毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第11回 「天羽夏月」 【3】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=天羽夏月
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第11回、天羽夏月さん掲載中です!
自分がずーっと打ち込んでたことを諦めなきゃいけないって
身を切られる想いですよね。何よりもきつかった
絶望の淵からショーパブ
身を切られる想いですよね。何よりもきつかった
脳波検査を受けた結果、脳に血の塊が発見された。天羽夏月は目の前が真っ暗になった。
「ふわって体が浮いたところまでは覚えてるんですよ。あとは、頭が痛いとか、気持ち悪いしか記憶にない。でもその日、私はずっと稽古を続けてたらしいんですね」
編入した先の高校で、大学生相手にスポーツを教えていた。自分より体の大きい男性に体当たりをされ、天羽夏月は後頭部から地面に落ちた。
「次の日、頭が割れるように痛くて。検査したら脳が睡眠時の脳波ですよって言われたんです。だから寝てるような状態で稽古を続けてたってことですよね」
ギョっとするほどの根性。強すぎる意思が勝手に身体を動かしていたのだろうか。スポーツに対する真剣さが痛いほどに伝わってくるエピソードだ。
「そのときの検査では大丈夫だったんです。大学1年に入ってからですね。頚椎を痛めて、ストレスで胃潰瘍になって、それを機会に色々調べたんですよ。そしたら脳に血がたまってるって言われて。思い当たるのは、そのときの事故だけでしたからね」
突然のドクターストップ。死を覚悟してスポーツを続けるか、生きるためにやめるべきか、究極の選択が突きつけられた。
「自分がずーっと打ち込んでたことを諦めなきゃいけないって、身を切られる想いですよね。何よりもきつかった。もうやりきれなかった」
簡単に立ち直れるほど、天羽夏月がスポーツに捧げてきた時間は短くない。絶望の淵に立たされる中、さらに追い討ちをかけて、祖母から厳しい声が飛んできた。
「スポーツを取ったらお前はただのクズだ!」
その言葉には深い意味があった。同じ年、両親は離婚したのだ。
「小さいときに一回離婚の危機があったんですよ。でもお爺ちゃんが絶対に許さなかったんですね。それで私がスポーツを始めたら、両親が私のスポーツという共通の話題で話をするようになったんです。それ以外の会話はほとんどなかったから、完全にかすがいですね。私がスポーツでいい結果を残すっていうのが、親の中では最大のかすがいだったんだと思う」
優秀な娘は親の期待に応えてきた。しかしもうスポーツはできない。親の離婚、ドクターストップ、大学へ進学してすぐに、あらゆる問題が一気に押し寄せた。
「全部が重なったんですよ! やけになってぶっちゃけもう風俗しかないと思ったときもあって。学費は年間130万かかるんですけど、父親は仕事に失敗して腐ってたし、母親は朝から晩まで働いてて。それだけの金額を出させたくなかったんですね。お金の問題ってきついじゃないですか。だからお金の問題だけは自分でやりたいなと」
悩んだ末、学費を自分で払うために、ショーパブで働くようになった。ポールダンスと接客の仕事。スポーツとは180度違うきらびやかな世界で、天羽夏月は一人浮いていた。
「君は向いてない」「辞めたほうがいい」客からはストレートな意見がぶつけられた。
「だってそのとき私すごいゴツくて、身長157センチで体重67キロ、体脂肪が9%だったんですよ!もう本当にイヤーと思って、すごい悔しくて!」
スポーツをしていたときは、ずっと男に生まれていればよかったと思っていた。ショーパブとの出会いは、女に目覚める瞬間でもあった。負けず嫌いな彼女の並々ならぬ努力がはじまった。
「ショーパブで出会ったママが、超エロくてセクシーで、踊りだって誰が観ても上手いんですよ! 私、こんな人になりたいって! すごい憧れましたね」
ショーパブの仕事は接客だけにとどまらない。ポールを使ったパフォーマンスがどれだけ上手いかも重要だ。
「ポールダンスのDVDを見ながら動きを分析して練習しましたね。誰かと競うんじゃなくて自分に負けたくない。できないことが悔しくて泣きながらやりましたね。好奇心が強いからやってみなきゃ嫌なんですよ」
一に努力、二に努力。スポーツに捧げてきたエネルギーが、ショービジネスへとシフトした。
「ひとつのことをやり通すっていうのは原点ですよね。これは父親の教えです。母親の教えは、感性を磨きなさい、中身を磨きなさい、女を磨きなさい、女は一生女だから。女性で誰を一番尊敬してるっていったら私は間違いなくオカンですね。すごい厳しかった親父にも感謝してる」
天羽夏月の言葉からは、感謝の気持ちが絶え間なく溢れていた。それは、人生に折り合いをつけるために、過去を清算していく姿にも見えた。
(続く)
天羽夏月
九条OS劇場所属。2005年2月1日、九条OS劇場にてデビュー。ストリップファンも認めるダンサブルなステージから、一転してエロティックで過激なベッドが評判。締まりある肉体美がところ狭しと躍動するさまは必見だ。
香盤情報
芦原ミュージック劇場
11月11日-20日
池袋ミカド劇場
11月21日-30日
A級小倉劇場
12月1日-10日
ライブシアター銀映
12月11日-20日
撮影=インベカヲリ★
モデル=天羽夏月
取材協力=シアター上野、西川口テアトルミュージック
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.11.08更新 |
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