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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫  第12回 「徳永心」 【5】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★ モデル=徳永心

ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第12回徳永心さん、最終回です!
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なんで死ぬのが怖いのかなって考えたら、別に怖いことなんかなくないですか?
もし怖いことがあるとすれば、やり残したことがあったほうが怖いなと思う
死ぬのは怖くない

「私、道徳って言葉がすごい好きなんですよ」

名前の由来を聞いて出てきた答えに爆笑してしまった。窃盗未遂、喝上げ、レディース。どこを取っても道徳とは程遠い経験を積んでいるが、本人は至って真剣にそう言うのであった。

「道徳とかモラルを永遠に持ってる心って意味ですね。特にこの業界を知っててこの名前をつけたわけじゃないけど、モラルって言葉が好きで、道徳が好きなんですよ。私の中では恋愛系の言葉だったんですけど、いざストリップを始めたら意味が変わっちゃいました。私はこの業界には絶対に染まらないぞって。この業界に入る前の気持ちを持ったまま、引退までやっていきたいなって」

出稼ぎがきっかけで始めたはずのストリップも、80万を稼いでからは、本腰を入れてやっている。

「最近はね、『自分の体を大事にしなさい』って事務所の人に言われて、守っています。その前は体調が悪くても黙ってたんですよ。ストリップの仕事は辞めたくなかったから、クビになるのが怖かったんですね。熱があっても『熱なんかありません!』みたいな感じで無理してステージに上がったし。『顔赤いよ』って言われても、『赤いけど、飲んでませんよ』とかふざけてみたり。ははは、そう言ったほうが面白いじゃないですか」

徳永心は人を笑わせるのが好きだ。苦労話でも悲しい話でも結局は楽しい言い回しで締めくくる。健康な体に近づきつつあるものの、決して治るわけではない病気を抱え、不安を見せないという精神力はすごい。ふと、死というものについてどう考えているのか気になった。

「死への恐怖はないですね」

キッパリと言うので驚いた。

「お父さんが死んだときにお坊さんが言ってたんですよ。『人間というのは、生まれたときから余命は決まっている。それをいかに生きていくかであって、運命とは変えられるものではありません』って。それを聞いたときに、なんか悟ったみたいな(笑)。なんで死ぬのが怖いのかなって考えたら、別に怖いことなんかなくないですか? 死んだらどうなるかわからない怖さなのか、死ぬ瞬間の痛みなのか。わからないけど、特に怖いとは思わない。もし怖いことがあるとすれば、やり残したことがあったほうが怖いなと思う。だからやることはやる」


妙に説得力があった。しかし言葉ではわかっていても、言葉通り大らかに生きていける人はなかなかいないだろう。お父さん似だと言われて育った徳永心は、父の死を直視することで、余計に死を意識するはずだ。それでもポジティブに生きて行けるのは、父親の背中を見ていたからだろうか。

「うちのお父さんは友達の間で有名だったんですよ。私の友達が遊びにくると、カンフーやりながら部屋に入ってきて、そのまま出てったりとか(笑)。麻雀やってると後ろからチョイチョイやってきたりとか。『俺はウサギだ』とかいって、廊下をウサギの真似しながらピョンピョン跳ねたりとか。友達がくると、結局いつもお父さんと一緒にみんなで遊んでましたね」

お父さんの話になると、徳永心は本当に楽しそうだ。

「いたずらっ子なお父さんでしたね。小学生のとき、お姉ちゃんが『トラ・トラ・トラ!』っていうビデオをお父さんから渡されて学校に持っていったんですよ。お姉ちゃんは怒りながら私のクラスまで来て、『これ、お父さんに返しておいて!』って言うんですよ。私は何がなんだかわからないから、先生に見せたら『これは戦争の映画じゃない? 子供にはキツイけど見てみる?』って言われて、授業の中で観ることになったんですね。『徳永さんのお父さんが貸してくれたので、みんなで観てみましょう』とか言って。で、つけたらAVだったんですよ!! ぎゃはははははは!!!!」

「えええーーーー!!」

先生もさぞかし慌てただろうが、こんなギャグ漫画みたいなことをするお父さんが本当にいることに驚く。

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「本っ当もうどうしようかと思って。あんときはねー、いくらなんでもお父さん悪ふざけし過ぎだろうと思って。お姉ちゃんも前の時間に同じことしてたんですよね(笑)。だったら言ってよって思いますよ。それからしばらくお父さんと口利きませんでしたもん! あとは、彼氏が遊びに来ると、エロ本についてるDVDを渡して『これやるよ』とか言ったりして。本当、勘弁してよ! 性的なものは止めようよ!みたいな(笑)」

楽しそうに喋る徳永心を見て、人を楽しませる素質もお父さん似なんだろうなと思った。

「体が細いのもお父さん似だし、動物好きもお父さん似です。私、トラが大好きなんですけど、お父さんもトラが好きで、3人で動物園に行くと私とお父さんはトラの前から動かないんですよ。エロいところは……どうかな(笑)」

徳永心の笑顔が澄んでいるのは、苦労の中でも家族に愛されていたからか。死を意識することで、人生を楽しむ余裕ができているからか。はたまた過去の記憶がない、というシンプルな理由かもしれない。



「あの、最後に原稿の中で書いちゃいけない話ってありますか?」

「別にないですよ」

「え!? 喝上げの話とかも?」

「全然。ちゃんと捕まってるし」

徳永心は当たり前のことのように笑った。「青空のような子」という最初の印象は、間違いではなかった、と思った。

文=インベカヲリ★




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Tokunaga Kokoro x Inbe Kawori★

徳永心
TSミュージック所属。2006年2月01日、TSミュージックにてデビュー。スレンダーな肢体が激しく動きまわる巧みに演出されたステージはまるで映画のアクションシーンのよう。また白い虎が登場する演目は連作となっているそうで、ファンならずとも楽しむ仕掛けが施されている。

香盤情報
シアター上野
12月31日ー1月10日


撮影=インベカヲリ★
モデル=徳永心
取材協力=船橋ニュー大宝若松劇場

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■東京
2008年12月9日(火)〜12月15日(月)
10:00-19:00(最終日は16:00まで)
会場:ニコンサロンbis  地図
(東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階 ニコンプラザ新宿内)

■大阪
2009年1月22日(木)〜1月28日(水)
11:00〜19:00(最終日は15:00まで)
会場:ニコンサロンbis大阪  地図
(大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザ ウエスト・オフィスタワー13階 ニコンプラザ大阪内)

※受賞作品展につき、
以前開催の同名作品展と同内容になります

インベカヲリ★ インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。

インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/

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08.12.20更新 | WEBスナイパー  >  咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫