毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第9回 「川中理紗子」 【2】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=川中理紗子
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」、第9回川中理紗子さん掲載中です!
なんかもう、なるようになれー! このまま売られちゃっても、しょうがないわ、みたいな
もう何でもいいっスーって。あはは
アクティブな引きこもり生活
もう何でもいいっスーって。あはは
小中高と漫画を描き続け、漫画を学ぶために専門学校に入る。そしてアルバイト先に美術モデルを選ぶ。美術とはいえ、大勢の前でヌードになる仕事だ。抵抗はなかったのだろうか。
「いやー、もう全然なかったです。なにしろ漫画の中でさんざん裸を描いていたので」
しかし描くのと脱ぐのとでは全然違う。
「そうですよね。でもなんか……う〜ん。ちょうどそのとき、人生にすごく絶望していたので。もう何でもいいっス、みたいな。……自分に限界を感じたというか、なんか何やってもダメだなとか。すごい突然、人生について考えてしまったんですよ。人生について考えた挙句に脱ぐってなんですかね(笑)。でも本当にそのときは、もう何もかもどうでもいいみたいな状態だったので」
失恋ですか?と問うと、ものすごい勢いで否定した。どうやらその逆であるらしい。
「私、本当にブサイクだし、漫研みたいな女だし、全然モテないんですけど、自分でいうのもおこがましいんですが、そういう人にはすごいなんか……。重い手紙とかをもらったりするんですよね」
そういう人というのは、クラスメイトや先生のこと。川中理紗子に近づいてくる人は、どうやら一風変わった人ばかりだったようだ。
「やっぱり彼らは自分の世界観を紙面に表現しているだけあって、すごいポエミーな恋文をもらったりするんですよ。あとは、漫画みたいなシチュエーションでクリスマスイブに会議室に呼び出されて、王子様のような台詞を語られたり。中には健気だなって思う人もいたんですが、やっぱりちょっと私には無理で……」
川中理紗子は優しくて、誰にでも微笑みかけるような女性だ。その雰囲気に、お姫様のような妄想を駆り立て、勝手なイメージを押し付けてくる人が多いだろうことは想像がついた。相手を傷つけないようにうまく逃げようとするうちに、自分が疲れてしまったのが当時の状況ではないだろうか。
「……私、ここに居ていいのかなって思ってしまって。周りの人は『いや、お前はオタクだからそこにいていいんだよ』ってきっと言ったでしょうけど。なんか個人的にはすごく目が覚めてしまって」
さらに追い討ちをかけるように、身近な友達が鬱病になった。鬱病は周りの人にも影響を与えやすい病気だ。
「彼女とは同じ専門学校の寮に住んでいたんですが、私は結構おせっかい焼きなんで『ほらほら学校行くよ』みたいな。でも彼女は行きたくないって言ってるわけで、私がやってることって本当は迷惑なのかしら、と思ったり。すごい深読みしてしまう性格なんで、ああ私ってぇみたいな。こんな人生嫌だ〜みたいな。基本的にマイナス思考なんですよ。小中の頃は能天気に騒いでいたけど、ちょっと落ち着いてきたら、どんどん本来の暗さが出てきてしまったんじゃないんですかね。別に何があったわけでもないんですけど……」
川中理紗子は自分の中で次々と想像を膨らませ絶望的になり、ついには学校にも行かず、部屋に引きこもってしまった。だが引きこもりたくても寮生活では寮母さんが来てしまう。仕方なく外をフラフラ歩きまわり、引きこもりの気分に浸ってみるが、本物の引きこもりとはいえない。そんなとき、美術モデルの面接を受けた。北海道のストリップ劇場を紹介され、ポーンと北海道まで行ってしまった。
「紹介してくれるっていうなら行くだけ行ってみようかなみたいな。劇場って言ってるし、演劇はすごい好きだったんですよ。だからストリップっていうけど、『劇場!?ン?』みたいな。なんかもう、なるようになれー! このまま売られちゃっても、しょうがないわ、みたいな。もう何でもいいっスーって。あはは」
売られてもいい気分、とはなかなかなれるものではない。川中理紗子はそこまで追い詰められていたのだろうか。
「えへへへ……う〜ん、正直ぶっちゃけると、そのとき自殺サイトとかチョー覗いてました」
一時期、流行った自殺サイト。掲示板で集まった見ず知らずの人間同士が集団自殺をする行為は、社会現象にまでなったほどだ。彼女が覗いていたときは、ちょうど全盛期かもしれない。
「なんか、別に生きてなくてもいいじゃんみたいな。鬱病を否定するわけじゃないけど、集団生活の中ではちょっとね。当時を振り返ると痛いなあ私、と思いますよ」
まるで特技のように自分を責めていた。
(続く)
川中理紗子
渋谷道頓堀劇場所属。2003年07月21日、札幌道頓堀劇場にてデビュー。小柄な身体で、可憐な舞姫を感じさせる演目はストリップの常連客ならずとも目を瞠る。先月に5周年を迎え、その際に披露された演目も大変好評である。
香盤情報
渋谷道頓堀劇場
8月21日-31日
TSミュージック
9月1日-10日
A級小倉劇場
9月21日-30日
撮影=インベカヲリ★
モデル=川中理紗子
取材協力=渋谷道頓堀劇場、若松劇場
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詩田笑子 【1】>>>【2】>>>【3】>>>【4】>>>【5】
インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.08.23更新 |
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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫