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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第10回 「春風るな」 【2】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=春風るな
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第10回春風るなさん、掲載中です!
ああーそうなんだーって
一生懸命やってもなれるものとなれないものがあるんだなあと思って
医者になれなかった娘
一生懸命やってもなれるものとなれないものがあるんだなあと思って
春風るなは優秀な家系に生まれた。父親は医者で母親は介護師、二方の叔父と叔母が教師で、従兄弟はみんな医者になった。
「ハハハ、嫌ですね。お盆とかに集まると『またあの何やってるかわかんないオンナが来た』みたいに思われてそうで」
優秀な家系に生まれると、優秀な人間と比較されてしまう。成績優秀ではない春風るなは、すぐに両親から諦められてしまった。
「最初はやっぱり医者にしたいって思ってたみたいだけど、なんかやっぱり頭が悪いから。お母さんからは『なんでそんなに頭が悪いんだ。アンタみたいに悪い点が取れるのが不思議だ』って言われてて。たぶん勉強が向いてないんだねって話になったんです。勉強も才能がいるよって。お父さんは勉強の才能があったから医者になれたけど、やっぱりアンタは勉強しても医者になれないって。ああーそうなんだーって思って。一生懸命やってもなれるものとなれないものがあるんだなあと思って」
春風るなは、そんなトラウマになりそうな思い出も、たんたんと話していた。落ち込むことはなかったのだろうか。
「そうですねー、中学の1年から2年の途中まですっごい勉強したんですよ。テレビも見ないで漫画も読まないで、毎日スケジュールを決めて勉強して試験にも備えて、やっと平均点が取れた。人の何倍も勉強したのに平均点しか取れなかったときに、ああもうなんか疲れたからやめようと思って。落ち込んだのはそのときですね」
両親は3歳のときに離婚。母親の実家で育てられ、父親の元には年に1〜2回会いに行っていた。
「両親が仲良く会話してるのは聞いたことがない。みんなで一緒にご飯を食べに行ったことがあるけど、普通に他人同士がご飯食べてるみたい(笑)」
母親の実家では、お婆ちゃんとお爺ちゃんと叔母さんの5人で暮らした。どんな家庭だったか聞いてみると、ディテールばかりが次々と出てきたので驚いた。
「お婆ちゃんは気が強くて負けず嫌い。で、人が来ると気を遣いすぎて疲れちゃう感じ。犬とテレビが好き。人間よりも犬とか猫とかテレビが好きって人。お母さんは虫が好き。あと妖怪とかも好き。なんかグロいのも好きで、ホラーとか悪魔の本とか宗教の怖い話とか、そういうの家にあったので」
春風るなは一貫して朗らかだった。人間の持つ嫉妬心とか劣等感とか、そんなドロドロしたものがまったく見えてこない。それでいて何かを隠してるようでもない。なんとも不可思議なパーソナリティだが、自分ではそのことに気付いていないようだった。
(続く)
春風るな
渋谷道頓堀劇場所属。2003年11月21日、渋谷道頓堀劇場にてデビュー。挑発的でありながらどこか妖しげ、そして少しだけ“毒”を入れるというステージは扇情的。まるで昔懐かしいストリップのようでいて、巧みに現在のスタイルを取り入れたショー。観劇のベテランはもちろん、初心者まで楽しめる。
香盤情報
芦原ミュージック劇場
9月21日-30日
渋谷道頓堀劇場
10月1日-10日
シアター上野
10月21日-31日 撮影=インベカヲリ★
モデル=春風るな
取材協力=渋谷道頓堀劇場、若松劇場
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川中理紗子 【1】>>>【2】>>>【3】>>>【4】>>>【5】
インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.09.27更新 |
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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫