特選AVレビュー『中高年夫婦の性生活5』（FAプロ）

たかがセックス、されどセックス。家庭の安定はセックスにあり――。様々な夫婦たちが織り成す十人十色な性生活の模様を6つのケーススタディで覗き見る、ヘンリー塚本的人生賛歌！
長年連れ添った夫婦は、いつしか男女という間柄ではなくなっていくものだと思う。一緒に住んでいれば、嫌な部分も目につくし、時には激しい喧嘩をすることもあるだろう。しかし、馴れ合いになった夫婦でも、性生活が充実していれば、心身共にゆとりが生まれ、パートナーとのつながりがより深くなるもの。お互いに穏やかな気持ちで居続けるために、セックスで愛を確認するというのも1つの方法だ。本作は、中高年夫婦の性生活を赤裸々に描いたストーリー。

セックスに飽きた・面倒臭い・異性として見ることができないと、セックスレス傾向の夫婦には、作中に登場する夫婦たちが快楽に溺れる姿から刺激を受け、自身を奮い立たせてもらいたい。中高年になってまでセックスなんて......と尻込みせず、生涯現役で性生活を謳歌することの意味を改めて考えてみよう。

本作は、昭和エロスにとことんこだわり続けている、ヘンリー塚本監督作品。映像や設定などにどこか懐かしさが感じられるのも魅力だ。6つのストーリーを織り込んだオムニバス構成で、それぞれ趣向や性癖が異なるのも特徴だろう。夫婦の数だけセックスの形がある。パッケージには「家庭の安定はセックスにあります」のキャッチコピー。ありがちな言葉だが、鑑賞後はその言葉の意味を噛み締め、筆者は何度も頷いた。結婚生活が長くなっても、肌を重ねることはすごく大事。時には、男女に戻って絡み合うことで、お互いに新鮮さを取り戻せるはず。

1話目は、「出張の朝　眠っている妻の中に挿入」。早朝起き出した夫が、眠る妻に挿入するのが何よりも悦びだという一風変わった性癖の持ち主。眠ったまま挿入されている妻を見ると、眠り薬を飲ませて犯している気分になれるらしく、妻が眠る隙を狙うセックスが楽しみで仕方ない。反応があったほうが楽しいだろうと筆者は思うが、妻が眠っている姿を想像して、ウキウキで出張先から帰宅する夫の表情には微笑んでしまう。とはいえ、妻もやっぱり抱かれたくて、眠ったふりをする場面もあって、淫らに夫を求める正直な一面を覗けてほっとした。

6話の中で一番身近な問題じゃないかと親近感が湧いたのは、2話目の「きた！　家内も驚く勃起薬　月4で狂ってます」だ。妻はぱっちりお目目の笑顔美人で、すごくキュートな女性。一方、夫は白髪混じりですっかり老け込み、性生活も徐々に下降気味。近頃セックスで妻を満足させることができずに悩んでいる。妻は、そんな夫でもセックスがしたいという願望を持っている一途な女性で、夫を励まして自信を取り戻してあげたいと頑張っている姿に強い愛を感じる。そんなある日、二人が見つけたのは、最近よく見かける勃起薬の新聞広告。嬉々とした表情を浮かべ、電話で取り寄せることになった。

この勃起薬の効果がすごい！　飲んで1時間で効果が現われる。久々にそそり立つ自分のサオを嬉しそうに眺め、さらには妻をイかせることもでき、男としての自信も蘇ってくるという流れだ。長時間の挿入もできるようになった夫に、妻も「あなた、素敵よ」と目を輝かせて感じまくり。「あなたの硬いおチ○ポが好き」とにっこり微笑む妻が抱きしめたくなるなど可愛い。「イケた？」と不安げに妻へ問いかける優しい夫にも好感が持てる。派手なプレイがないからこそ、中高年らしさが滲み出ていて良かった。また、昨今多い悩みを取り上げた題材なので共感できる部分が多く、一番印象に残ったストーリーだ。中高年になると中折れが増えるそうだが、それがセックスレスのきっかけになることも否めない。勃起薬の力を借りたとはいえ、夫婦で乗り越えて二人で交わる悦びや快感に再び目覚めたのは、すごく素晴らしい努力と思う。そこから、妻はどんどん夫とのセックスに開眼し、暇さえあればおねだりして交わるのだが、それはそれで結果オーライ。

3話目の「舐め尽くして味わう夫婦生活」は、舐めることが大好きなちょっと変態趣向を持っている夫婦の物語。舐めるといっても限度があるが、この夫婦はとにかく延々と舐め続ける。お互いの秘部を味わい、感触を舌で確かめ、アソコの香りで癒やされるのだ。そこまでやる～？と思うほど、とにかく舐め舐め。舐めるって、よほど愛がないとできないことだろう。だって、放尿後は拭かずに舐めてもらうとか、筆者には到底できないことばかり。愛があるゆえ、どんなに汚れていようと、年老いてシワやたるみがあろうと、夫婦という固い絆で結ばれたから成せる技かもしれない。う～ん、奥が深い！　

作中には、義理の息子とヤっちゃうお母さんのストーリーや、若い女の同居人とセックスして妊娠させちゃった男のストーリーも含まれている。だから、本作は「中高年の性事情」といったほうが正しいかもしれない。どんなカップルでも、長くいるとマンネリ化するものだが、探究心旺盛な本作の中高年たちには正直驚いた。人生も折り返し地点に来て、これからも夫婦として仲良く過ごしていくためには、セックスで愛を確かめ合うことはとても重要だ。セックス中なら、普段口にできないはしたない言葉や愛している気持ちを素直に言葉に出せるし、本能でぶつかりあえる部分もある。やっぱりこの人と結婚してよかったと再認識したいなら、セックスを軽視するべからず。

本作は、夫婦の悩みや絡み描写が1 話ずつ丁寧に盛り込まれていて、完成度が高い1本になっている。中高年になると子どもがいたり、体裁を取り繕うことばかりを考えたりで、性生活が後回しになってしまう人が多いだろう。真面目に働くばかりが人生ではない。愛して結婚した相手だから、二人きりの時はどこまでもエロく、たっぷり汗を掻いて、甘い蜜を溢れさせ、スリリングなセックスを謳歌することも大事だ。夫のモノが欲しい・妻を欲情させたい。この感情は、年齢を重ねても忘れてはいけませんな。昭和エロスの巨匠・ヘンリー塚本作品だけあり、説得力があるから共感して惹き込まれてしまうのもポイントだ。

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『中高年夫婦の性生活5』（FAプロ）

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