毎週土曜日更新! The dancing girls are in full bloom at their best.
咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第11回 「天羽夏月」 【4】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=天羽夏月
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第11回天羽夏月さん、本日最終回です!
人ってなんだろうってよく考えるんですよ
楽しさってなんだろうとか
愛犬を手放してストリップ
楽しさってなんだろうとか
3杯目のドリンクがウェイトレスから運ばれてきた。すでにインタビューは3時間を経過している。天羽夏月の壮大なヒストリーは、終わりを見せずに続いている。まるで講演会を聞きにきているかのように、その内容は完成されたものだった。
「学費を払い終えて、親に車も買ってあげたのね。その頃にはショーパブの仕事が楽しくてしょうがなくなってたんです。今まで意地張って生きてきて、人との接し方も凄く下手。今も下手だけど、もっと下手だったんですよ。そういうのをちょっとでも自分の力で形にしようと思ったとき、この道で真剣にやっていうこうと思いましたね」
あっという間にショーパブの世界で華を咲かせ、今度はステージでも踊ってみたいと思うようになった。行動力のある天羽夏月は、九条OS劇場のステージに、素人ダンサーとして参加することを決めた。「なんでプロでやらないの? 早くプロ転向しなよ」。天羽夏月のステージを観たお客さんは口々にそう言った 。
「なかなか踏ん切りがつかなかったですね。腹括らずにできるほど甘くないってわかってたから。でもやるって決めたときは、飼ってた犬を二匹、里親を見つけて手放しましたね。踊り子の仕事は旅が多いから、そのたびにペットホテルに預けてたら犬が可哀想でしょ。そこらへん上手にされてるお姐さんもいるけど、私は不器用だから、一個のことやったら一個のことしかできない。だったら他に飼ってくれる人を見つけて手放そうと思って。悲しくて毎日泣いたけど、犬には二度と会わない。手放すっていうのはそういうことだから」
天羽夏月は犬が好きだ。撮影している間にも、散歩中の犬を見つけては何度も頭を撫でていた。犬とストリップどちらを取るか、自ら試練を作り、追い込んでいるように見える。デビューですでに、衣装、選曲、振り付け、すべてセルフプロデュースで行なった。
「世間的にはストリップなんてって言われるかもしれないけど、私は誇りをもってやってる。踊れるならダンサーでいけばいいとか言う人もいると思うけど、そうじゃないと思うんですよ。だってダンスにはジャンルがあって、遊びを入れるといっても限られちゃうじゃないですか。でもストリップって無限でしょ。いろんなことをやっていい、自分のカラーが出せればいい」
天羽夏月はなんでもやる。楽しいステージを追求し、とにかくなんでもやってみる。
「頭にパンツ被って踊ったこともありますよ。そのときの演目は、ちょっとHな悟空が女のオナニーシーンが見たくて、7つの玉を集めて神龍を呼び出すっていうもの。悟空が盆の上でエロ本読んだり、パンツ被ったりするんです」
真面目な顔で語るところが、天羽夏月たるところだ。
「一回、ブリブリのをやって、もう二度とやるかって思ったこともありましたね。やっぱりキャラに合うものってのがあるんだなと思って。とりあえず思いついたことはやるんで、私のステージは本当にいろいろバラバラ。二部構成もやりますし、逆ストリップで裸で出てきて服を着ていくっていうのもやりましたよ。あとはアソコから真珠を150センチ引き抜いたりとか。ずっと隠したまま踊ってて、最後に見せるから、前列にいたお爺ちゃんなんかビックリしてましたね(笑)」
さらにエロに対しても研究熱心。エロいステージとは何か、どうすればできるのか、答えが出るまで考え倒す。
「オナニーベッドって普通にやってるだけじゃ嘘くさかったんですよね。リアルさがないと萎えるじゃないですか。色気なんかその時点で感じないんですよ。どちらかというと評論家みたいな感覚になっちゃう。それはマズイと。楽しませるには、まず自分が楽しまなきゃいけない、というならばエロく見せたきゃまず自分がエロくなればいいんだなと思って。じゃあエロくなろうと。色々やりましたね。出番前にエロ本読んだり。ぎゃははは!」
天羽夏月は、本当になんでもチャレンジする人だった。デビュー三年半で、作った演目は40個以上。新人のために作ることや、お姐さんの引退の演目を頼まれたこともある。一つのことを極めた人間は、何をやっても凄いということを証明しているようだった。
「常に『あいつは何出すのかな?』って思われたら嬉しいですね。綺麗、可愛い、上手いより、楽しかったの一言でいい。いい笑顔をもらえたら嬉しい。それが最高の賛辞です。『あいつが乗ってるから行ってやるか』そう言われるタレントに最終的にはなりたいですね。劇場を出た瞬間、何も覚えていないってステージは作りたくない」
波乱万丈な天羽夏月は絵に描いたようにポジティブだった。
「私の人生、複雑っていえば複雑かもしれないけど、それが私のベースだから。全部があったからこそ今の私がいるし、こういうお仕事ができる状況の自分もいる。人ってなんだろうってよく考えるんですよ。楽しさってなんだろうとか」
撮影の合間、私と二人きりになった天羽夏月は、ときおり落ち着きのなさをみせていた。食事中でも何か過去を拾い上げて、エピソードを語ろうとしてくれる。
これだけのことを話してくれても、まだ言えない過去があるに違いない。天羽夏月はそんな余韻を残す人だった。
文=インベカヲリ★
天羽夏月
九条OS劇場所属。2005年2月1日、九条OS劇場にてデビュー。ストリップファンも認めるダンサブルなステージから、一転してエロティックで過激なベッドが評判。締まりある肉体美がところ狭しと躍動するさまは必見だ。
香盤情報
芦原ミュージック劇場
11月11日-20日
池袋ミカド劇場
11月21日-30日
A級小倉劇場
12月1日-10日
ライブシアター銀映
12月11日-20日
撮影=インベカヲリ★
モデル=天羽夏月
取材協力=シアター上野、西川口テアトルミュージック
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インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.11.15更新 |
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