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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫 第10回 「春風るな」 【4】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★
モデル=春風るな
ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第10回春風るなさん、掲載中です!
そんな風になってまでやらなきゃいけないことは何もないや、みたいな
何が一番大事で優先するべきことか、よく考えないとそうなっちゃうんだなって
死ぬかと思った
何が一番大事で優先するべきことか、よく考えないとそうなっちゃうんだなって
春風るなは、好みの世界がはっきりしている。エログロ、ゴシック、ホラー、魔女狩り、黒魔術……家具は黒いものが好きで、間接照明を使う。
「なんかすごい退廃的なものとか暗いものとか怪しいものとか好きなんですよね。でも実際は明るくて前向きな人間だと思う。破滅的な感覚はない人間だと思う。そういうものを好んで見たり、聴いたり、周りに置いたり、身に付けたり、読んだりしてるけど、そういう風にはなりたくないんだと思う。なんか死んじゃいそうじゃないですか。シリアスな人がダメですね。ワーワーとか、そういうのない人がいいです。暗いのは好きだけど、暗いのはダメ」
そして一呼吸置いたあとに付け加えた。
「たぶん精神的に鬱とかそういうのになりたくないんですよ。一回、過呼吸になったことがあるから」
軽いカミングアウトのようにポロっと言った。
過呼吸とは、ストレスが原因で呼吸過多になり、呼吸困難、頭痛やめまい、失神などの症状を起こす病気。デビュー1年目のとき、春風るなは一生懸命に仕事をするあまり、自分を追い詰めていたという。
「全然寝ないでご飯も食べないで練習してたんですよ。振り付けしなおしてもらわないとダメだって思って、夜中に振り付けの先生を呼んで、全部付け直してもらったりとか。疲れちゃって食欲もないし、そういう自覚もないんですね。周りからみたら全然ダメじゃないのに、ダメだって勝手に思ってて。『なんか私ダメなんだよね、なにかわかんないけどダメなんだよね』って言ってたら息ができなくなったんです」
病院に行った春風るなは泣き叫んでいた。過呼吸がわからずパニックになっていたのだ。
「『頭が痛くて、息が苦しくて、手足がしびれて、脳の血管が絶対に切れてるから早く検査してください!』とか言って床に倒れこんでエ〜ンって泣いてました(笑)。そしたら紙袋を渡されて、『脳の血管切れてる人はそんな喋れませんから』って(笑)。そしたらすぐ落ち着きました」
一カ月間、お酒も煙草もやめ、ハーブティーを飲みながら緩やかに過ごした。ストレスの原因を振り返り、春風るなは、色んな教訓を身に付けていた。
「そんな風になってまでやらなきゃいけないことは何もないや、みたいな。そのときはストリップが楽しいからやり過ぎてたんですよね。自分はもっと踊れるはずだって、すごい練習して。でもちゃんとご飯を食べて寝ないと、人間ってまともになれないんだなって。栄養取らなければ体調崩して楽しくなくなるし、寝不足だと体が動かなくてマイナス思考になるし。何が一番大事で優先するべきことか、基本をよく考えないとうっかりそうなっちゃうんだなって。とりあえず今できることを普通にやって、焦ったり無理をすることはやめようと思いました」
春風るなが、朗らかで落ち着いて見えるのはそのせいかもしれない。一カ月で、バランスの取れる方向をきちんと見つけて進む彼女は、きっと感覚が優れているのだろう。
(続く)
春風るな
渋谷道頓堀劇場所属。2003年11月21日、渋谷道頓堀劇場にてデビュー。挑発的でありながらどこか妖しげ、そして少しだけ“毒”を入れるというステージは扇情的。まるで昔懐かしいストリップのようでいて、巧みに現在のスタイルを取り入れたショー。観劇のベテランはもちろん、初心者まで楽しめる。
香盤情報
シアター上野
10月21日-31日
A級小倉劇場
11月1日-10日
撮影=インベカヲリ★
モデル=春風るな
取材協力=渋谷道頓堀劇場、若松劇場
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川中理紗子 【1】>>>【2】>>>【3】>>>【4】>>>【5】
インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。 インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/ |
08.10.11更新 |
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