その気になったのが、アヌス開眼の契機になったのである。研一郎が何気なく呟いた言葉が胸底に引っかかっていたことも確かであった。

「……あの手の女はケツの穴でもヨガるかもしれねえなァ」

そのとき私にはその言葉の持つ意味がよく分かっていなかった。四十八手を愉しむことだけが、まだ若い私の快楽だったのだ。

心中未遂事件の苦い思い出から解き放たれていなかった美代子には私のような軽佻浮薄な男は慰めになったらしく、一、二度喫茶店で会っただけですぐに肉体関係を持つことになった。主に美代子の間借りしている部屋だった。

「あの人も謙吉さんみたいにノンビリしたところがあればねェ……あんな事件を起こさなくても済んだのに……」

床に入る前、小さな卓袱台を挾んでお茶を飲んでいる美代子はシンミリ言ったものだ。

私はその言葉を聞くと、「こりゃァ惚れられる心配はねェ。美代子にとって俺は気軽な慰めなんだ……」と、安心したものだった。 永い間孤閨を保ってきた美代子の乱れぶりはたいへんなものだった。

それを予想していた私は美代子を焦らせに焦らせ、着物、襦袢……と一枚ずつ脱がせては、掌や首筋に軽く口吻を注ぎ、また、ひと休みしてはムダ口をたたくといった按配で、美代子は裸に剥かれる前にすっかり乱れ、むっちりと脂ののった内腿をしとどに濡らせてしまったものだ。

「……ああ、謙吉さん、あたしこんなに乱れてしまって……、でも、もう止められないのよゥ……早く、早く……して……」



私は仰向けに寝るといきなり騎乗位で交った。それは美代子にとって衝撃ともいえる快感だったようだ。

「ほら、美代子、好きなだけ男の躯を愉しみな……」

私に促された美代子は欲情を抑えることができなくなり、腰を激しく振り立て私の逸物を貪ったのだった。ときには、腰を浮かせ私の逸物を吸い上げ締めつけるような行為までした。 幾度目かの絶頂のあと美代子は虚脱状態で私の上体に倒れ被さった。

それからが私の本番である。激しい興奮に躯を痙攣させるように震わせ、肩で息をしている美代子の秘局を私は突き上げた。

「うっ! ああッ、たまんない」

美代子の顔は、恍惚を通り過ぎて苦痛にも似た表情を浮かべていた。

私の胴を太腿でギュッと挾み込み、私にしがみついている美代子の中に私は果てた。全ての精気を美代子の中にぶちまけたつもりだったが、私の若い肉体はたちまち甦ってくる。

私の逸物が美代子の秘局の中でまたムクムクと鎌首をもたげてくると、ふと、研一郎の言葉が浮かんできた。

――あの手の女はケツの穴でもヨガるかもしれねえなァ……。

私は意識が朦朦としている美代子の尻に両手を回し、左手で尻たぶをギュッと掴み、右手の指をアヌスに這わせた。

美代子はピタッと躯を痙攣させると、瞼をうっすらと開き、私の眼を覗いた。美代子の瞳に浮かんでいるものは、拒否のそれではなく、アヌスに感応していることを物語っていた。

自信を得た私は右手の指を美代子の唇に当て、

「ホラ、ちゃんとしゃぶって……そうじゃないと痛いかもしれないぜ」

と言った。美代子は私に言われるまま、私の指をいとおしむようにしゃぶった。美代子の唾液がタップリとついた指を私はふたたび美代子のアヌスに当て、クリクリと揉みほぐしながら侵入させてみた。



「あっ、うう! い、いい、いいわァ」

美代子はせつなげな声をあげ、アヌスを収縮させた。私の指は、それほど力をこめるまでもなく美代子のアヌスに吸引されていった。

私の逸物は完全に息を吹き返していた。

女の秘襞と直腸襞の境は薄い。つまり、その境は私の逸物と指で擦りたてられることになる。私は指と逸物の律動を合わせたり、あるいは、逆行させたり、はたまた、擂粉木(すりこぎ)のように回転させたり、いろいろと工夫をこらしながら美代子を刺激したのだった。

(続く)

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09.08.19更新 | WEBスナイパー  >  スナイパーアーカイヴス
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