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20年前に夫を交通事故で亡くし、女手一つで息子を育ててきた母・美緒。しかし息子はある事情から引きこもるようになり......。後悔しても償えない過去を胸に、美緒は我が子にすべてを捧げようとする。目的地の駅に降り、旅館まで河原の道を歩く母子。美緒が足元の草むらで野球のボールを拾うシーンがある。少し離れ、笑顔で「いくよ」と投げキャッチボールを誘う。ボールはワンバウンド、ツーバウンド、「やっぱりお母さんの力じゃ届かないか」と力なく微笑むが、肇は暗い表情になる。「ごめん、嫌なこと、思い出させちゃったね」と息子の腕を取って歩き出す。ココがラストシーンの重要な伏線になる。実にウェルメイドなシナリオだ。こういう、見せるドラマは最近のAVではとても少ないので貴重だと思う。そして宿に着いたとき、肇は突然こんな告白をするのだ。「野球部を辞めた理由は、実は怪我のせいじゃないんだ。治って復帰したらチームメイトから無視されたんだ」と。運動能力と野球センスに飛び抜けた彼は、他の選手のことを考えなかった。いつも俺が俺がと独りよがりばかりだった。今も、本当はいい加減働かなくちゃと思っている。でも、職場でまた人に嫌われたらと思うと恐いんだ、と。そんな肇を「ごめんね、何も気づいてあげられなくて」と抱きしめる美緒。「でもお母さんは肇のことを嫌いになったり、裏切ったり、絶対しないから。だからゆっくりと、他の人とも接していきましょう。誰かに嫌われても、お母さんがいるじゃない」と。
そして美緒は一緒に露天風呂に入ろうと誘う。恥ずかしがる肇を「たまには親子水入らずもいいじゃない」と手を引き脱衣所へ。ココで初めて彼女の裸体が見られるのだが、森下美緒さんは2016年『初撮りおばさんドキュメント』(マドンナ)でデビューした美熟女。現在43歳というがウエストも細っそりして、バストも大きいのイイ垂れ具合の美しい肢体だ。女優の木村多江を思わせる、いわゆる〈薄幸顔〉なのも憂いがあってソソる。露天風呂に浸かり、「腕の傷はもう大丈夫なの?」と息子の腕に触れたとき、「母さん」と抱きしめられた。「俺、母さんのことがずっと大好きだったんだ。もう我慢出来ないよ」とキス。「でも私たち、親子なのよ」と言いながら、乳首を吸われると母性と女性が溢れる。クリトリスを触られ「気持ちいい?」と聞かれると「気持ちいい」とキスを求めてしまう。「母さんのアソコ、見せて」と湯船の縁に大股開き、クンニされ、「俺も」と誘われるとその若い男性を握りしめ、たまらずフェラチオ。「ああ、こんな大きくなって、スゴイわ」「だって、俺、母さんが好きだから」「嬉しい」と夢中になって頬張る。こうして母と子は結ばれ、部屋に戻っても朝まで何度も求め合うことになる。
以前、熟女AVメーカーの統括プロデューサー氏に「母と息子の近親相姦ものは売れる、外れがない」と聞かされたことがある。僕が「どうしてなんでしょう」と問うたとき、こんな答えが返ってきた。「男は全員マザコンだ、と言えばそうかもしれない。しかしマザコンだからといって、誰もが母親とセックスしたい願望を持つだろうか?」。そう考えた末、彼が導き出した結論は以下。「つまり母子近親相姦AVを求めるユーザーは、究極の優しさが欲しいんじゃないか。何を言っても何をしても許される、否定しないで優しく受け入れてくれる女神のような母性。それが妄想の中の〈母〉という存在なのではないか」。本作、最後のセックスの終わり、肇が美緒の乳房に射精する。すると彼女はそのペニスを優しくお掃除フェラで精液を飲み干し、「中に出してくれてよかったのに」とひと言。それに対して肇は「母さんの身体に出したかったんだ」と言い、美緒もまたその言葉に「嬉しい」と息子を抱きしめるのだ。これがおそらく、件のプロデューサー氏の言う「究極の優しさ」「無上の許し」なのだと思う。さて、物語は前半に出て来た河原で、肇が再びあの落ちていた野球のボールを拾うシーンで終わる。その先はネタバレになるので詳しくは書かないが、息子が大人になり、これからは母に守ってもらうのではなく、自分が母を守っていくのだと決意する、感動的なラストである。
文=東良美季
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『背徳母子の温泉旅情 森下美緒』(キネマ座)
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東良美季 1958年生まれ。編集者、AV監督、音楽PVディレクター、グラフィック・デザイナーを経て執筆業。著書に『猫の神様』(講談社文庫)、『東京ノアール~消えた男優 太賀麻郎の告白』(イースト・プレス)、『代々木忠 虚実皮膜~AVドキュメンタリーの映像世界』(キネマ旬報社)、他。
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19.10.21更新 |
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